ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

最近の原油価格の動向を振り返ると、2~3ヵ月という短期ならば上昇傾向に見えますが、期間1年程度では概ね横ばいと見られます。今後の原油価格を予想することは困難ですが、最近の原油市場の背景にある主な要因を把握することで原油価格の動きの理解は深まると思われます。

原油価格市場:注目のOPECプラスは市場予想を上回る減産拡大の可能性を示唆

石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する「OPECプラス」は2019年12月6日の会合を開催し、原油の協調減産を拡大する方向で合意しました。減産拡大額は市場予想に一致する日量50万バレルでした。これは18年秋合意、19年1月から実施の水準(日量計約120万バレル減)を、今後約日量170万バレル減に拡大するためです。

 

なお、サウジアラビアなどが自主的努力で減産幅を日量210万バレルとする意向を表明、不確定ながら、減産拡大額は日量約90万バレルになるとの観測もあります。

どこに注目すべきか:OPEC、OPECプラス、米中貿易戦争、供給

最近の原油価格の動向を振り返ると、2~3ヵ月という短期では上昇傾向に見えますが、期間1年程度では概ね横ばいです(図表1参照)。今後の原油価格を予想することは困難ですが、最近の原油市場の背景にある主な要因を把握することで原油価格の動きの理解は深まると思われます。

 

日次、期間:2018年12月9日~2019年12月9日 ※WTI原油先物:ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引される原油先物(軽質スイート原油先物)の期近物価格で構成 ※ブレント原油先物:ロンドンICE取引所で取引される北海ブレント先物価格出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブレントとWTI原油先物価格の推移 日次、期間:2018年12月9日~2019年12月9日
※WTI原油先物:ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引される原油先物(軽質スイート原油先物)の期近物価格で構成
※ブレント原油先物:ロンドンICE取引所で取引される北海ブレント先物価格出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

まず、短期的な価格下支え要因は主に2つです。1つ目は減産拡大期待、2つ目は原油需要の回復です。

 

減産期待が高まったのは、そもそも国際エネルギー機関(IEA)などの見通しにより、20年の原油市場においては現在の減産目標では日量100万バレルの供給過剰との試算があったことから、対策への期待が見られました。今回のOPECプラスやサウジアラビアなどの減産目標は(恐らく)市場で意識されていた供給過剰懸念を意識していたと思われます。

 

もっとも、OPECやOPECプラスとも距離を置くブラジルやノルウェーには増産の動きもあり、思惑通り供給のコントロールができるかは不確定です。

 

2つ目は原油需要の回復です。多くの中央銀行による利下げと、米中貿易戦争の緊張緩和により景気後退懸念は幾分低下したと見られます。特に米中貿易戦争で米国が追加関税などを示唆した5月、8月は原油市場の下押し圧力となっていました(図表1参照)。米中貿易戦争の行方は貿易の動向を左右するだけに、最終的な解消にはほど遠いながらも、部分合意に向けた歩み寄り期待が10月頃から高まったことが原油市場の下支え要因になっていたと見られます。

 

反対に、原油市場の下押し要因として米国の供給圧力が考えられます。米エネルギー情報局が11月末に発表した統計によると、9月の米国の石油輸出量が輸入量を上回り、最大の産油国であり、「純輸出国」となるなど存在感を高めています。米国の石油生産は比較的短期に、原油価格に応じて生産を調整する傾向があります。そこで、米国の石油生産企業の目安とする原油価格をカンザスシティ連銀の調査で見ると、55ドル/バレル程度となっています(図表2参照)。同様の調査はダラス連銀も地区内で行っており、概ね同水準が意識されています。原油市場のスピード感で生産調整は出来ませんが、米国が供給を増やす可能性があります。

 

半期、期間:2015年3月~2019年9月、WTI価格による損益分岐の目安 出所:FRBカンザスシティ連銀のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国の主な石油生産企業の採算目安の推移 半期、期間:2015年3月~2019年9月、WTI価格による損益分岐の目安
出所:FRBカンザスシティ連銀のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

今後の将来予想となると米中貿易戦争がマイナス要因に転じるかも知れないなど、将来価格を「当てる」ことは不可能でしょう。それでも変動要因の把握に意義はあると思います。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『原油市場、短期的な価格を下支えする2つの要因とは?』を参照)。

 

 

(2019年12月10日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録