コロナウィルスによる新型肺炎の拡大懸念と「SARSの教訓」

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中国武漢市で発生した新型肺炎は、人から人への感染が確認されたこと、米国でも感染が確認されたことで感染者の拡大が懸念されています。2002年に中国で発生したコロナウイルスの一種であるSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界約30ヵ国で拡大しました。単純に同じパターンを繰り返すわけではないにしろ、感染者数が多かったSARSを振り返ります。

新型コロナウイルス:人から人への感染確認、米国での感染も確認される

中国武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、中国政府の専門家チームのトップは2020年1月20日に人から人に感染していることは間違いないと述べています。感染拡大の可能性を受け、世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される緊急事態」にあたるかを判断する専門会の緊急会合を22日に開くと発表しました。

 

なお、米疾病対策センター(CDC)の当局者は21日、最近中国に渡航した人の感染がワシントン州で確認されたと発表しました。米国での感染を受け、米国市場では新型コロナウイルスの影響に対する警戒姿勢も見られました。

どこに注目すべきか:新型肺炎、コロナウイルス、SARS、WHO

中国武漢市で発生した新型肺炎は、人から人への感染が確認されたこと、米国でも感染が確認されたことで感染者の拡大が懸念されています。2002年に中国で発生したコロナウイルスの一種であるSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界約30ヵ国で拡大しました(図表1参照)。単純に同じパターンを繰り返すわけではないにしろ、感染者数が多かったSARSを振り返ります。

 

期間:2002年11月1日~2003年7月31日、感染者の累計 出所:世界保健機関(WHO)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]重症急性呼吸器症候群(SARS)累計感染者数 期間:2002年11月1日~2003年7月31日、感染者の累計
出所:世界保健機関(WHO)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

WHOによると、最初のSARS症例は2002年11月の中国広東省でした(図表2参照)。その中国で発症例が最後に確認されたのは翌年の6月でした。当時中国で問題となったのは、公表の遅さです。例えば、中国が日々の患者数を公表したのは翌年3月でした。

 

期間:棒グラフ左は最初の可能性の発症日、右は最終日 出所:世界保健機関(WHO)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]SARS発症日可能性の最初と最終日 期間:棒グラフ左は最初の可能性の発症日、右は最終日
出所:世界保健機関(WHO)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

今回の新型肺炎の最初の患者が発症したのは昨年12月で、迅速とは言えないまでも、当時より改善は見られます。

 

SARSの累計感染者は世界全体で約8千人ですが、中国が5千人以上と大半です。人から人へ感染することから、世界約30ヵ国に幅広く感染が広がりました。

 

次に、SARSの感染時期を主な国別にみると、2003年春頃に感染が広がりました。WHOも3月にSARSに対して緊急警告を出しました。その中で、ベトナムに注目していただくと、発症確認からWHOが03年4月には終息宣言が出されています。その背景に、最後は自らSARSに冒されながら蔓延を防いだイタリア人カルロ・ウルバニ医師の貢献などがあります。

 

SARSの終息宣言をWHOが出したのは03年7月でした。ただ、ベトナムの終息に続き、シンガポールでも懸念が低下したとWHOが指摘した頃に、懸念は徐々に和らいでいました。

 

このような経緯を念頭に、当時の市場動向を振り返ると、香港ハンセン株式市場などアジアの株式市場はWHOの緊急警告を受け下落局面も見られました。ただ当時はこの時期にイラク戦争もあり、SARSだけが変動要因でない点に注意は必要です。

 

足元、報道では中国の死者数が増えていることなどが伝えられています。また中国が春節で人の移動が増えるのも気がかりな材料ではあります。しかし、このような局面こそ、冷静な判断と信頼性のある情報が求められます。まずはWHOが「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」を宣言するのか、また、どちらであれ背景の説明に注目しています。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『コロナウィルスによる新型肺炎の拡大懸念と「SARSの教訓」』を参照)。

 

 

(2020年1月21日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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