ベトナムは、社会主義国でありながら、驚異の経済成長を遂げてきた。訪越外国人数、貿易収支等、多くのマクロ指標は右肩上がりであり、今後のさらなる発展に期待が高まる。そこで本連載では、キャピタル アセットマネジメント株式会社が、ベトナムの最新事情を紹介していく。

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10年で300%以上伸長した高度経済成長期を振り返る

◆今後の経済発展~70年代日本との類似性

 

現代のベトナムは、1970年代の日本と類似していると指摘されている。同時代を経験したことのない日本人も増えている現在、ピンと来ない人も多いことだろう。

 

70年代の日本は、60年代から始まった高度成長期の後半期にあたる。前半(60年代後半)に比べれば、1970-1979年の10年間の成長率は、やや鈍化傾向にあったものの、日本のGDPは飛躍的に伸びた(1960-1969年の10年間のGDP伸び率は約+289%、1970-1979年の10年間の伸び率は約+396%であった:いずれも米ドルベース)。

 

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1973年の第一次オイルショック※1の影響を受けながらも、日本の成長は底堅かった。自動車の輸出に牽引され、10年間の輸出は約433%、輸入は約486%それぞれ伸び、累計貿易黒字額は単純計算でおよそ224億ドルとなった。その間、一人当たりGDPは1970年の約2,037ドルから1979年の約9,105ドルへと、約347%伸長した。

 

※1 アラブ諸国とイスラエルとの間の第4次中東戦争を機に、アラブの産油国が石油減産を宣言、その石油に大きく依存していた先進国経済に大打撃を与えた事件。

 

高度成長期後半の10年間で民間の固定資本形成が進むなか、「投資が投資を呼ぶ」展開となり、300兆円を超える建設投資(民間・公共を含む)がなされた。鉱工業生産指数は約43%、電力需要は約66%伸び、それに見合うように電力発電量も増えた(約+64%)。小売業販売額は約+238%、全国百貨店販売額は約+200%、飲食店販売額も約+189%伸長した。機械(約+163%)、鉄鋼(約+140%)、セメント(約236%)等の販売額も急伸した。

 

1973年の日本
1973年の日本

 

活発な設備投資を支える金融機関の貸出しも約276%の伸びを見せ、1979年時点の貸出金は300兆円を超えた。この間、上場企業の株式市場での資金調達は8兆円を超えている。保険(個人保険)の新規契約が伸び(約+312%)、生命保険会社契約高も急増した(約+566%)。可処分所得の増加によって生活にゆとりが生まれ、将来のリスクに備える行動につながったことが理由だと推測される。

 

証券市場に目を向けると、国内全証券取引所の時価総額合計額は1970年の約16.8兆円から、1979年の約72兆円へと約328%の増加をみせた。

 

耐久消費財の普及も著しく、自動車の普及率は22.6%から51.7%へと約29ポイント増加し、登録台数は約136%、保有台数は約97%伸びた。エアコン(クーラー)の普及率は8.4%から39.4%へと約31ポイント増加、電気掃除機の普及率も75.4%から96.1%へと約20.7ポイント増加した(以上、『完結 昭和国勢総覧』および『新版 長期統計総覧』のデータをもとに算出、普及率はすべて非農家世帯の数字)。

 

出所:『完結 昭和国勢総覧』より作成
[図表]70年代日本の上場企業時価総額推移(兆円) 出所:『完結 昭和国勢総覧』より作成

日本の経済成長率を超え躍進するベトナム

◆今後のベトナムへの期待

 

我が国は1970年当時、一人当たりGDPが約2,037ドル、人口は約1億人であり、人口動態をみても、現在のベトナムと似た状況にあった。加工貿易を中心とした輸出立国型の経済基盤が固まりつつあった点も酷似している。無神論に近い仏教徒が多い(=生活上の宗教的な束縛が少ない)ことや、手先が器用で勤勉な国民性も類似点として指摘できる。

 

現在のベトナムの経済環境が、日本の1970年代初頭に近いものであるとすれば、今後、一人当たりGDPの成長による内需拡大的要素と、輸出産業の発展による工業化・都市化の進展の両面から、今後10年間で、日本のような成長を見せる可能性を秘めている。

 

ベトナムでは現在、縫製品、スマートフォンの輸出で貿易黒字となり外貨を稼ぐ一方、国内の資金需要が旺盛で、銀行が大きく貸出しを伸ばし(2019年:+13%)、安定した雇用と堅調な労働需要を背景とした可処分所得の増加で、小売売上高が毎年二桁の伸びを見せている。さらに、貴金属や自動車の販売も急増している。さらに都市化が進み、農村から都市への人口移動も激しく、マンションやオフィスの建設も急速に進んでいる。

 

70年代、日本の貿易総額(輸出額+輸入額)は、1970年末の約381億ドルから1979年末の約2,137億ドルまで約459%拡大し、外貨準備高も4倍以上の約203億ドルにまで膨らんだ。一方、現在のベトナムの貿易総額5,170億ドル、外貨準備高800億ドルは、すでにこの水準を凌駕している。貿易という点では、かつての日本を追い越しているのだ。

 

すなわち、ベトナムは日本型発展プロセスが進行しつつあるといえ、IT化の進展やグローバリゼーションの進化、世界人口の増加といった当時とは異なる世界経済の発展の要素を加味すれば、今後のベトナム経済の成長速度や規模は、かつての日本よりも早く、大きくなると予想するのが妥当であろう。

 

2018年末時点のホーチミン証券取引所(HSX)、ハノイ証券取引所(HNX)、UPCoM市場※2を合わせた時価総額は約1,810億ドル(約19.9兆円)である。日本の1970年当時の上場企業時価総額も、ほぼ同水準の約16.8兆円にすぎなかったが、10年後には約72兆円へと約4.3倍となった。

 

※2 UPCoM市場(未上場公開株取引市場)では、HSXやHNXへの上場予備群であり、また公開はされているが取引所上場銘柄ほどの取引が活発ではない銘柄が取引されている。将来性のある優良銘柄が豊富である。

 

ベトナムには、今後ホーチミン証券取引所、ハノイ証券取引所に上場が見込まれる優良企業や今後民営化される企業群が多数控えている。今後それらが両取引所に上場すれば、ベトナム株式市場の流通時価総額も厚みを増すことになる。

 

海外投資家の資金が流入すれば、市場の成長が加速することは明白であるが、これに関しベトナム政府は、海外投資家を呼び込むための制度改革(外国人株式保有制限の緩和や英語によるIR体制の拡充等)にも積極的である。べトナムはMSCIのフロンティア市場構成国のなかでは今、最もMSCI新興国(エマージング)市場への格上げに近いところ※3に位置している。近い将来、ベトナム株式市場が格上げとなれば、グローバル分散投資の対象国となり、これまで以上に投資家の資金が流れこむことが予想される。同国の株式時価総額も大幅に拡大をすることが期待できる。

 

※3 現在MSCIフロンティア市場インデックスの構成において、ベトナムはクウェートに次いで構成比率が高いが、最大構成国のクウェートは本年6月に新興国市場インデックス採用国に格上げとなる。

 

インフレーションのコントロールの可否、インフラ整備にかかる資金問題や地域的な発展格差の問題等危惧される問題がないわけではないが、基本的には今後、様々なマクロ的側面で急速な拡大をすると予想できる。70年代日本の経済発展に倣えば、多くのマクロ指標で現在の2~3倍の水準への伸びとなる経済成長が期待できることになろう。

 

 

キャピタル アセットマネジメント株式会社

 

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