●日経平均のPERは足元で過去5年平均の14.3倍に近づきつつあり、割安感の修正が進んでいる。
●EPSは企業による業績予想の下方修正などから大きく低下、ただ株価にはある程度織り込み済み。
●米中協議の進展次第で日経平均は24,000円程度まで上昇へ、昨年末のような混乱はなかろう。
日経平均のPERは足元で過去5年平均の14.3倍に近づきつつあり、割安感の修正が進んでいる
日経平均株価は11月12日に終値ベースで23,500円台を回復した後、上昇一服となっています。これは、米中協議の先行きに、やや懸念が強まったことが主な要因と思われます。実際、先週末には関税撤廃を巡り、米中両国の意見の食い違いが表面化したほか、今週は中国が米農産物購入の数値目標を合意に盛り込むことに難色を示しているとの報道もみられました。
ここで、23,000円台を回復してきた日経平均株価について、割高、割安の度合いを確認してみます。具体的な尺度として、株価を1株あたり利益(EPS)で割った、株価収益率(PER)を用います。PERは、9月2日時点で11.7倍でしたが、11月14日には13.9倍まで上昇しています(図表1)。過去5年平均は、14.3倍ですので、割安感が修正され、平均的な価格水準に戻ってきたといえます。
EPSは企業による業績予想の下方修正などから大きく低下、ただ株価にはある程度織り込み済み
一方、EPSに目を向けると、11月に入り大きく低下していることが分かります(図表2)。今回の中間決算では、製造業を中心に、通期の業績予想を下方修正する企業が目立ったため、EPSの低下はこれを反映した動きと推測されます。しかしながら、株式市場はある程度、下方修正を織り込んでいたため、EPSが低下するなかでも、日経平均株価が大きく下落することはありませんでした。
このように、PERの上昇とEPSの下落が鮮明になっているため、足元で日経平均株価の上昇が一服しても、それほど違和感がありません。ここから、安定的に株価が上昇するには、業績予想の改善、すなわち、EPSの上昇が必要となります。ただし、それには次回以降の企業決算などをみていく必要があるため、EPS主導の株高となるには、しばらく時間がかかると思われます。
米中協議の進展次第で日経平均は24,000円程度まで上昇へ、昨年末のような混乱はなかろう
以上を踏まえると、日経平均株価は、しばらく上値の重い動きも予想されます。ただ、日経平均株価のPERは、過去5年平均である14.3倍近くまで戻ってきたところですので、まだ多少の上振れ余地があると考えられます。例えば、EPSが直近水準のままで、日経平均が24,000円を回復したとしても、PERは14.4倍程度ですので、割高という水準ではありません。
年内の米中貿易協議で、第一段階の合意が成立し、12月15日に予定されている対中制裁関税の発動が見送られる流れとなれば、PER主導で日経平均が24,000円程度まで上昇する余地は残っているとみています。もちろん、合意に時間がかかれば、株安が進む恐れはありますが、米中貿易協議の長期化は、すでに株式市場に織り込み済みと思われ、昨年末のような混乱には至らないと考えています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2万3,000円台の「日経平均株価」…再上昇か、失速か?』を参照)。
(2019年11月15日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト