東京23区にあるのは空き家でなく「滅失すべき何か」?
少子高齢化や地方における人口減少などの理由で、放置空き家の増加が社会問題となっている。平成30年の「住宅・土地統計調査」(総務省調べ)によると全国における空き家は846万戸で、前回調査の平成25年に比べ26万戸(3.2%)の増加。地方に比べて首都圏は空き家率が相対的に低いが、東京23区内でも空き家が増えている。
【全宅ツイの解説】値段がつかない空き家…それはまだ活用すべき家なのだろうか?
みんな大好き、空き家問題。不動産コンサルタントたらいう輩たちが大声で言うとるわ。空き家が増えていく中、新築を次から次へと建ててるとは何事ぞと。彼らは住宅の新築戸数に政府が一定の制限を掛けて、今ある空き家を活用せいとまで叫んどる。
ほんなら、ここで総務省統計局が5年毎にやっとる「住宅・土地統計調査」の平成30年の調査結果見てみよか。東京都の平成30年10月における総住宅数は約766万戸、うち空き家は約81万戸。空き家率は11.3%や。では、5年前の平成25年の空き家数はなんぼや。はい。約82万戸、空き家率は11.1%。
正確に言うと空き家はこの5年で7900戸減少しとる。東京都への転入超過数は毎年7万〜8万人。賃料や住宅の価格が跳ね上がらない健全な空室率はよう知らんけど、5%切ると住宅が不足してる感じはするやろう。どうや? 東京に家は足りてるんか? 余ってるんか?
東京以外の地方の空き家? 東京でも値段つかん空き家? それはもうあかんな。需要がないもんを活用はできんやろう。それは活用すべき〝空き家〟ではなくて、かつては家やった、滅失すべき何かや。
空き家数「足立区1790軒」次いで「板橋区1210軒」
【真相を追跡!】東京23区でボロ空き家が一番多いのが足立区
放置空き家の中で特に問題なのが破損があったり、腐朽しているもの。いわゆる〝ボロ空き家〟で、地震などの災害で倒壊の恐れがあるからだ。そもそも空き家問題が注目を集めたのが、東日本大震災を機に防災対策としての側面からだった。
東京23区内の腐朽・破損ありの空き家数は、多い順に足立区1790軒、板橋区1210軒、練馬区1170軒で、足立区が突出(平成30年「住宅・土地統計調査」)。もちろんそれには理由があって、地元の不動産業者は次のように説明する。
「足立区は、高齢者がひとりで暮らす古い木造一戸建ての住宅が多いんです。その上、入り組んだ細い路地に建っているため、取り壊しが困難。なので、住人が亡くなっても取り壊しせずに、そのまま放置されてしまいがち。特に北千住界隈は、放置空き家をよく目にしますよ」
北千住といえば、ターミナル駅である北千住駅を中心にいただく足立区随一の繁華街。マルイや商店街が立地する駅西口はもちろん、最近は東口も東京電機大学が千代田区神田から移転してきたため、賑わいを見せている。
北千住駅西口を出ると、立体化された駅前にマルイがそびえ立つ。都心のターミナル駅と比べても、遜色ない賑わいだ。そして、駅正面の道路と交差する道路沿いにあるのが宿場町通り商店街。下町の風情が漂う昔ながらの商店街で、脇にはやっと人が通れるほどの細い路地がいくつもある。
「それでも最近は区画整理が進んで、路地が少なくなったので、空き家も減ったよね。以前は廃屋がすごく多くて火事になったら恐いねって、よく話していたものですよ。でも、国道を越えると、やっぱり空き家が多いよ」と話すのは、商店街で衣料品を営むオバチャン。
宿場町通りから200m先に、国道4号線の日光街道が平行して走る。駅前は洗練された都会的な雰囲気だが、地元民によると国道の向こう側は足立区旧来のイメージ通りのエリアなのだそう。要は〝ガラが悪い〟ということだ。
ひとり暮らしのおばあさんが亡くなったんだけど…
【真相を追跡!】相続や地主とのトラブルなど放置空き家の理由はさまざま
国道を渡ると、さっそく細い路地。古い木造家屋が軒を連ねる。人の気配が感じられないトタン外壁の家の前に立つと、向かいの家からオジサンが「そこは誰も住んでいないよ!」と、声をかけてくる。
「5年くらい前に、ひとり暮らしのおばあさんが亡くなったんだけど、区役所が身内に連絡を取ってもなしのつぶて。そのまま放置されているんだよ。細い路地に建っているから撤去も難しいし、できたとしてもカネがかかる。そもそも無接道による再建築不可の土地なので、結局そんなもの相続したくないということになるんだよね」
さらに歩を進めると、普通の住宅街にポツンと空き家らしい物件。そこまでボロボロではないが、人の気配はないし、ガスメーターはゼロの表示。間違いなく空き家だ。この家は借地に建っており、ひとり暮らしだった住人が亡くなった後、遺族が移り住もうとしたところ、取り壊しを求める地主とモメて、係争中で塩漬けになっているのだという。また、住宅街に不釣合いな駐車場が突然目に入るが、近隣住民によると7年前まではボロボロの木造アパートが建ち、長らく無人の廃屋だったという。
「老朽化していて倒壊も恐かったし、何よりも夜中にホームレスらしき人たちが大勢出入りしていて、治安が悪化するという問題があった。権利関係が複雑で、建物の持ち主を突き止めるのが大変だったみたいだけど、ようやく見つけ出して交渉の末、更地にできたんです」
北千住界隈をざっと歩いてみただけでも、放置空き家が簡単に見つかる状況だけに、足立区では他自治体に先がけて、平成23年11月に「足立区老朽家屋等の適正管理に関する条例」を施行。これは空き家を含む老朽家屋やゴミ屋敷に適正管理を指導し、特に危険な老朽家屋については解体工事の費用を助成するもの。同年3月に起きた東日本大震災を受けて制定された条例だ。
「平成29年には足立区の委託事業として、北千住駅東口エリアの空き家を再活用するプロジェクトもスタートしていますが、増え続ける空き家になかなか追いついていない」とは、前出の不動産業者。少子高齢化による人口減少は構造的な問題だけに、即効的な対策はなかなか見出せないのが実情だ。
※ 本記事は、書籍『クソ物件オブザイヤー』(KKベストセラーズ)より一部を抜粋、再編集したものです。
全宅ツイ