妻が夫よりも7日先に死去…子のいない夫婦の財産はどうなる?

本連載では、相続アドバイザー協議会23期有志の著書、『新訂 家族で話すHAPPY相続』(プラチナ出版)の中から一部を抜粋し、相続発生時における典型的なトラブル事例とその解決策を解説していきます。

老後世話になった弟にも財産を分けてあげたいが…

【子どものいない人の相続●吉田家の場合】

・被相続人(一郎・享年87歳)

 妻(花子・享年80歳一郎死亡の7日前に死亡)

・相続人姉(長女)の代襲相続人(長女60歳)

・妹(次女82歳)

・財産 自宅不動産 7000万円(一郎2分の1・花子2分の1)

 銀行預金・有価証券 1億5000万円(一郎8000万円・花子7000万円)

合計2億2000万円

 

横浜にお住まいの吉田さん夫婦は子どもに恵まれず、2人で一生懸命働き、定年を迎えるころにはそれ相当な資産家となっておりました。これといって趣味のない2人は、気の合う、妻・花子の弟夫婦のそばへ引っ越そうと自宅を売り、弟夫婦の住む東京郊外へ引っ越してきました。それ以来、弟夫婦と旅行に行ったり、孫の運動会へ参加させてもらったりと、子どものいない吉田さん夫婦にとっては、家族同様に楽しい老後を過ごすことができました。

 

一郎と花子の2人はお互いの死後を考え、連れ合いが亡き後は全財産をお互い相手に相続させると約束し、別々の遺言書に直筆で「全財産を妻・花子(夫・一郎)に相続させる」と書き、日付を入れて署名・捺印し、別々の封筒に封印し、自宅金庫にしまいました。

 

これで、お互いに苦労して築いた財産を相手に全部相続させるという目的は達成できたのですが、妻・花子の本心は、老後世話になった弟にも財産を分けてあげたいということでした。では、なぜ遺言書に書かなかったのでしょう?

 

それは、全部の財産を相続させると書いた夫への遠慮もあり、また7歳も年下の自分が夫より先に逝くとは考えてもいなかったからです。

 

[図表]吉田家 相関図
[図表]吉田家 相関図

遺言書作成の際、あらゆるパターンを考えるべき

ある日、妻・花子は脳梗塞で倒れ、一命は取り止めましたが寝たきりになってしまいました。時をほぼ同じくして、夫・一郎に認知症の症状が出始め、徘徊が始まりました。

 

妻・花子が4年間寝たきりの状態の後、意識不明になったのと時を同じくして、夫も夜中に徘徊し、事故に遭って意識不明になりました。妻・花子が息を引き取った7日後に夫・一郎が息を引き取りました。

 

相続が始まり、自筆証書遺言が見つかり、家庭裁判所で相続人を集めて検認をしました。一郎の遺言書には「全財産を妻に相続させる」、他方、花子の遺言書には「全財産を夫に相続させる」と書いてありました。

 

妻が亡くなった途端に、全財産は夫に移り、夫が亡くなった途端に、全財産は夫の姉の代襲相続人と夫の妹に移りました。老後、ずっと面倒を見てくれた妻の弟には何も残せませんでした。

 

今回、たまたま妻が夫よりも7日だけ先に亡くなりましたが、これが逆に夫が先に亡くなっていた場合、結果は全く逆になり、夫が亡くなった瞬間全財産は妻に移り、妻が亡くなると、妻の弟に全財産が移る形になります。

 

【ポイント】

・遺言書を作成する際には、あらゆるパターンを考えるべき

・自分の亡きあと、財産をどうしたいのか? きちんと遺言書に書いておくべき

・自分の死後、誰にも発見されずに漏れてしまうことを防ぐために、財産がよくわかるように表にするなどして整理しておく

(相続アドバイザー協議会とは?)
相続に関する諸問題に対して円満な相続を実現するため、総合的なアドバイスができる人材を養成することを目的に、不動産鑑定士、税理士、不動産業、建設業が中心となり2000(平成12)年に設立したNPO法人です。

的確なアドバイスで相談者の利益を守る「相続アドバイザー」を養成するため、税務、不動産、建物、保険など各分野の相続実務に関わる専門家を講師として、全20講座・41時間の「相続アドバイザー養成講座」を定期的に開催しています。

2005(平成17)年には、法令の改正や社会の変化に対応した知識を習得し、実務能力を向上させ、さらに研鑽を続けるため「上級アドバイザー資格制度」を創設しました。
同協議会では「相続アドバイザー」として、以下の5点を定義しています。

(1)本業を補完する基本的知識の習得
(2)本業をより発展させるためのビジネス的感覚の習得
(3)お客様の利益を第一義に考えるコンサルタントとしての役割
(4)信頼性のある人的ネットワークの構築
(5)持続的・継続的な研修の実施による能力の充実を図る。

※写真は相続アドバイザー協議会の常務理事で、同養成講座23期生でリーダーを務めた都築恒久氏

 (23期有志)阿部龍治、新井明子、井上嵩久、岩見文吾、木村太郎、児山秀幸、至田裕子、
       鈴木一哉、関京子、高橋欣也、高林節子、千代延和義、都築恒久、徳元康浩、
       貫井政文、服部毅、古越俊介、松村茉里 ※50音順敬称略

著者紹介

連載「争族」事例に学ぶ~「円満な相続」実現のための基礎知識

新訂 家族で話すHAPPY相続

新訂 家族で話すHAPPY相続

相続アドバイザー協議会

プラチナ出版

私たちはふだん気づきませんが、相続には落とし穴がたくさんあるのです。こうした落とし穴について、さまざまな専門家から解説し、皆さんにHAPPYな相続をしていただきたい、そう考えて私たちは皆で協力して本書を世に出すこと…

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