韓国の暗号資産取引所CEOに懲役判決
韓国の聯合ニュースの報道によると、ソウル中央地方裁判所は、4,000億ウォンを超える(約420億円)の投資詐欺を組織的に行ったとして、暗号資産取引所コインアップ(Coinup)のCEO、Kang Seok-jung被告に、懲役16年の判決を言い渡した。Kang被告に加え、その他上級幹部7人にも6〜9年の懲役が決まった。
コインアップ社は、暗号資産商品に投資することで、4〜10週間後に最大200%のリターンが得られると謳い、2018年から2019年2月までに4,500億ウォンを集めたとされる。
詐欺の手口は巧妙で、ソウルの展示会COEXで5,000人の参加者を集めた暗号資産説明会を催したほか、Kang氏と文在寅大統領との合成写真を使った偽の雑誌を準備するなど、「高度に組織化」されていたという。
しかしその実態は、投資家の出資金で自転車操業的に利益を保証するポンジ・スキームに過ぎなかった。
韓国MBC放送の報道によると、これまでに確認された被害者は6,700人に及ぶが、警察が押収した現金は3億ウォン(約2800万円)に過ぎず、投資した金額を回収することは難しいようだ。
裁判所は、組織的な犯行、多数にのぼる被害者数と損害金額の大きさを考慮すると、この事件は非常に深刻である一方、「短期間に高い利益が得られることを望んで過度な投資を行った」被害者にも責任の一端があると、投資家への苦言を呈している。
◆韓国暗号資産業界の厳しい実態
かつて「キムチプレミアム」なる価格乖離が発生するなど、世界の暗号資産市場の中で大きな存在感を誇った韓国だが、法定通貨ウォンの下落や政府による規制強化の波を受け、同国の暗号資産市場は冷え込んでいるようだ。
今年8月、韓国金融情報分析院(FIU)は金融活動作業部会(FATF)のガイダンスに沿って、韓国内の暗号資産取引所を、直接同局の管轄下に置く方針を明らかにし、暗号資産に対する規制を一層強化することとした。また法改正により暗号資産取引所に、金融犯罪などの疑いがある取引を報告する義務を課すことも検討している。
韓国では、暗号資産取引を行う銀行口座の「実名登録システム」が2018年1月に施行され、匿名での法定通貨の入出金ができなくなったが、実名取引を厭うユーザーが取引を中止したり、海外取引所に鞍替えしたりするなど、出来高の減少を招いたと見られる。
さらに、このような事態を懸念する多くのブロックチェーンプロジェクトも国外へ流出。大手取引所Bithumbも新たな市場を求めて海外展開を検討するなど、負の連鎖が続き、韓国の暗号資産市場は勢いを失っているのが現状のようだ。
参考記事:4천500억대 가상화폐 투자사기 '코인업' 대표 징역 16년
※本記事は、2019年11月13日に「CoinPost」で公開されたものです。