※本記事は、『地方勤務医という選択』(医療法人南労会紀和病院理事長 佐藤雅司著)から一部を抜粋・再編集したものです。

今後価値の下がる医師、ニーズの高まる医師

前述のとおり、人口減少、高齢者の減少に伴って医師に対するニーズが変化し始めるのは確実です。厚生労働省が20年後に到来すると予想する「医師余り社会」では、疾病構造を含む社会の変化に適合する医師は必要とされますが、そうでない医師の価値は確実に下がります。

 

医師のニーズが変化する要因にはもう一つ、現在は医師にしかできない医療行為の開放があります。医師の長時間労働を減らすためとして、厚生労働省は近年、コメディカルの業務拡大を図ってきました。例えば看護師については、研修を受け医師からの指示があれば、国が指定した38種の「特定行為」を行うことが認められています。気管カニューレの交換やCVカテーテルの抜去など、看護師による代替が進んでいる治療行為もあり、今後は医師の手を必要としない業務が増えそうです。

 

コメディカルだけでなくAIによる代替も近い将来進んでいくでしょう。すでに診断では人を上回る能力を見せ始めているシステムもあるので、今後、人と会話しながら問診を行うなどの仕組みが完成すれば、医師が不要になるシーンが確実に増加します。

 

例えば咳と鼻水が主訴という患者がオンラインでAIの診療を受けるというシステムの実現は、現在の技術でもさほど難しくありません。問診をもとにAIが診断を下して処方を決め、薬剤師が薬を出すといった流れで治療が進めば、医師は不要です。

 

法制度上の問題は多々ありますが、こういった仕組みが稼働すれば、医療財源の保持にもつながるので、行政府や立法府は間違いなく、なるべく医師を外す方向へと舵を切るはずです。

 

したがって、将来的にはコメディカルやAIが代替できる技能をキャリアとする医師の価値は大幅に下がると考えられます。注射や採血といったコメディカルでも可能な手技しかできない医師や、診断等AIが得意とする業務を主な仕事とする医師は、不要と判断される時代がやってくるのです。一方、来るべきそんな社会で必要とされるのは、疾病構造がもたらすニーズの変化に適合したキャリアを持つ医師でしょう。

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秋山 哲男

幻冬舎メディアコンサルティング

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