2020年「日本経済見通し」…現行の金融政策維持と予想

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●実質GDPは19年度が前年度比+0.9%、20年度は同+0.6%、21年度は同+0.8%を予想。

●2020年は現行の金融政策が維持され、10年国債利回りはおおむねマイナス圏での推移が継続。

●安倍政権は景気配慮の財政政策継続、2020年後半はポスト安倍を巡る政治的な動きに注意。

実質GDPは19年度が前年度比+0.9%、20年度は同+0.6%、21年度は同+0.8%を予想

足元の日本経済は、米中貿易摩擦問題などによる外部環境の悪化と自然災害の影響で、輸出や生産が低迷しています。一方、人手不足を背景に、雇用と所得環境は底堅さを維持しています。先行きについては、輸出の回復が遅れるなか、消費増税後の内需の落ち込みが重なり、成長ペースの鈍化がしばらく続くと思われます。そのため、実質GDP成長率は2019年度が前年度比+0.9%、2020年度は同+0.6%への減速を予想しています(図表1)。

 

なお、消費増税の個人消費への影響は、軽減税率の導入などもあり、過去の増税時よりも小さいとみています。輸出も減少基調の定着は想定していません。また、12月5日に閣議決定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」の政策効果は、2020年4-6月期以降に顕在化し、複数年度にわたって成長ペースを押し上げる見通しです。これらを踏まえると、2021年度の実質GDP成長率は、前年度比+0.8%に持ち直すと考えられます。

2020年は現行の金融政策が維持され、10年国債利回りはおおむねマイナス圏での推移が継続

2020年の金融政策は、現行の枠組みが維持される公算が大きいとみています。日銀は、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれるおそれが高まる場合、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じるとしています。弊社は、米中貿易協議が段階的に進展し、製造業の景況感は底入れすると考えており、いわゆる「モメンタムが損なわれるおそれ」は高まらず、長短金利の操作目標水準を変更する必要性は次第に低下すると見込んでいます。

 

日本の10年国債利回りは、2019年9月以降、米中協議の進展期待から徐々に水準を切り上げ、12月に両国が第1段階の合意に達したことで、足元ではプラス圏に浮上しています。これは、米中対立への過度な悲観論が後退し、利回りが日銀の操作目標水準であるゼロ%程度に回帰したものと考えます。世界的に、まだ景気には力強さはなく、10年国債利回りは、2020年を通じて、おおむねマイナス圏での推移が続くと予想しています(図表2)。

安倍政権は景気配慮の財政政策継続、2020年後半はポスト安倍を巡る政治的な動きに注意

政治動向に関するメインシナリオは、安倍政権が継続し、景気に配慮した財政政策の運営が継続されるというものです。2019年の大きなイベントであった7月の参議院選挙は、大方の予想通り、与党で過半数を確保し、波乱なく終了しました。また、10月の消費増税も予定通り実施されましたが、その後、安倍政権が打ち出した前述の総合経済対策は、長期的に景気を支える内容となり、増税の影響は徐々に軽減されると思われます。

 

リスクシナリオは、国民の支持率が低下し、安倍政権が不安定化することです。例えば、強引な憲法改正の推進がそのきっかけになる恐れがあります。ただ、安倍首相は憲法改正に強い決意を示しているものの、国民投票法改正案の採決は見送られるなど、憲法改正に向けた動きは停滞しています。なお、安倍首相の任期は2021年9月ですので、2020年後半には、ポスト安倍を巡る政治的な動きが強まることも想定され、注意が必要です。

 

(注) 2019年12月16日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。消費者物価指数は生鮮食品を除く総合。 (出所) 内閣府、総務省、経済産業省のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]日本経済の見通し (注) 2019年12月16日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。消費者物価指数は生鮮食品を除く総合。
(出所) 内閣府、総務省、経済産業省のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注) データは2015年1月から2019年11月までが実績値。2020年1月から12月までのレンジは2019年12月18日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。太線は予想レンジの上限と下限。 (出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日本10年国債利回りの予想レンジ (注) データは2015年1月から2019年11月までが実績値。2020年1月から12月までのレンジは2019年12月18日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。太線は予想レンジの上限と下限。
(出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年「日本経済見通し」…現行の金融政策維持と予想』を参照)。

 

 

(2019年12月20日)

 

 

市川雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト


株式会社三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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