インド格付け見通し引き下げ…成長率と金融セクターに懸念

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

ムーディーズがインドの見通しを引き下げた主な背景は、インドの成長率の低下懸念と金融セクターの安定性に対する懸念です。仮に成長率低下が続くようであれば財政への影響も考えられます。インドの中期的な課題を理解するために、見通し変更の理由に注目しています。

インドの格付け見通し:ムーディーズ、経済成長にリスクとして弱含みに変更

格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)は2019年11月7日、インドの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げました。経済成長が従来の見通しを下回る状況が続く可能性があることを理由に挙げています。

 

ムーディーズはインドの格付けについてはBaa2(BBBに相当)に据え置いています。なお、格付け見通しの引き下げは、短期的に格下げを検討するネガティブウォッチと異なり、中期的な格付けに関する意見であり格下げの可能性がより高いことを意味します。

どこに注目すべきか:見通し引き下げ、成長率、ノンバンク

ムーディーズがインドの見通しを引き下げた主な背景は、インドの成長率の低下懸念(図表1参照)と金融セクターの安定性に対する懸念です。仮に成長率低下が続くようであれば財政への影響も考えられます。インドの中期的な課題を理解するために、見通し変更の理由に注目しています。

 

出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]インドの実質GDP(国内総生産)成長率の推移 四半期、期間:2014年4-6月期~2019年4-6月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

まず、インドのGDP(国内総生産)成長率の動向を振り返ります(図表1参照)。インドのモディ政権は16年11月に高額紙幣を廃止しました。突然の廃止にインド経済は混乱し成長率は低下しましたが、金融緩和による下支えなどを受け、17年中頃から回復に転じています。

 

なお、ムーディーズは17年11月にインドの成長率が8%前後で推移するのを見計らいBaa3(BBB-に相当)からBaa2 (BBBに相当)に格上げしました。しかし、足元の実質成長率は前年同期比5%程度に減速し、債務返済で重視される名目成長率も8%と、格上げ当時の水準を下回っています。格下げ回避に成長率回復が求められています。

 

金融セクターの不安も見通し引き下げの背景と指摘しています。インドでは家計や企業は主に銀行から資金調達しますが、特に地方ではノンバンク金融会社の貸出が盛んです。しかしノンバンクの経営不安などが続いたことで借入コストが上昇し、貸し出しは伸び悩んでいます。ムーディーズはインドのノンバンクの金融危機は想定していませんが、貸出の鈍化は景気回復を遅らせる可能性があります。例えば、別の格付け会社の調査を見ると、インドの商用車購入の半分程度、乗用車の3割程度がノンバンク経由で購入されていたからです。インドの自動車産業はGDPの7%程度を占めるといわれ、影響が懸念されます。

 

では、インドの銀行はどうか? インドの銀行は不良債権の処理を進めています(図表2参照)。これはインド準備銀行が不良債権の審査を厳格化したため(それまで見逃していた)不良債権が足元まで急上昇していました。不良債権比率はようやく低下したところで、貸出しを積極化するにはしばらく時間が必要と思われます。

 

四半期、期間:2010年1-3月期~2019年1-3月期 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インドの銀行不良債権比率(対総資産)の推移 四半期、期間:2010年1-3月期~2019年1-3月期
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

債務残高対GDP比率が上昇するなど、インド財政も若干悪化しました。政府の金融機関への支援などが一つの背景です。もっとも、インドの貯蓄率は高く、国債もほとんどが国内で保有されている点をムーディーズは評価もしています。

 

即効薬よりも、インド経済回復の決め手は構造改革とムーディーズは指摘しています。時間に多少余裕がある見通しの引き下げに対する当局の対応が注目されます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド格付け見通し引き下げ…成長率と金融セクターに懸念』を参照)。

 

 

(2019年11月8日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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