「決済にも価値の保存手段としても利用できない」
ステーブルコインの調査を担当するG7のワーキンググループは、暗号資産が現時点では信頼性に欠けており、決済にも価値の保存手段としても利用できないという最終報告書を発表した。
暗号資産は決済手段としてはボラティリティが高く、スケーラビリティの制限や、複雑なユーザーインターフェイス、規制などの課題があり、投資家向けの投機的な資産クラスでしかないと、その根拠を説明している。
一方、暗号資産のなかでも、ステーブルコインには従来の送金システムに付随していたスピードやコストの問題を解決できる可能性はあると指摘。しかし、リスクも伴うと結論付けている。
ステーブルコインは国際的な分類が確立されておらず、法定通貨とペッグされるとはいえ、実際に安定していない可能性もある。それでも決済と価値の保存手段として「より使いやすくなる可能性はある」とした。
◆ステーブルコインの課題
だが、法律、規制、監視の体制が適切に設計されるまで、国際的なステーブルコインプロジェクトは運用開始すべきではないと報告書は続ける。一般的なステーブルコインの課題として主に以下の項目が挙げられている。
●法的根拠
●健全なガバナンス(コイン価値を安定させるための投資ルールなど)
●マネーロンダリング、テロ資金、その他の不正資金対策
●決済システムの安全性、効率性、完全性
●サイバーセキュリティ
●データに関するプライバシー、保護、ポータビリティ
●消費者/投資家の保護
●税務コンプライアンス
さらに、米フェイスブックが主導する暗号資産リブラなどグローバル規模のステーブルコインは、以上に加えて次のような項目にリスクをもたらす可能性があるという。
●金融政策
●金融の安定化
●国際通貨システム
●公正な競争
今回の報告書の発表を受け、リブラ協会もG7に対して書面で応答した。
「リブラは各国の規制当局とのパートナーシップのもと、透明性を持って運用される」もので、「現行の規制体制のなかで運用され、規制当局がデジタル分野に提供している保護を適用するものであり、それらを混乱させたり損なったりはしない」と、リブラ協会は主張している。
G7のレポートでは、送金手段や金融サービスの効率性を改善し、コストを下げるために世界各国の政府はロードマップを作り出す必要があるとも言及されている。また「中央銀行が独自のデジタル通貨を発行することがコストや利便性の面で適切かについても、各国の裁量で査定していくことになるだろう」と、政府が発行するデジタル通貨についても、さらに検討をしていく姿勢であることを伺わせた。
◆G20の結論
18日に閉幕したG20の財務省中央銀行総裁会議でも、リブラなどの「グローバル・ステーブルコイン」には厳格な規制を設け、それがもたらし得る国際的なリスクに対応することができるまでは、発行を許可するべきではないとの方針で合意に至った。
参考資料:G7 Working Group on Stablecoin
※本記事は、2019年10月19日に「CoinPost」で公開されたものです。