●企業決算は、今年度の業績の厳しさを印象付ける内容、業績面からは積極的に買いにくい状況。
●ただ、新型肺炎で各国が利下げを実施、一段と緩和的になった金融環境が株価を支える見通し。
●日経平均は目先膠着感が強まると予想、ただ2012年からの緩やかな上昇トレンドは継続とみる。
企業決算は、今年度の業績の厳しさを印象付ける内容、業績面からは積極的に買いにくい状況
日経平均株価は、節目となる24,000円台の回復手前で足踏みが続いています。そこで、今回のレポートでは、日経平均株価を見通す上での主な材料について要点を整理します。はじめに企業決算を確認します。4-12月期決算発表は、先週までにほぼ一巡しました。日本経済新聞社によると、上場企業(新興・子会社上場など除く)による今年度の純利益予想は、2月14日時点の集計で、前年度比9%減でした。
今回の決算では、幅広い業種で通年度の業績予想の下方修正が目立ちました。ある程度、予想されていたとはいえ、改めて今年度の業績の厳しさを印象付ける内容となりました。アナリストによる業績予想の傾向を示す「リビジョン・インデックス」も、足元で下方修正の割合が増えていることを示しており(図表1)、業績面からはまだ積極的に買いにくい状況といえます。
ただ、新型肺炎で各国が利下げを実施、一段と緩和的になった金融環境が株価を支える見通し
次に、新型肺炎の影響を整理します。依然として感染の拡大は続いていますが、市場の比較的落ち着いた反応をみる限り、この展開はすでに織り込み済みと考えられます。むしろ、市場の焦点は、感染拡大と景気への影響を前提とし、各国がどの程度、踏み込んだ対策を打ち出すかに移っていると思われます。感染拡大の震源地である中国は、すでに巨額の流動性を市場に供給し、時限的な減税措置の実施も表明しています。
また、2月に入り、多くの国が金融緩和を行っています。アジアでは、タイが5日、フィリピンが6日に利下げを決定し、中国も20日に政策金利を引き下げるとの見方が浮上しています。また、アジア以外でも、ブラジルが5日、ロシアが7日、メキシコが13日に利下げを決定しました。このように、世界の金融環境は一段と緩和的になっており、日本を含む主要国の株価を支えているとみています。
日経平均は目先膠着感が強まると予想、ただ2012年からの緩やかな上昇トレンドは継続とみる
つまり、日本株については、業績面からは積極的に買いにくいものの、各国が利下げなどの対策を打ち出すことで、金融相場の様相が更に強まり、結果的に株価が支えられる公算が大きいと考えます。この点を踏まえて、日経平均株価を見通した場合、上値が重い一方、下値も限定的という動きが予想され、当面は23,000円台で、やや膠着感の強い相場展開が見込まれます。
日経平均株価が24,000円台を回復するには、業績や景気の持ち直しを連想できる、相応の材料が必要です。具体的には、①感染者数のピークアウト、②感染封じ込めに効果的な対策の発動、③ワクチンの開発などが考えられます。いずれも、時間を要するものの、ある程度の進展が期待されるため、日経平均株価は今局面でも、2012年から続く緩やかな上昇トレンドを維持できると考えています(図表2)。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株を見通す上での要点整理』を参照)。
(2020年2月17日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト