亡父は保証人だった…「借金は息子さんが」支払ったら破綻する

「遺言を書いておけばいいんでしょ?」「お金少ないし、子どもたちが何とかしてくれる」…相続のシーンでは、こういった声が多く聞かれます。しかし、安易な生前対策をした結果、骨肉の「争族」が発生してしまう例は後を絶ちません。そこで本連載では、税理士法人レディング代表・木下勇人氏の書籍『ホントは怖い 相続の話』(ぱる出版)より一部を抜粋し、相続の基礎知識を解説していきます。

「絶対に借金を相続したくない!」とゴネる兄

【事例】細野さん(45)の父親(77)が、多額の借金を残して亡くなりました。遺産分割協議にあたって、細野さんの兄は「印鑑を押すと借金を相続することになるからイヤだ」と言い張っています…。

 

借金がある場合、ハンコを押さずにいれば返さずに済む、ということには…、残念ながらなりません。ゴネ得はありません。

 

遺産の分配が終わらないうちに借金返済の催促が来ることもあります。貸している立場からすると、「すいません、誰が借金を相続するか、まだ決まっていないんで」と言われても関係ないのです。

 

多額の借金を相続しないためには、相続放棄という手段があります。相続放棄をすると、財産はプラスもマイナスもすべて放棄することになります。

 

相続放棄は自己のために相続開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出して手続きをします。他の相続人と相談しなくともできますが、相続放棄された借金は消えるわけではなく、次の相続順位の人のところに行きます。

 

つまり、配偶者と子供が相続放棄すると、父母(祖父母)へ、父母(祖父母)も相続放棄すると、兄弟姉妹へ借金が相続されることになってしまうので、通常はすべての相続人が相続放棄の手続きをすることになります。

 

3年前に亡くなった父が「保証人」だったらしい

【事例】3年前に父を亡くした林さん(55) に、ある日突然、銀行から「お父さんが保証人になっていた借金を払ってください」と連絡がありました。借金はかなりの額で、支払えば、林さんの老後の生活費はゼロどころかマイナスになりそうです。保証人の話は全く知らなかったのですが、林さんは多額の借金を払わなければならないのでしょうか…。

 

被相続人が家族に黙って保証人になっていた、というケース。めったにありませんが、かなり危険な爆弾なので、注意喚起をしておきます。

 

保証していた先が資金的な理由や死亡などで借金を返せなくなったら…、当然のごとく保証人に請求がきます。自分は全く知らないと主張しても、貸している側には関係がないことです。

 

「保証人になっている」というのは、本人が言わないと誰にもわかりません。親が誰かの保証人になっていて、それを家族に伝えなかったら、家族はずっと知らないままです。聞かされていなければ、確認しようがありませんから、相続人は何も知らないまま、保証人の立場も相続してしまいます。

 

●保証人とは

 

保証人は主債務者(借金をした本人)の保証をするという立場です。単なる保証人と連帯保証人がありますが、連帯保証人は、借金の取り立てに対して「主債務者に請求してください」とは言えないため、より責任が大きくなります。

 

●3ヶ月経つと相続放棄できない…

 

仮に親が億単位の借金の連帯保証人になっていたとしても「知らなかったのだから許されるだろう」とか「相続放棄すればいいじゃないか」と考える方もいるでしょう。

 

でも、相続放棄は自己のために相続開始があったことを知ったときから3ヶ月以内でないとできません。たとえ親が保証人になっていたことを全く知らなくても、3ヶ月以上経ってしまうと原則として放棄できないのです(例外もあります)。

 

財産を受け継ぐ立場としては、親が生きている間に「保証人になっているか」の確認はしておかないと危険です。また、もしご自分が保証人になっている場合は、必ず家族に伝えるべきです。

 

◆相続によって、損害賠償責任も引き継ぐ場合も!

 

例えば、亡くなった故人が、電車への飛び込み自殺や人身事故で他人に損害を与えてしまった場合、その賠償債務も相続の対象となります。また、医師であった親が亡くなったのち、患者さんから医療訴訟を起こされたら、たとえ医師でなくても相続人が受けて立たなければならないのです。相続放棄できるのは3ヶ月以内。悲しみに暮れている間もないのです。

 

 

木下 勇人

税理士法人レディング 代表

 

相続・事業承継専門『税理士法人レディング』 代表
税理士
公認会計士
宅地建物取引士

1975年、愛知県津島市出身。大学時代に宅建、不動産鑑定士を取得。28歳で公認会計士試験に合格し、「監査法人トーマツ」名古屋事務所に入所。上場企業級の非上場会社オーナーファミリーの事業継承対策に従事。約5年勤務の後、33歳で独立し、名古屋で公認会計士木下事務所・木下勇人税理士事務所を開設。翌2009年に、相続・事業承継専門の税理士法人レディングの代表となる。2017年、東京にも事務所を開設。現在、全国の税理士向け、保険募集人向け、不動産事業者向けなど、相続を取り巻くプロ相手に年間150回の研修講師をしながら、相続に関する情報を発信している。不動産鑑定士第2次試験合格者。AFP資格認定。東京税理士会 京橋支部所属。

著者紹介

連載「知らなかった」では済まされない!ホントは怖い相続の話

ホントは怖い 相続の話

ホントは怖い 相続の話

木下 勇人

ぱる出版

「知らなかった」では済まされない! ×遺言書を書いておけば大丈夫 ×財産が少ないから財産目録はいらない ×成年後見人を付ければ安心 ……これらはすべて間違い! 3000件の遺産相続に関わった相続専門税理士が教え…

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