1月6日の大発会からスタートした2020年の日本株。いきなり大幅安と大幅高を繰り返す波乱の展開に。どうやってこの大波を乗り切るべきなのでしょうか?
大発会からいきなり波乱含みとなった2020年
1月6日の大発会からいきなり日経平均株価は451円76銭安の大幅安となり、正月気分も一気に冷める展開でした。
ところが、その翌日の7日は一転、370円86銭高の大幅高。と思えば8日は再び370円96銭安の大幅安、そして9日は再度535円11銭高の大幅反発と、株価が毎日のように乱高下する状況が続きました。
「いったいどうすればよいの」と思ってしまいますが、株式投資を長年続けていれば、今回より激しい乱高下は何度も訪れます。この程度でビクビクしていては、株式投資で成功することはできません。
2008年のリーマン・ショックの際には、日経平均株価が10,000万円割れの状況で、毎日のように1,000円近くの乱高下が続いていました。今の日経平均水準でいえば、毎日2,000円ずつ上がったり下がったりするようなものです。
そこで今回は、株価の乱高下を乗り切るため、どのような行動を取るべきかを考えてみたいと思います。
荒波を乗り切る方法は大きく分けると4つ
株価が大幅高・大幅安を繰り返し乱高下するような状況において、私たち個人投資家が取りうる(あるいは取ってしまいがちな)行動は大きく分けると以下の4つになります。
(1)大幅安になると慌てて売ってしまい大幅高で慌てて買い直すことを繰り返す
(2)大幅安になったときに買い向かう
(3)特に何も動かずどっしりと構える
(4)個別銘柄ごとの株価のトレンドに従って行動する
それでは、詳しく検討してみます。
株価の動きに翻弄されてはうまくいかない
まず(1)大幅安になると慌てて売ってしまい大幅高で慌てて買い直すことを繰り返すのケースです。
これは完全に、株価の動きに翻弄(ほんろう)されてしまっていると言ってよいでしょう。
株価が大きく下がるのを見て、「これは大変だ!」と慌てて売却し、今度は大きく反発すると「やっぱり上昇するんだ!!」と慌てて買い戻す…。
乱高下している間にこれを繰り返すと、結局は損失が積み重なってしまいます。
また、株価の大幅下落で売却した後、反発しても買い戻さない人も多いようです。そうすると、株価が乱高下を終えて大きく上昇に転じたような場合、株を保有していないので利益を得ることができなくなってしまいます。
(1)のケースの最大の問題点は、あらかじめ「こうなったら株を買い、こうなったら株を売る」という明確なルールをご自身で持ち合わせていないことにあります。心当たりのある方は、早急に売買のルールを決めるようにしてください。
大幅安で買い向かっても大丈夫?
次に(2)大幅安になったときに買い向かうケースです。
今回でいえば、1月6日や8日の下落の際に、株を買うという手法です。中級者以上の方は、こうした行動を取った方も結構いたようです。
確かに今回は6日や8日に下落したときに株を買えば、その後の上昇により、安く株を買えたことになります。
しかしそれは「結果論」に過ぎず、かなりリスクの高い手法となります。
今回は結果的に反発しましたから良かったですが、もし6日や8日に買って、さらに株価が大きく下がってしまったらどうするのでしょうか?最終的に含み損を抱えた塩漬け株を作ってしまうことになります。個人投資家として、最大の失敗は塩漬け株を作ることであることは忘れないようにしてください。
アベノミクス相場では、大きく下がったら買い向かうことで、結果として良い成果につながっているのも確かです。しかし、長期上昇相場が終焉(しゅうえん)となれば、大きく下がったら買い向かうと、さらに株価が大きく値下がりして手も足も出なくなります。
もし大幅下落で買い向かうとしたなら、さらに株価が下がったらどうするのかを事前に決めたうえで実行し、損失が大きく膨らまないようにしてください。
「動かない」なら強い忍耐力が必要
(3)特に何も動かずどっしりと構える、株価の乱高下に何も動じず動かないという人もいます。これは長期投資を志向されている方に多いです。
長期的に経済成長が続くと仮定したならば、それに連動して株価も上昇するはず、という考えがおそらく根底にあると思われます。
そうであれば、途中で何度も訪れる株価の乱高下が起きてもいずれは上昇するはずだから、変にドタバタして余計な損失を被るよりも、何もせずじっと株を持ち続けた方がよい、という考え方です。
確かにブラックマンデーの急落が起きてもその後は回復しましたし、リーマン・ショックの下落前の株価水準よりはるかに株価が上昇している銘柄も数多くあります。
しかし株を持ち続けると、時に資産が2分の1、3分の1、ひどいときにはそれ以上に下落することもあります。それに耐えうることができる忍耐力が必要です。資産が3分の1になってから慌てて投げ売りするようでは元も子もなくなってしまいます。
さらには、今後も今までと同じように、株を持ち続けたら長期的には上昇する、という保証はありません。
現に、バブル崩壊から30年以上が経過しましたが、日経平均株価自体がバブルの高値よりはるかに下に位置していることは忘れてはいけません。
個人的には、株価が大きく値下がりするのを我慢してじっと耐えるよりは、下落の初期段階で一度売却してしまった方が、精神的にもその後の投資がやりやすいのではないかと思います。
株価のトレンドに従って行動すれば「大負け」はない
最後の(4)個別銘柄ごとの株価のトレンドに従って行動する
が、筆者が実践している手法です。株価が乱高下しようがしまいが関係なく、個別銘柄ごとに株価のトレンドに従って売買するというものです。
例えば今回のケースでいえば、持ち株のうち6日の下落により25日移動平均線を明確に割り込んで下降トレンドになったものは売却しましたが、25日移動平均線を超えたままの銘柄は保有を続けました。8日の下落の時も同様です。
売却した銘柄については、その後再度25日移動平均線を超えれば買い直しを検討します。
そして、売買タイミングを逸して保有できていない銘柄のうち、6日や8日の下落時に、上昇トレンドをキープしつつも株価が値下がりしているものについては新規買いを実行しました。
これは何をやっているかといえば、持ち株のうち強い銘柄を残し、弱い銘柄を売却しているのです。
これにより、9日の反発の時点で上昇トレンド継続の銘柄は売らずに持ち続けているため、ここから大きな上昇になっても、しっかりと上昇の恩恵を受けることができます。
逆に、ここからズルズルと株価の下落が続くような場合、移動平均線を割り込む弱い銘柄から順々に売却していくことになるので、株を持ち続けた結果とてつもない含み損を抱えて手も足も出なくなる…ということは避けられるのです。
上昇トレンド銘柄を持ち続けることで利益をしっかりと確保できる
筆者はブログ(https://kabushiki-adachi.com/)にて、ADA指数というものを公表しています。これは、投資可能資金を100%とすると、そのうちどの程度株式に資金を投下しているかを表すものです。
このADA指数の昨年末から1月9日までの推移は以下のとおりです。
・12月30日59.1%
・1月6日49.3%
・1月7日64.4%
・1月8日52.5%
・1月9日62.3%
このように、6日や8日は下降トレンドになった銘柄を売却したため、前日に比べて指数が下がっています。しかし、6日や8日も、その前日に保有していた株の80%は保有し続けており、この状況で翌日以降大幅高になっても、保有株の値上がりによりしっかりと利益を得ることができるのです。
もし、株価がさらに下げ続けることになれば、下降トレンド転換銘柄から順次売却するためADA指数は日々低下していきます。これにより、塩漬け株を避けているのです。
7日や9日のADA指数が前日に比べて上昇しているのは、一度売却した銘柄がすぐに反発して上昇トレンドに復帰したため買い戻したことによります。この場合は売ったときの値段より高く買い戻すことも多いですが、大きな負けを防ぐための必要経費として考えれば良いと思います。
筆者はこの方法により、昨年末から比べて1月10日時点で利益を増やすことができました。
(2)や(3)の方法は、うまくいけば大きな利益を得られますが、失敗したときのリスクも高いです。
大きな損失、大きな失敗を避けたいという方は、ぜひ(4)個別銘柄ごとの株価のトレンドに従って行動するの方法を実践してみてはいかがでしょうか。
足立 武志
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
※本記事は、楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で2020年1月16日に公開されたものです。