離婚を考える上でのポイントの1つが「子どもについて」です。親権のように離婚の際に決めなければならないものもあります。このほかにも、面会交流についてなど、どう決めたらよいのでしょうか。世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏がお答えします。

 

離婚を考える上で重要なポイントは「同意があるか」、「お金のこと」、「子どもについて」です。

 

このうち、「子どもについて」は誰もがいちばん頭を悩ませると思います。


実は、離婚届に記入するのは、父と母のどちらが親権を得るかだけです。そのほかのことは、どうやって決めるのでしょうか。

親権と監護権の違いとは?

現状の日本の法律では、夫婦間に未成年の子がいる場合、必ず夫婦の一方を親権者に定める必要があります(「共同親権」は認められていないのです)。

 

それでは、「監護権」って何なのでしょうか。まずは親権・監護権の違いを整理してみます。

 

●親権:未成年の子どもを養育するとともに、その財産を管理し、子どもの代理人として法律行為をする権利義務のこと。

 

つまり、子どもの身の上に関することや子どもの財産をどのように使うかを決定する権利義務を指します。子ども名義の預貯金の解約や子どもを受取人とする生命保険金の受取などは、親権者でないとできません。

 

●監護権:親権の中から「身上監護権(居所指定権・懲戒権・職業許可権など)」のみを取り出した権利義務のこと。言い換えれば、親が子どもの近くにいて実際に子どもを世話する権利義務のことです。

 

離婚で「子どものこと」は誰もが頭を悩ませる。
離婚で「子どものこと」は誰もが頭を悩ませる。

 

離婚時に離婚届に記入しなければならないのは「親権」だけで、監護権についてわざわざ記入の上で提出することはしません。

 

親権者と監護権者は一致させることが一般的ですが、親権者が監護できない事情がある場合や、親権者でない方が監護権者として適当な場合は別々にすることもあります。

 

なお、離婚後の親権者の変更は、必ず家庭裁判所の調停・審判によって行う必要があります。また、離婚後親権を得た方が亡くなっても、当然に片方の配偶者に親権が戻るものではありません。この場合は別途親権者を定める家庭裁判所の手続が必要です。

 

親権を得たとしても、当然、その子が戸籍に入るわけではありません。子どもは、引き続き、元の戸籍(多くの場合は夫)のままです。離婚した親権者の母が旧姓に戻るとして、
子を自分と同じ苗字に代えたいならば、親権者として子の苗字を変える手続をとらなければなりません。

面会交流の方法は?

子どもを監護していない親が未成年の子どもに直接会ったり、それ以外の方法で交流することを「面会交流」といいます。


 
まずは両方の親の話し合いによって、回数(頻度)や時間、場所について決めることが基本です。

 

当事者間で取り決めることが難しい場合や、監護している親が応じない場合には、家庭裁判所で面会交流について調停をすることも可能です(調停でも決まらなければ最終的には家庭裁判所の判断に服する=「審判」を受けることになります)。

 

面会交流について決めるべきことは、以下の通りです。

 

(1)面会の頻度(月1回、2回など) 
(2)時間(2時間~3時間とする、1日とする、宿泊ありとする…など) 
(3)場所 
(4)父母間の連絡方法など

 

ご相談者様から「月1回2時間が相場なんでしょうか」などと、質問を受けることがあります。一部のインターネットサイトにそのような記載があるのかもしれません。

 

しかし、家庭裁判所でそのような取り決めをする実例がありうるだけの話で、「月1回2時間」が「相場」というのは誤りです。離婚する二人、あるいはお子さんの事情によって、「毎週末」というご家庭もあれば、「数カ月に1回」というところまで、その内容はさまざまです。

 

面会交流については親権とは異なり、取り決めないと離婚できないというものでもありませんが、離婚後に話し合う機会があるとは限らないので、離婚する際に基本的なことを決めておく方がベターでしょう。

面会は「子どもの権利」

家庭裁判所では、面会交流は親の権利でなく ”子の権利” との考え方が強く、制限すべき理由がない限り面会させるべきという考え方が主流です。

 

ただし、以下のような事情がある場合には、たとえ家庭裁判所でも面会交流を制限する方向になることがあります。


(1)連れ去りの危険がある場合 
(2)子への虐待のおそれがある場合 
(3)監護親への暴力があった場合

 

これ以外に制限する必要がないのか、あらゆる場合に面会させることが「是」なのかは何とも言えず、難しい問題が多いのが現実です。

 

とはいえ、できるだけ会わせて子の成長を知ってもらうことが、その後の進学の費用など、普段会わない親にできる限りの経済的な協力を促す効果も持つことがあります。

 

「別れた相手と直接会いたくない」、「なるべく連絡を取りたくない」といった理由から、面会交流をアレンジする第三者機関を利用する事例が増えています。面会交流の際に、ご夫婦本人に代わって連絡をとったり、面会交流への付き添い、子どもの受け渡しを行ってくれる機関です。その都度、費用は発生しますが、葛藤を抱えている親にとっては心強い味方となることがあります。

 

どういう結果であれ、子どもにとっては2人ともが親であることは変えることはできません。まずは子どもたちのことを第一に考えて、話を整理し、進めていく必要があります。

 

1つとして同じ離婚・同じ親子関係はありません。インターネットの情報に流されず、ご自身の個別の事情を弁護士に相談することをお勧めいたします。

 

水谷 江利

世田谷用賀法律事務所 弁護士

本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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