銘柄選びには割安株と成長株を選ぶ方法があります。では、割安株かつ成長株を見つけ出すことは可能なのでしょうか?見るべきポイントとは?
割安株が強く成長株が弱い現在の日本株
9月以降強い動きが続いている日本株。先週(11月18日~22日)は、出遅れていたマザーズ指数も上昇し、個人投資家にも利益を伸ばしやすい環境になっています。
皆さんは、投資する銘柄をどのように選んでいますか?短期売買であれば、株価チャートの形状や、株価の勢いで選びますが、中長期投資の場合は、売買のタイミングを計る際には株価チャートを使うものの、基本はファンダメンタルズ(企業の業績)で選ぶことが多いと思います。
その中長期投資の銘柄選びを大きく分けると「割安株」への投資と「成長株」への投資の2つがあります。それ以外にも景気敏感株や復活株といったカテゴリーがありますが、今回はよく使われる選び方の割安株と成長株の2つに絞って説明します。
ここ最近は、割安株が強い環境となっていますが、7年間続いているアベノミクス相場全体を通じては、成長株が強い時期の方が圧倒的に長いというのが現実です。
成長株と割安株は見つけ方が異なる
成長株と割安株の見つけ方は根本的に異なります。
成長株は「とにかく業績の伸びを重視」。つまり、売上高や利益が毎期増加していることが重要です。
成長株の特徴として、PER(株価収益率)が高くなりがち、という点があります。30倍、50倍は当たり前、中には100倍以上のものもあります。それでも株価が上昇を続けるのが成長株のすごさです。
一方の割安株は、「企業価値と比べて現在の株価が割安かどうか」を判定します。個人投資家が気軽に判定するための指標としてはPER、PBR(株価純資産倍率)、配当利回りなどがあります。
たとえばPERをもとに判定するのであれば、PERが低いほどその株は割安とされます。
ここまで読んでお気づきになった方が多いかもしれません。成長株のPERは概して高く、PERが低い銘柄は割安株になります。
つまり、PERを用いて割安株を見つけようとすると、PERの高い成長株は全くヒットしなくなるのです。
成長株と割安株の両立はあり得るか?
最近、あまりにPERが高い成長株は敬遠される傾向にあります。確かに成長性が高ければPER100倍超でもおかしくありませんが、それは順調に成長が続くという前提のため、リスクが相当あります。
中には、将来の成長性は確かにあるものの、「さすがにPER50倍、100倍まで買われるのは割高では?」と感じる銘柄も増えてきています。
そんなこともあり、最近は割安株に注目が集まっていますが、単にPERが低いだけでは割安株としては力不足です。将来の企業価値が増加する見通しが高い株ではないと、PERが低くても株価は上昇しません。
そして、企業価値の増加が高く見込めるのはどういう銘柄かといえば、増収増益が続く銘柄、つまり成長株なのです。
「割安株」であると同時に増収増益が続く「成長株でもある」、そんな銘柄は結構存在します。
実は売上高も利益も毎年増加している成長株の中には、PERが低い銘柄も存在します。中にはPERが1桁(10倍以下)にもかかわらず増収増益が続いているものもあるのです。
やはり株価のトレンドもしっかり併用すべき
ただ、そうした「低PER」かつ「成長株」である銘柄を見つけても、手放しで喜ぶのは早計です。成長株なのにPERが低い、なにかしらの理由があるはずだからです。
最も多いのが、不動産株や商社株などのように、「たまたまここ5年ほどはマーケット環境もよいため増収増益だが、ひとたび不況になれば業績は大きく悪化する」というリスクを織り込んでいるケースです。
リーマン・ショックのときは、過去最高益をたたき出していた不動産株が、翌年に倒産した、ということもあります。足元では絶好調だとしても、いつ潮目が大きく逆流してもおかしくないのです。
もちろん、そうした懸念は持たれつつも、業績が順調に毎年伸びれば、たとえ低PERの状況が続くとしても株価は上昇していきます。利益が2倍になれば、PERが8倍で変化なしとしても、株価は2倍になる計算です。
ただ、低PERの成長株は、今後の成長が順調に進まない可能性もあると考えている投資家も多いからこそ、低PERにとどまっているともとれます。
したがって、実践的な方法としては、低PERの成長株を見つけたら飛びつくのではなく、株価のトレンドが上昇トレンドになっていることを確認してから買うべきと思います。
PERが低い分、通常の成長株より高値づかみのリスクを抑えられるのが低PERの成長株。一方で割安に見えるだけで実は割安ではないケースもありますから、株価が下落を続けている局面では手を出さないようにするのが無難です。
足立 武志
足立公認会計士事務所
※本記事は、楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で2019年11月28日に公開されたものです。