来年の米大統領選挙における民主党の候補者指名争いは、バイデン前副大統領やバーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員などが先行していました。20人程度の候補者は絞りこまれる様相を見せていましたが、ここにきて再び候補者拡大の動きが見られます。有力者の不在が候補者を絞りきれない背景と見られます。
米大統領選:民主党候補者指名争いにブルームバーグ氏などが参戦、出馬を表明
来年の米国大統領選挙で民主党の候補者選びが混沌としています。マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク(NY)市長は2019年11月24日、米大統領選挙の民主党候補者指名争いに出馬すると正式に表明しました。独自の中道派政策スタンスでトランプ大統領の打倒を狙うと述べています。また、11月14日には前マサチューセッツ州知事(2007年から15年まで2期)のディバル・パトリック氏が出馬を表明しました。大統領候補を選ぶ予備選の開始を20年2月に控え、民主党からは今も20人近い候補が乱立しています。
どこに注目すべきか:予備選、立候補、全国大会、左派、中道
来年の米大統領選挙における民主党の候補者指名争いは、バイデン前副大統領やバーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員などが先行していました。20人程度の候補者は絞りこまれる様相を見せていましたが、ここにきて再び候補者拡大の動きが見られます。有力者の不在が候補者を絞りきれない背景と見られます。
まず、民主党の候補者選定プロセスを簡単に振り返ります。民主党候補者の予備選挙の投票は約3ヵ月後の20年2月にアイオワ州党員集会やニューハンプシャー州予備選から始まる予定です。ただ、いくつかの州では既に立候補の締め切りが終わっています(アラバマ州、アーカンソー州など)。
また、立候補の手続きに入った者は、連邦選挙委員会に選挙運動組織を届けねばならず、今頃の時期は形式的な手続きの締め切りにあたります。ブルームバーグ氏など様子見をしていた候補者が締め切り間際に出馬を決めたため、有力候補が絞られる一方で、新たな候補者が見られます。
なお、20年大統領選の民主党候補者を指名する党の全国大会は、20年7月13~16日にウィスコンシン州での開催が発表されており、最終候補者はそこで決まる運びです。
次に、候補者が定まらない背景を考えると、先行する先の3候補(バイデン、サンダース、ウォーレン)や、最近急上昇したインディアナ州サウスベンド市のピート・ブティジェッジ市長は有力な候補ながら、決め手に欠ける印象だからです。特にサンダース、ウォーレンの各候補は弱者保護など左派的な主張が強すぎることが懸念されています。ブティジェッジ市長は経験の浅さが指摘されています。
反対に、期待が高かった(筆者も有望と見ていた)ベト・オルーク前下院議員(テキサス州選出)は、支持が集まらず11月初めに早々と指名争いから撤退しました。巨額の財源を必要とする国民皆保険制度の導入を唱えるウォーレン氏の勢いがやや失われる中、中道穏健派とも呼ばれるバイデン候補は常に上位を維持しています。ブルームバーグ氏やオバマ前大統領に近いパトリック氏は、独自の中道戦略に勝機を見出したものと思われます。
ブルームバーグ氏は金融ベンダーの実業家として大成功を収めました。その上、NY市長を3期務めています。市長としての評価は現職、元市長(ブルームバーグ氏の前任)を上回るという調査もあるなど人気を保っています(図表1参照)。ただ、今回の出馬表明もギリギリまで様子見をしています。政党も当初民主党から、共和党に、その後無所属で再び民主党と変えています。この経緯は大統領候補となると、攻撃の材料となるかもしれません。
前マサチューセッツ州知事パトリック氏は、オバマ前大統領との関係に強みはあるものの、選挙資金不足が指摘されています。もっとも直近パトリック氏は投資会社の役員で、万一資金があったとしたら、それはそれで口を挟まれそうです。民主党の候補者選定は、もう少し時間が必要なようです。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『民主党はブルームバーグ氏が参戦…最終候補者選びに時間も』を参照)。
(2019年11月25日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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