投資家が金銭で出資する「匿名組合型」
いくつかのタイプがある不動産小口化商品ですが、その代表的なものとして、「匿名組合型」「任意組合型」があります。
●「匿名組合型」
匿名組合型は、投資家と事業者との間で匿名組合契約を結んで事業を行います。匿名組合契約とは、商法に定められており、事業を営むものに対して投資家が出資をして、その事業から生じた収益を分配し受けとる契約で、投資家と事業者との相互の関係を定める契約です。
[仕組み]
①各投資家が事業者と匿名組合契約を結ぶ
②投資家が組合に金銭を出資
③事業者は、保有している不動産の管理・運営を行う
④事業者は、運用で得た収益を投資家の方へ分配
[特 徴]
不動産小口化商品として、現在もっとも多く販売されているものです。この「匿名組合型」は、投資家の方が組合に金銭で出資しているという点がポイントとなります。
出資されたものは金銭であり、事業者が不動産を保有していますので、不動産の所有権は投資家ではなく事業者にあります。また、出資金額の範囲内が投資家の責任となります。
登記に関しては、事業者が所有者として登記されますので、投資家の方の名前が登記上に載ってくることはなく匿名性があります。また、投資家の登記費用の負担もありません。なお分配金は、不動産所得ではなく雑所得となります。
投資家が共有持分を現物出資をする「任意組合型」
●「任意組合型」
任意組合型は、投資家と事業者の間で任意組合契約を結んで事業を行います。任意組合契約とは民法に定められており、団体を作る合意であり、複数の当事者が出資して共同事業を営むことを約束する契約です。
[仕組み]
①投資家と事業者と任意組合契約を結ぶ
②投資家は、不動産の共有持分を購入
③投資家は、共有持分を任意組合に現物出資
④事業者は、組合の代表として不動産の管理・運営を行う
⑤事業者は、運用で得た収益を投資家の方へ分配
[特 徴]
こちらの商品は、2015年の税制改正をうけ、相続税対策商品として注目されています。この「任意組合型」は、投資家の共有持分を現物出資というかたちで組合に出資している点がポイントとなります。
投資家は、不動産の共有持分を購入して、その購入した共有持分を組合に現物出資をします。現物出資をしていますが、共有持分を購入したのは投資家であり、不動産の所有権は投資家にあります。
なお、この「任意組合型」では登記を2回することになります。
まず、事業者から投資家に所有権の移転をした際、共有持分登記します。次に、投資家から共有持分を組合に現物出資した際に、現物出資の登記をします。登記費用はかかりますが、登記をすることにより“所有権をもっていること”を第三者に対抗することができます。
分配金は、小口化商品の共有持分をもっている(=実物不動産の共有持分をもっている)ことから不動産所得となり、不動産の税制が活用できます。
このように、「任意組合型」は現物不動産とほぼ同じ扱いとなります。
以上のように、何を目的として投資するのかによって、商品の選び方がまったく異なります。投資目的と商品のミスマッチが起きないように商品を選ぶことが大切となります。
なお、いずれの商品にしても不動産小口化商品の分配金の原資は、不動産から得られる賃貸収益です。賃貸収益は、世の中の経済や賃貸の状況により変動する可能性があります。
そのため、不動産小口化商品は、元本・分配金の保証はされていませんので、投資する際にはその点を認識しておく必要があります。
次回は小口化商品を選ぶ際のチェックポイントをお伝えします。