中国人民銀行、デジタル人民元の発行を正式に示唆
28日、中国で構想されている官製デジタル通貨「DCEP※」計画について「商業銀行に限定し、試用運転を開始する可能性がある」との発表が正式に行われた。
※Digital Currency Electric Payments(≒デジタル通貨電子決済)・・・中国人民銀行(PBoC)が公式に進めていた国家関連デジタル通貨のこと。
また、これまで不明確となっていた、通貨の発行技術にブロックチェーンが利用されている可能性が初めて示唆された。ちなみに一部では、正式に開始したとの報道もあるが、公式の声明内容では、まだ可能性(予定)の段階だ。
公演を行なった黄奇帆氏は、「現在アメリカが主導している国際金融市場では、SWIFTやCHIPSといった振込システムが主流な状況にあるが、ブロックチェーンを活用して新たなシステムを開発する必要がある」と述べた。さらに効率よく、振込コストを最低限にするシステムを目指しているという。
この声明のなかでDCEPについて言及された。具体的には、中国人民銀行(中国中央銀行)主導のもと、ブロックチェーンに基づいたデジタル通貨を開発する予定があると発言。人民銀行が世界で最初のデジタル通貨を生み出す中央銀行になることを期待していると述べた。
同プロジェクトは、2019年のはじめに公開されていたもので、人民銀行は過去6年に渡ってDECPの可能性について研究をしてきた。今年11月にもローンチするとの可能性も指摘されていたが、今年9月、中国人民銀行の高官が一部の報道を否定する声明を発表していた。
現時点で詳しい情報は明かされていないが、中央銀行デジタル通貨に相当するものと考えられる。人民元のデジタル通貨版だ。
デジタル人民元は、これまでの人民元とは置き換わるものではないとされるが、デジタル化することで、国内の銀行の内側(マネタリーベース)と外側(マネーストック)の二層構造に変革を与える可能性がある。
中国では、キャッシュレス化が進んでおり、キャッシュレスシェアの大半をアント・フィナンシャルやテンセントが占めている。デジタル通貨の発行によって、キャッシュレス構造も併せて大きく変動する可能性もある。
デジタル人民元を発行することは、中央銀行の口座を広範囲に解放することにつながるため、金融仲介(銀行やキャッシュレス業者)の機能や経営状況への影響が最も注目される事項となるだろう。
中国の場合、商業銀行に限定したローンチを行うことから、大口など一部の利用に特化した形で活用するかもしれない。
中央銀行がデジタル通貨を発行した場合、金融危機時、預金から中央銀行デジタル通貨への資金逃避が起こる可能性などが指摘されている。しかし、未だ世界で利用例が少ないことから、その影響も議論の範疇をでない。今回、中国政府から「DCEP」が発表されたことは、世界的に大きな注目を集める先行事例となることは間違いない。
※本記事は、2019年10月28日に「CoinPost」で公開されたものです。