「法律で解決できること=人生においてハッピーエンドか」
必ずしも、そう言い切れないのが世の常です。権利を獲得し、お金で解決することができたとしても、それが結果、長い目で見たときに良かったかどうか…。
渦中にいると、じつは見えにくいものです。水谷弁護士がクライアントから相談を受けている際、よくある法律相談の中から、「法律外」の話を取り上げます。
夫が発達障害で「こちらが疲弊しきってしまって…」
■相談内容
付き合っている頃は高学歴だし、外資系企業で仕事もバリバリできて、ちょっとこだわりも強いけれど「個性的かな」ぐらいでしか考えておらず、私のことも大切にしてくれていたのですが…。
結婚して、子どもができて、子育てをしていくうちに疑念が確信に変わってきました。何度話し合っても、全くこちらのことを理解してもらえず、自分のルーティーンを壊されたり、子どもといるときに突発的に何かが起こってしまったりすると対応しきれず、激高してしまうのです。
発達障害の夫に、もう、こちらが疲弊しきってしまって…。このままだと共倒れしてしまいそうです。
■水谷弁護士の考え
最近、このようなご相談に来られる方が増えています。
診断名が付いていなくても、聞いているとASD(アスペルガー症候群)やADHD(注意欠陥多動性障害)、もしくはグレーゾーンです。世の中の流れとしては認識も増え、多かれ少なかれ、誰もが持っている「個性」としてとらえられつつあります。
その「特性」を生かした生き方ができていればいいのですが、ご相談者さまのように、理解できず、相手を受け入れられずにいると、なかなか厳しい現実もあります。
ひどい場合ですと、ご自身も相手に振り回されてカサンドラ症候群(相手が発達障害でストレスに陥る二次障害)になってしまっているケースもあります。この方の場合は、ASDの可能性が見受けられます。
「結婚するまでわからない」…防ぎようがないのが実状
ご相談中にも、よく聞く例として
・家計簿をエクセルで、とてつもなく細かく管理され、家計費もあまり十分にもらえない
・夫婦も仕事も同じテンション(時には論破できない長文メール)で連絡してくる
・子育てとなると、すべて的確な指示を出さないと何もしてくれない
ちょっとした些細なことでも、日常の夫婦間ではストレスが溜まってしまう一方です。
そして、みなさん、おっしゃるのが「結婚するまでわからなかった」です。
結婚、妊娠・出産とライフイベントを経験していくうちに、相手の気持ちや空気を読むことが苦手だったり、相手の言葉を理解することが難しかったり、こだわりが強く、突発的に対応できない性質がより濃く出てしまうのです。また、年齢とともに症状や特徴が顕著に現れてしまう傾向もありますので、防ぎようがないのが実状です。
もちろん、病院での受診やカウンセリングも勧めますが、もう「離婚したい」とご自身が心に決めていらっしゃるのでしたら…法律的なアドバイスをさせて頂きます。
残念ながら、現状はこれだけでは離婚事由として認められません。たとえ、同意を得ようと話し合っても同意はもらえず、交渉にならないので解決にも至りません。
ですから、ここは別居して事実を作るしか方法はないのです。子どものことを思って、決断しきれない方もいるかもしれませんが、とりあえず引っ越しできる資金と働ける環境があるなら、別居してしまうしか、離婚するためには手立てはないと思います。
そのためには最低限の経済力を持つか、実家や他で甘えられる環境を作ることです。共倒れになって自分も病気になってしまっては、取り返しがつきませんよ!
水谷 江利
世田谷用賀法律事務所 弁護士