税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
日本の企業がアジアで最も注目している国「ベトナム」
◆最近の「ベトナム」人気
最近、新聞・テレビ等のメディアで、「ベトナム」や「ベトナム人」の話題がひんぱんに紹介されるようになり、日本でベトナムに触れる頻度は各段に増えた。
かつては新聞で2週間に1度見つけるのがやっとだったベトナム関連の記事が、今ではほぼ毎日、どこかの媒体で見かけるようになった。通勤途中の地下鉄の車内でも、デジタルサイネージで某商社の同地での活躍が映し出されている。
政治・経済関係では、日本とベトナムは過去の歴史的経緯を踏まえて、「世界でも類を見ない『自然の同盟関係』にある」(服部則夫氏:元OECD大使)と評されるほど親密な関係だ。
最近は、一般の日本人にとってもベトナムは身近になった。10年前の来日ベトナム人数は約3万4千人だったが、2018年には約38万9千人、昨年(1-11月)は約46万4千人となり、過去最高を更新した。
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昨年の伸び率(ただし、1-11月)でいえば、ラグビー・ワールドカップで急増した英国人(前年同期比+27.5%)に次ぐ27.4%の伸びである(JNTO)。一方、2019年訪越した日本人も、中国(約581万人:+16.9%)、韓国(約429万人:+23.1%)に続き約95万人(+15.2%)と、過去最高となった。
日本政策金融公庫による調査では、日本の中小企業の海外進出有望国・地域としてベトナムが6年連続で1位となっている。2019年にベトナムに進出した日本の企業数は226件で、アセアンではトップだった(アセアン通信:2位はシンガポール;172件、3位はタイ;146件、アセアン全体では919件)。
このように、ベトナムは日本企業がアジアで最も注目している国といえる。
日本でのベトナム人の就労者数は、2018年10月末現在で約31万6千人(外国人就労者全体の21.7%)であり、中国(約38万9千人:同26.6%)に次ぐ多さであった。政府の外国人就労拡大策によって、今後日本に働きにやって来るベトナム人はさらに拡大すると見込まれる。ベトナム人は理数系に強い。労働人口の減少が進む日本で、単純労働はおろかSE等の高度な職種に至るまで、貴重な戦力となりつつある。
他方、日本人のベトナムやベトナム人についての理解は千差万別である。ベトナムと日常的に接しその変貌・進化を目のあたりにして、いずれは日本のような先進国になると考える人から、過去のべトナム戦争以来の遅れた「社会主義国」「軍事国家」のイメージしかもっていない人まで様々である。
株式投資に関しても、2006年頃の第一次ベトナム株ブームと、その後の高インフレ→通貨ドン下落によって苦い経験をした人には、ベトナム株に不信感を持ち、距離をおこうとする人もいる。反対に、同国の高い経済成長による今後の資本市場の拡大を見込んで、新たに投資を検討する人も増えている。
本連載では、ベトナムのマクロ的な経済環境を中心に、リアルな現状を紹介していく。同国についての認識を再確認する上で、役立てていいただきたい。
社会主義でありながら解放経済で自国を発展させてきた
◆社会主義
何よりまず一言触れなくてはならないのは、ベトナムは「社会主義国」であること。ベトナム株(ファンド)投資を考える上では、避けて通れない議論の1つである。ただし、同じ社会主義国の中国企業株式の取引がすでに一般化しているので、投資家の社会主義国の企業への投資に対する違和感は薄らいでおり、説明のハードルは高くないと考えられる。
ベトナムは共産党の一党支配である。党が国家を指導し、国家が管理する体勢は1986年の「ドイモイ」という市場経済システムの導入から始まった。経済開放政策実施以後、現在も維持されている。しかしその現状に関する認識は、少し難解な表現ではあるが、<当面の間、党が目指す社会主義革命にいたる「長期に及ぶ社会主義への過渡期」である>という位置づけになっている。
つまり、実際のところは、(社会主義という)主義思想に拘らず、より現実的な経済運営によって国民生活の向上をはかる路線に転換している。国営セクターのみならず、私営セクターの併存をみとめ、重工業中心の経済から農業、消費財生産、輸出重視の経済構造への修正が図られている。
その結果、1950年代の中国のような社会主義モデルを目指すのではなく、<ベトナムにあった社会主義を追求する国家となった>といわれている。現実には資本主義的な市場経済原理の導入により、経済に関しては、西欧の資本主義国との差はほとんどなくなりつつある。
◆解放経済主義
ドイモイと呼ばれる経済路線によってとられるようになった経済開放主義は、徹底しており、現在同国は17もの自由貿易協定(FTA)を締結する(交渉中を含む)に至っている(2019年7月末現在、13件のFTAが発効済み、1件が発効待ち、3件交渉中、相手国・地域は60にのぼる)。
1995年のアセアン加盟(→2015年アセアン経済共同体に進展)に始まり、2007年世界貿易同盟(WTO)加盟を果たしたのち、2019年には環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)加盟とEUとのFTAを結んでいる。
ベトナムは世界の大半の国と自由貿易をできる環境にあるといえる。これは加工貿易を推し進める上では極めて重要なことだ。自由貿易ネットワークは、同様の産業構造であり、かつ日本がベトナム同様に馴染みの深いタイを凌ぐものである(タイはCPTPPに参加していない)。
この群を抜いた自由貿易主義の追及は、過去にベトナムが世界から孤立した経験を顧みた政策であるとも考えられる(1975年のベトナム戦争終結後、カンボジア侵攻、中越国境紛争等が原因で、ベトナムは国際的に孤立し、西側諸国からの支援や資本主義経済の恩恵を一切受けられなくなり、経済的に苦境に立たされた)。
米国と中国という2大経済大国間の貿易摩擦の深刻化とともに、保護貿易主義に走りがちな世界的な風潮のなかで、「自由貿易」を標榜する同国は、世界のグローバル企業から高い評価を受けている。
米中の貿易摩擦の影響を避けたい米国、中国、韓国そして日本の企業がこぞってベトナムの築き上げたFTAネットワークを利用しようと、生産・輸出拠点をベトナムへ移管し始めている。
このように、現在のベトナムは、保護主義的な資本主義国に比べれば、はるかに解放された社会主義国である。経済力はほかのアセアンの資本主義国と互角、あるいはそれ以上の実力の持ち主であることを看過してはならない。
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