新型肺炎拡大でも落ち着いている金融市場
■昨年末、中国の武漢で発生した新型肺炎の感染が拡大しています。金融市場を見ると、主要国の株式は1月こそ下落しましたが、2月に入ると米国、欧州市場が上昇に転じ、最高値を更新するなど比較的落ち着いた動きとなっています。
■そうした中、新興国通貨は比較的安定的に推移しています。これは、株式などの動向から判断すると金融市場全体がリスク回避的な状況には至っていないことに加え、米国の緩和的な金融政策が続くとの見方が多いことが背景です。
実は2極化している新興国通貨
■ただ、新興国通貨の動きをよく見ると、対米ドルで上昇している通貨と大きく下落している通貨があることが分かります。つまり、足元の新興国通貨の動きは2極化しているようです。特に、南アフリカ・ランドとブラジル・レアルは年初来7%超下落しており、他とは明らかに傾向が異なっています。
■両国に共通する点として資源依存度が高いことがあげられます。主な輸出品である鉄鉱石や石炭は、世界最大の素材の消費地である中国経済が新型肺炎の影響で大幅な減速に陥っているため価格が下落しています。輸出が価格・数量ともに落ち込めば、これらの国々は大きな影響を受けるため、通貨の下落につながっていると考えられます。
新型肺炎が沈静化すれば素材価格が持ち直し、新興国通貨も上昇へ
■中国では、新型肺炎の拡大抑制のため春節休暇が延長されました。その後、企業や工場は操業を再開し始めていますが、多くの従業員が復帰できず稼働率は低位に留まっています。一方、中国政府の発表する新型肺炎の新規感染者数は徐々に減少してきており、企業の稼働率も緩やかながら高まっていくことが期待されます。そのため現在が素材需要が最も弱い時期と考えられ、今後は素材の需要が回復し、素材価格も正常化に向かうと見られます。伴って、現在は低調な新興国通貨も上昇に転じると考えられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型肺炎の影響と新興国通貨の動向』を参照)。
(2020年2月21日)
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