AIは医者にとって代わる?─2040年「医師余り社会」に備えて

※本記事は、『地方勤務医という選択』(医療法人南労会紀和病院理事長 佐藤雅司著)から一部を抜粋・再編集したものです。

AIの進化によって無価値となるキャリア

多くの医師がプライドのよりどころとしてきた高度な医療技術は、今後、AIに代替されていくと予想されています。これまでAIブームは何度か発生し、その度に「噂ほどではない」と判明して社会の熱が冷めるという現象が繰り返されてきました。

 

しかしながら、現在起きているAIブームはどうやら本物といえそうです。今までとの最も大きな違いは「ディープラーニング」と呼ばれる自己学習機能をAIが身につけたことです。医学の世界でもすでにその成果は現れ始めています。東京大学医科学研究所が導入したIBM社製のAI、ワトソンは治療の成果が上がらない白血病患者に対して、「二次性白血病ではないか」という専門医でも難しい診断をわずか10分ほどで下したと報道されました。このワトソンは医学論文を2000万件以上読み込んでいたといいますから、人間である医師がかなわないのは当然です。

 

AIは学習速度が人に比べて格段に速いうえ、疲れを知らないので、読影など診断の分野ではすでに人間を上回っているといわれます。また、現在ではまだ難しい手術においても、将来的にはAIが人よりも優れた成果を残すようになるだろうと予想する専門家もいます。そのため、高度な医療技術をキャリアと考える医師の未来は暗い……といった声が近年は上がるようになりました。

 

医師不足が問題視されていますが、いつまでもそんな時代が続くわけではありません。人口──特に高齢者の人口が減少すれば、医療ニーズは減少します。2040年には1.8万~4.1万人の医師が余ると厚生労働省は推計しているので、現在30代の医師が50 代になる頃には、医師が仕事にあぶれる時代がやってきます。

 

医師が余る時代に仕事を失うのはAIに代替される技術をよりどころとする医師たちです。専門技術を積み上げることがキャリア形成だとする医師の常識は、転換期を迎えているといえそうです。

医療法人南労会紀和病院 理事長

1984年、奈良県立医科大学卒業後、同大の研修を経て紀和病院に30年間勤務。2011年、理事長に就任。呼吸器を中心に内科一般を診療。地域密着病院として、命の輝きを大切にする医療・介護を行うという理念と目標を掲げ、いつでも、どこでも、誰もが安心できる良い医療と福祉の実現を目指し、患者に寄り添いながら日々治療に当たっている。日本医師会認定産業医および社会医学系指導医。日本内科学会、日本職業・災害医学会、日本透析医学会所属。

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