不動産投資の問題を軽減し、メリットを残す投資法?
アベノミクスの影響や年金不安から、投資を始める方が増えてきましたが、不動産を投資対象としている方の割合はごくわずかです。不動産投資はリスクが高いと思われがちですが、他の投資商品と比べても、リスクとリターンの関係でみると優良な投資といえます。ほかの投資商品にはない多くのメリットがあり、上手に活用すればとても魅力のある投資法です。
では、なぜ不動産を投資対象としている方が少ないのでしょうか。
ほとんどの投資商品は、始めてしまえば、あとは出口戦略だけ考えればいいのに対して、不動産は“管理・運営をしなければならない”ということがあります。そして、不動産を購入するには多くの資金が必要となり、金融機関からローンを組んで投資をすればそれ自体がリスクですし、金利上昇リスクも考えなければなりません。仮に100%自己資金で投資できても、多くの物件を持つことは稀ですからリスク分散することが難しくなります。
不動産投資のメリットを残しつつ、上記の問題点を軽減しているものが「不動産小口化商品」です。
「不動産小口化商品」とは、簡単にまとめると“皆でお金を出し合って、不動産の運営・管理はプロが行い、得られた収益を皆で分配する”というものです。皆でお金を出すので一棟マンションやオフィスビル、好立地にある不動産など、とても一人では購入できないような資産性や収益性のある高額な物件にも投資ができるようになります。複数の不動産に小口で投資できればリスク分散させることも可能です。
小口化の道を開いた「不動産特定共同事業法」の施行
「不動産小口化商品」というと1980年代後半、バブル期に販売された共有持分権の信託方式による商品を思い浮かべる方も多いかと思います。
当時の仕組みは、まず投資家が購入した不動産の持分を信託銀行に信託し、信託銀行がそれを不動産会社に一括で賃貸して、不動産会社はテナントに転貸します。信託銀行はその賃料を受け取り、信託報酬などを差し引いて投資家に配当を支払い、信託期間が過ぎた時点で対象の不動産を売却した後、投資家に利益を分配するというものでした。
売却益(キャピタルゲイン)が狙える商品として話題でしたが、バブル崩壊の影響で土地の価格が大暴落し、また経営基盤の脆弱な不動産会社が倒産などの深刻な事態に陥り、投資家にたくさんの被害が出て社会問題になりました。
そのため、投資家が安心して投資できるように1995年に「不動産特定共同事業法」(以下、不特法)という法律が施行されました。あくまでも投資家を保護することが目的で不動産特定事業を行う事業者を規制する法律です。この法律によって、不動産小口化商品の事業を行う者は、国土交通大臣、都道府県知事による許可制がとられています。
許可の要件は、最低資本金が1億円以上の宅地建物取引業者で、財産的基盤が安定していること、不動産コンサル登録者等の業務管理者を常置することなどがあります。また、投資家に対する情報公開(ディスクロージャー)の義務付けや、年に1度、監督官庁への事業報告も義務付けられています。
このように一定の許可要件を満たした事業者が扱っているので、以前に比べて「不動産小口化商品」は安全性の高い商品になっています。今まで不動産投資の経験がない初心者の方には、不動産投資の入り口として、すでに複数の不動産に投資をされている上級者の方には、新しい不動産投資の選択肢として検討する価値は十分にあるといえるでしょう。
次回より、不特法による「不動産小口化商品」をご紹介していきます。