地面師オールスター大立ち回りの「積水ハウス事件」

かずお君(@kazuo57)のツイート

海喜館:平成最後の巨額地面師事件の舞台。佐々木、北田、秋葉、カミンスカス等、今娑婆にいる地面師オールスターで演じたオペラもいよいよクライマックス。一年の捜査を経て星を挙げた検察は何人ぶち込めるのか、金の行方は、内通者の存在は、操のガラは押さえられるのか?!#クソ物件オブザイヤー

 

今娑婆にいる地面師オールスターで演じたオペラもいよいよクライマックス。
今娑婆にいる地面師オールスターで演じたオペラもいよいよクライマックス。

 

【地面師が狙った海喜館のナゾ】

JR山手線「五反田」駅至近の営業を停止した旅館を舞台としたメジャー級地面師詐欺。超大手積水ハウスが60億円を超える売買代金を支払ったが所有権は移転できず売買代金を騙し取られた。

 

その敷地は約600坪。抵当権は設定されておらず、売主は病気を理由に旅館を廃業した女将ただ一人であった。

 

【解説】数年後、皆がこの事件を忘れた頃に立派なタワーマンションが建つのだろう

 

2019年6月に地面師主犯格のカミンスカス操は逃亡先のフィリピンで拘束され、日本で起訴された。本人は起訴事実を否認。また他の地面師一味たちも逮捕され、売主である旅館「海喜館」の女将を演じたなりすまし役の女は起訴内容を認めている

 

※2019年6月現在、本件海喜館の土地は2018年11月の売買契約を原因とし、買主:旭化成不動産レジデンス株式会社とした所有権移転仮登記がされている。(注:地面師/積水ハウスの売買契約は2018年4月)

 

積水ハウスが60億を騙し取られた土地に、数年後、皆がこの事件を忘れた頃に立派なタワーマンションが建つ。それも積水ハウスと同じく戸建てを主力とする旭化成によって。山手線五反田駅徒歩数分の便利な場所や。あんたも数年たったら行ってみ。そこが超弩級の地面師詐欺の舞台やとは知らん、幸せそうな家族が笑いながら立派なタワーマンションのエントランスから出てきよるわ。

 

【ナゼ?】大手不動産会社の社内決裁システムが破綻?

 

一般的な不動産会社では買付書提出や売買契約の締結などのタイミングで、投資する不動産の価格に応じて役員会で、投資委員会で、部門レベルでと、さまざまな決裁が必要となってくる。

 

本件において、通常の決裁システムが正常に機能していたのなら、売買契約後に積水ハウスへ真の不動産所有者から売買を取りやめるように投書が届いた時点で、残代金の支払いはストップされたと思われるのだが…。

 

にもかかわらず本件では売買代金残金の支払いが行われた。これは積水ハウス社内でトップかそれに近い立場の人間から強い力が働いたものと推測される。

 

【ナゼ?】世の中を騒がせる地面師詐欺を防ぐ手だては?

 

地面師と呼ばれる詐欺グループが不動産の所有者になりすまして、不動産会社等から数億円の売買代金を騙し取る古典的な詐欺と言える。偽造されたパスポートや印鑑証明書を持ち、所有者に年格好の似たニセ所有者までが準備される巧妙な手口であるこの手の詐欺は、不動産取引の際の「本人確認」に理論上、技術上の限界があるため、完全に防ぐことは不可能である。

 

手だれな奴らと出会わぬ事を祈るばかり。

「妾の、その娘にまで地所が渡っちまって…。」

【地元の噂】本物の所有者だった女将サコさんを取り巻く㊙物語

 

「もともとはこの辺一体の地主だよ。海老澤さんところは。」古くから海喜館の近くで商店を営む店主が店先で語ってくれた。

 

「サコさん。女将は旅館の三代目で海老澤佐妃子さんていうんだよ。地主の一族かって? いや。詳しくは知らないけど、サコさんはそうじゃないらしい。海老澤姓だけど。」「サコさんがなくなった後の所有者は誰かって? あんた不動産屋だろ? 登記簿でもなんでも取ればわかるじゃねえか?」

 

「お、○○さん。どうも! 久しぶりだね!」近所に住む主婦だろうか。買い物かごをもって店先に現れた女性に気を向ける店主。

 

「兄さん悪いね。サコさんから相続した人に頼まれてるんだ。この件は、頼むからもう誰にも話さないでくれって。」早口でそう言った店主は我々に背を向けて主婦に近づいていった。

 

次に話してくれたのは、商店から目黒沿いをさらに奥に進んだ工務店の社長。「ああ、サコさんか。あれは海老澤の本家の妾、それの娘。」「近所に買い物に行くにもミンクのコート着て、そりゃ美人だった。でもサコさんは一度も結婚しなかったって聞いたな。」

 

「あまり近所の人間とも関わらなかった人だった。まぁ関わらなくても〝旦那〟が母娘ともども十分面倒みてくれるから幸せだったんだろう。」「まあ、女将って言ったって、実際にあの旅館を切り盛りしてたのは板前長のトリさんだってみんな知ってたよ。」

 

「以前に聞いたんだ。トリさん、王子に住んでたから住み込みで働けば?って。」「そしたらトリさん、そんな訳にはいかねえ。仕事と私用はきっちりと線を引いとかなきゃって。律儀な職人なのさ。」

 

「あの旅館がおかしくなったのも、トリさんが歳で引退してからさ。」

 

「トリさんが引退するちょっと前だな。旅館の松が塀からせり出すように伸びてきて見苦しかったんで、トリさんに言ったんだ。切っちまえって。」「そしたら、トリさん難しい顔して、手を出せないって黙り込んじまう。」「思うに、あの頃からトリさん、旅館の問題をひとりで抱えてたんだろうな。」「ほら、そりゃあ面白くないじゃん。海老澤本家からしてみれば。妾の、その娘にまで地所が渡っちまって…。」

 

…品川区西五反田二丁目22番1、海喜館の建つ土地の謄本によれば、サコさん、海老澤佐妃子が本件土地を相続したのが昭和50年。それから44年後、昭和、平成、令和3つの時代に渡って、多くの人間の欲と業を飲み続けた海喜館は取り壊され、旭化成によってようやく新しい姿に生まれ変わる。

 

【こんなクソに気をつけろ‼】

・地面師を見たら逃げましょう

・乙区記載なしは地面師の商材

・不動産の現地情報収集をガチですべし

 

※ 本記事は、書籍『クソ物件オブザイヤー』(KKベストセラーズ)より一部を抜粋、再編集したものです。

 

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全宅ツイ

 

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