新型コロナウイルスに左右される中国の金融政策

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中国で全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の延期検討が報道されるなど、中国当局は新型コロナウイルスの感染拡大の封じ込めに取り組んでいます。人民銀も金融政策でサポートをする姿勢を示したことで、株式市場は上昇しましたが、資金供給の規模が予想を小幅下回ったため中国短期金融市場で翌日物レポ金利などの一部は上昇しました。

中国人民銀:新型コロナウイルスへの対応で資金供給(1年物)2000億元、金利を引き下げ

中国人民銀行(中央銀行)は2020年2月17日、中期貸出制度(MLF:国債などを担保に人民銀が中国の銀行に中期資金を貸出す制度)経由で市中銀行に資金供給を実施しました。人民銀は1年物MLF資金を2000億元(約3兆1500億円)供給し、金利を従来の3.25%から0.1%ポイント引き下げ3.15%に設定しました(図表1参照)。

 

日次、期間:2019年4月17日 ~2020年2月17日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国中期貸出制度(MLF1年物金利)の推移 日次、期間:2019年4月17日 ~2020年2月17日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

新型コロナウイルスによる経済への影響を和らげるための金融緩和政策の一環と見られます。また、人民銀は7日物リバースレポで1000億元も供給しました。MLF引き下げに伴い、最優遇貸出金利(LPR)の引き下げも想定されます。

どこに注目すべきか:MLF、LPR、新型コロナウイルス、WHO

中国で全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の延期検討が報道されるなど、中国当局は新型コロナウイルスの感染拡大の封じ込めに取り組んでいます。

 

人民銀も金融政策でサポートをする姿勢を示したことで、株式市場は上昇しましたが、資金供給の規模が予想を小幅下回ったため中国短期金融市場で翌日物レポ金利などの一部は上昇しました。

 

今回の人民銀の金融政策は、確かに小幅という印象もありますが、金融政策は新型コロナウイルスの感染拡大による経済への対応には限界もあると見られます。また、感染の終息時期が不透明な中、政策の温存も必要と思われます。

 

まず、金融政策の限界を振り返ります。金融政策の効果が期待される面としては、感染拡大により中小企業などには資金繰りが苦しい状況も想定されます。この面での金融政策(緩和)は有効と思われます。

 

一方で、新型コロナウイルス感染への懸念により萎縮した消費者マインドが、金融緩和政策だけで改善効果が期待できるのか疑問もあります。また、感染懸念による工場の操業停止など供給面の不安には別の対策が必要でしょう。

 

次に、新型コロナウイルス感染の終息時期に関する足元の状況を振り返ると、感染拡大の抑制を期待する声もあります。例えば、李克強首相は新型ウイルス対策の会合で、感染拡大に対するこれまでの取り組みにより、前向きな傾向がみられるようになったと述べています。確かに、中国における新型コロナウイルスの新規感染者数に落ち着きも見られます(図表2、棒グラフ参照)。しかし、世界保健機関(WHO)は、新たな感染症例が実際に減りつつあるのか判断を下すには時期尚早であると慎重な見方を示しています。

 

日次、期間:2020年1月22日 ~2020年2月17日 出所:WHO、中国国家衛生健康委員会のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国累計感染者数の推移 日次、期間:2020年1月22日 ~2020年2月17日
出所:WHO、中国国家衛生健康委員会のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

なお、中国の国家衛生健康委員会が2月18日に発表した新型ウイルス感染症例は累計で7万2436件になりました。感染者数の公表基準を変更した12日から中国当局とWHOの数字にかい離が見られましたが、ようやく収束しました。

 

注意したいのは図表2は中国、特に湖北省での新規感染者数の傾向に過ぎないことです。日本を含め国外の感染拡大が抑制できるかは、まさにこれからが正念場で感染者減少の判断を下すには時期尚早と思われます。終息時期も含め、金融政策には難しい判断が続きそうです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新型コロナウイルスに左右される中国の金融政策』を参照)。

 

(2020年2月18日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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