敵対的買収…ターゲットになりやすい会社の特徴は?
敵対的買収とは、買収対象会社の取締役会の同意を得ずに、買収を仕掛けるM&Aの戦略手法の一つです。買収対象会社の株式を買い集めして、また株式公開買付け(TOB)を実施して株式を買付けすることにより、買収対象会社の経営権を取得することです。公開買付けを行うので、「敵対的買収TOB」ともいいます。
敵対的という言葉がつくから一見悪いイメージがありますが、買収するからその会社を悪くするというわけではないため、買収対象会社の株主、社員、クライアントとは友好的です。
しかし敵対的買収はどの会社にでも実施するわけではありません。敵対的買収されやすい会社の特徴があるのです。
まず「特定の技術力が高い会社」は敵対的買収の対象にされやすいといわれています。なぜならば、自社で特定の免許を取得したり、スキルが高い優秀な人材を採用したりするよりも、すでに実績のある会社を敵対的買収したほうが、自社の規模拡大などのシナジー効果を最大化に得ることができるからです。
また「株主の構成が不安定な会社」も敵対的買収の対象にされやすいといわれています。なぜなら、利益を求める投資家が多く株主となっている会社は、株主は基本利益を優先するので、敵対的買収により自分の利益が大きいと判断した際に、経営陣の変更を望む可能性が高くなるからです。一方、中小企業の場合は通常、経営者が大半の株式を所有しているため、株主構成が安定しているといえます。
さらに純資産に対して「株価が低い会社」は、買収したあとに利益が大きく得ることができることから、敵対的買収のターゲットになりやすいといわれています。
ほかにも、「独自の売却販路を持っている会社」や「経営状況が不安定になりやすい会社」などの会社も敵対的買収の対象として狙われやすいようです。
まさかの敵対的買収…その防衛策とは?
突然の敵対的買収に右往左往しないために、企業オーナーであれば、日ごろから対策にっ講じるべきです。そこで、敵対的買収の防衛策としてメジャーなものを見ていきましょう。
(1)買収意欲を失わせる「クラウンジュエル」
クラウンジュエルは、買収対象となった会社は、自社の魅力的な技術、資産、事業を意図的に第三者に分散させることによって、敵対的買収の会社に買収意欲を失わせる防衛策の一つです。「敵対的買収してもメリットは得られない」という状態にして、買収を回避します。
(2)元の株主に有利な新株を購入できる「ポイズンピル」
ポイズンピルは、あらかじめ既存株主向けに「新株予約権」を発行するという防衛策です。敵対的買収により会社の株式の一定数が取得された場合、ポイズンピルによってあらかじめ定められていた新株を発行し、既存株主は新株予約権により新株を時価よりも安い価格で取得します。発行された株式数が増えることで、敵対的買収会社の株式比率を下げ、買収を食い止めるのです。
(3)マネジメントバイアウト(MBO)
会社の経営陣が株主から株式を取得して、事業譲渡により事業を分割させて、オーナー経営者として独立させる方法です。マネジメントバイアウトは、株主に左右されずに経営を行いたいという意図で実施される場合もあります。
(4)取締役の退職金を高く設定する「ゴールデンパラシュート」
敵対的買収されると、現取締役を解任されるケースがほとんどです。ゴールデンパラシュートは現取締役を解任することによって、多額の退職金を支払えるよう、事前に取締役の退職金を高く設定する防衛策です。
一般的には、ゴールデンパラシュートに設定されている取締役の退職金は、取締役の給料の3倍を一つの目安にします。たとえば年収1,500万円の取締役の場合、退職金は4,500万円になります。取締役が2人いれば、退職金だけで9,000万円支払うことになります。敵対的買収をすれば取締役の退職金に大金を擁することになり、会社の財務状況が大きく悪化することが予想されます。結果、敵対的買収を諦めるという防衛効果があるといわれています。
(5)逆買収「パックマンディフェンス」
敵対的買収を仕掛けてきた会社に対し、逆に敵対的買収をしかけることです。日本では、敵対的買収を仕掛けられた会社が、敵対的買収を仕掛けた会社の1/4の株式を取得すれば、敵対的買収を仕掛けた会社の議決権はなくなります。
(6)株式公開買付の株価を高く設定する「ホワイトナイト」
敵対的買収は、株式公開買付け(TOB)を実施して株式を買付けすることにより、会社を買収しますが、ホワイトナイトは、買収対象となった会社が自社と友好的な第三者の会社に高い株価で株式公開買付け(TOB)を実施してもらい、敵対的買収を対抗する策です。ホワイトナイトは防衛策というより、対抗策といえるでしょう。
このように、敵対的買収されないように、対策の導入を検討している会社は増えています。しかし株主の反対により、対策が立てられない会社も少なくありません。利益を重視する株主からすれば、より利益が増えるのであれば、経営陣が変わっても構わないからです。つまり、敵対的買収の防衛策を立てるには、株主とよい関係を築き、同意をもらうことが非常に重要といえるでしょう。