新型コロナウイルス対策を示したECB、利下げは見送り

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ECBが公表した新型コロナウイルス対策に市場からは不満の声が聞かれます。確かに対策の中身やECBのラガルド総裁の会見には、疑問を投げかけたい点も多々見られます。特に利下げの見送りには、市場の不満も強いようです。しかし、市場の催促を知りつつもあえて利下げを見送った背景も振り返る必要があると思われます。

ECB政策理事会:ラガルドECB総裁、新型コロナ対策を発表、QEと長期資金供給拡大など

欧州中央銀行(ECB)は2020年3月12日に政策理事会 の結果を公表しました。概ね半数の市場予想通り政策金利 (預金ファシリティ金利)を据え置きました。ただ、市場の半 数程度が利下げを期待していただけに失望も見られました。

 

主な新型コロナウイルス対策は次の通りです。

 

①追加の長期リファイナンスオペ(LTRO)によって銀行に直ちに流動性を供給する

 

②条件付き長期リファイナンスオペ第3弾(TLTRO3)は20年6月から実施、借り手により有利なレートを適用

 

③民間部門を中心に追加で1200億ユーロ(約14兆円)の資産(債券)購入(QE)を年末まで実施する

どこに注目すべきか:LTRO、TLTRO3、債券購入、イタリア、利下げ

ECBが公表した新型コロナウイルス対策に市場からは不満の声が聞かれます。確かに対策の中身やECBのラガルド総裁の会見には、疑問を投げかけたい点も多々見られます。特に利下げの見送りには、市場の不満も強いようです。しかし、市場の催促を知りつつもあえて利下げを見送った背景も振り返る必要があると思われます。

 

まず、声明に示された新型コロナウイルス対策の主なポイントを述べます。①のLTROは②のTLTRO3による資金供給が6月に開始されるまでの補完的な仕組みで、預金ファシリティ(マイナス0.50%、13日現在)を適用して資金供給を実施するものです。ECBは足元市場に流動性危機は見ておらず、万一のための用意と位置づけられそうです。

 

②のTLTRO3は条件緩和を一時的に見直し、特に資金繰りが懸念される金融機関に20年6月から21年6月まで有利な条件で資金供給する内容です。具体的な適用金利はメインリファイナンス金利(MRO)を25bp(1bp=0.01%)下回る水準です。さらに貸出し条件を満たせば適用金利は預金ファシリティを25bp下回る水準も可能と示されています。この水準で借り入れることができた銀行は、差額分の獲得が見込まれます。

 

資金繰りが最も懸念される現在の局面で的を得た対応である反面、6月まで②を待たなくてはいけない点に不満も見られます。緊急対応としての切迫感に欠ける印象です。

 

③の債券購入は、将来資金繰りが厳しくなることも想定されるある企業の社債等を年末まで追加購入することが示されました。資金繰りの点で、筋の通った政策です。一方、市場で期待が高かった国債購入の上限緩和は見送られました。

 

加えてラガルド総裁が記者会見で、イタリア国債の利回りが相対的に上昇している点を質問されたのに対し(図表参照)、「それはECBのミッションではない」といった返答をしています。正論ではあるかもしれませんが「それを言っちゃあ…」と市場は受け止めたようです。もっとも、出来ない政策を口約束しなかった点で評価すべきとの見方も出来そうですが、表現に工夫の余地はあったように思われます。

 

日次、期間:2019年3月12日~2020年3月12日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表]イタリアとドイツの10年国債利回りの推移 日次、期間:2019年3月12日~2020年3月12日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

出来なかった政策といえば、利下げを見送ったことにも市場の不満はあるようです。確かに米英が定期会合を待たずに緊急利下げをする中、ECBが利下げを見送ったことは一体感の点で物足りなさは残ります。しかし、当レポートで以前指摘したように、マイナス金利の副作用も無視できないと思われます。ラガルド総裁は会見で(当然ながら)副作用が効果を上回るリバーサルレートで無いと述べていますが、さらなる利下げを躊躇(ちゅうちょ)させる要因は副作用であるように思われます。まだ高額預金者に限定していますが、欧州ではマイナス金利を手数料として課す動きが見られます。さらなる利下げには慎重になることが想定されます。

 

今回のECBの対応策に一部不満はあるものの、災害対応として資金供給主体の構成は悪くはないと思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナウイルス対策を示したECB、利下げは見送り』を参照)。

 

(2020年3月13日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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