地域社会に貢献する姿勢をみせることが大切
動物病院の建てられる場所には、建築基準法や都市計画法、条例などによって定められた法的な制限があります。こうした規制の存在は、すなわち「動物病院が好き勝手に建てられると地域の環境が乱されるおそれがある」と一般的に考えられていることを意味します。
たしかに動物病院は、誰からも歓迎されるような施設ではありません。「動物はうるさいし、臭いし大嫌いだ」という人にとっては反感や嫌悪の対象になるでしょうし、また動物が好きな人であっても、動物病院がすぐ近くにできることになると、不特定多数の人が日夜訪れることになるので、「今まで静かなところだったのに、何だかざわざわした雰囲気になりそうでイヤだ」などという思いを抱くことになるかもしれません。
このように、動物病院の院長は、自分たちが地域社会にとって「好ましい存在」とはみなされない可能性があることを常に意識しておく必要があります。そして、万が一、地域のコミュニティから激しく拒絶されるようなことにでもなれば、その地で動物病院の経営を続けることは困難になるでしょう。
したがって、院長は地元の人たちに受け入れられるよう、可能な限り動物病院が地域に対して開かれた場となるように努め、かつ「動物病院は地域にとって有益な施設である」と認めてもらえるように、地域社会に積極的に貢献する姿勢をみせることが大切となります。
たとえば、近くに小学校があれば、生徒たちに病院を訪問してもらい、獣医師の仕事ぶりを見学させて、動物への愛情、命の大切さを学んでもらう――そんな試みをしてみるのも面白いかもしれません。
親しみやすい色やデザインの外観が理想的
「動物病院はどのような外観が最も理想的なのか」という問いに対して一概に答えることは難しいといえます。人によっては、「集客の観点からは建物を目立たせ、人の目をひきつけるデザインであることが望ましい」というかもしれません。
もっとも、他と差別化することばかりに心が奪われると、奇をてらいすぎて、突拍子もない色やデザインになるおそれがあります。飼い主に「こんなおかしな色の病院には入りたくない」などと思われてしまったら逆効果になってしまいます。
しかし成功している動物病院の外観を眺めていると、やはり親しみやすい色やデザインが多いように思われます。また、前述のように動物病院は地域に対して開かれた場であることが求められます。そうした理念を外観のデザインにおいて強く表現してみることも一つの選択肢となるでしょう。
たとえば、筆者のクライアントである「いるか動物病院」(静岡県静岡市)のケースは、その一つの実例として参考になると思います。
同病院は、「街に開かれた地域の動物病院」というコンセプトのもと、幹線道路に面している敷地上に建てられた横長の建物の床が1メートルほどアップされた設計となっています。また、獣医師や来院する動物、飼い主など建物内部にいる人々の様子があたかも看板の一部にみえるように、前面がすべてガラス張りとなっています。それによって、「隠すようなことは何一つない、患者に対して真正直で誠実な診療を行う病院だ」という印象を与える効果ももたらしています。
なお、建物の外観は年が経つにつれて古びていきます。それをそのまま放置していては、「汚らしい」印象を与え、集客にとってはマイナスになるでしょう。したがって、外装のメンテナンスやリフォームは意識して定期的に行うことを心がけましょう。