中国経済全体のファイナンス規模、10月大幅低下の背景

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

中国経済全体のファイナンス規模、人民元建て新規融資は先月に比べ、大幅に低下しました。国慶節(建国記念日)の連休が影響したことや、起債の減少などを受け、事前に低下が想定されていました。ただ、市場予想を下回る結果となった背景には、企業の資金調達意欲低下や、当局の債務削減方針の維持などが考えられます。

中国経済全体のファイナンス規模:10月は大幅に減少し、市場予想を下回る

中国人民銀行(中央銀行)が2019年11月11日に発表した10月の経済全体のファイナンス規模は6189億元(約9兆6300億円)と、市場予想の9500億元を下回りました。前月は約2兆2700億元でした(図表1参照)。

 

また、10月の人民元建て新規融資は6613億元と、市場予想の8000億元を下回りました。

 

月次、期間:2017年1月~2019年10月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国資金調達総額と新規人民元建融資の推移 月次、期間:2017年1月~2019年10月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:中国資金調達、PMI、新規融資、債務削減

中国経済全体のファイナンス規模、人民元建て新規融資は先月に比べ、大幅に低下しました。国慶節(建国記念日)の連休が影響したことや、起債の減少などを受け、事前に低下が想定されていました。ただ、市場予想を下回る結果となった背景には、企業の資金調達意欲低下や、当局の債務削減方針の維持などが考えられます。

 

中国の資金調達規模を示す経済全体のファイナンス規模や、人民元建て新規融資の10月データは、9月データから大幅に低下するのは18年も17年も見られました。国慶節の長期休暇などの影響による季節性であるため、10月の水準低下、それ自体に違和感はありません。

 

ただし、他にも下押し要因が考えられます。

 

一つ目は、中国企業の借入意欲の低下です。報道などによると、中国非金融企業に対する中長期ローンは、足元、今年最低水準での推移となっています。

 

米中貿易戦争による景気の落ち込みを防ぐため、中国当局は的を絞った経済支援策を実施してきています。中国はインフレ率が上昇していることもあり、影響が各方面に及ぶ預金準備率の引き下げなどに消極的な一方で、中小企業に的を絞った金融緩和を行っています。恐らくその成果により、中小企業を反映しやすいといわれる財新の製造業購買担当者景気指数(PMI)は改善傾向である一方、全体をカバーする政府系製造業PMIの回復が鈍くなっています。当局の対応が十分いきわたっていない可能性があります。

 

なお、借り手の顔が見えやすい人民元建て新規融資で借り手の内訳を見ると、家計が過半となっています。一方で、企業の借入は2016年以来の低水準に落ち込んでいます。

 

当該データの季節性は相対的に小さく、16年は7月に落ち込みがもっとも大きくなっています。

 

次に、債務削減方針が維持されている可能性があります。

 

例えば、削減対象と思われるシャドーバンキング関連も委託貸し付け、信託貸付、銀行引受手形を見るとマイナス(削減)傾向が維持されています(図表2参照)。

 

月次、期間:2017年1月~2019年10月、前月比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国資金調達総額の主なシャドーバンキング関連 月次、期間:2017年1月~2019年10月、前月比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

もっとも、景気減速時には削減スピードの調整も考えられます。また、比較的把握しやすいこれらの融資はある程度削減が進んでいます。一方、根深い問題である暗黙の保証に関連する商品の動向は不透明です。シャドーバンキング問題に改善は見られますが、解決は道半ばと思われます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国経済全体のファイナンス規模、10月大幅低下の背景』を参照)。

 

 

(2019年11月12日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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