●日経平均は昨日年初来高値を更新、背景には米中協議の部分合意、円安、米企業の好決算。
●ただ相場に過熱感が生じ、日経平均も3つの窓を開けるなど、短期的な調整リスクに注意が必要。
●株高のカギを握るのは中間決算、悪材料出尽くしなら年度末に向け23,000円台回復の場面も。
日経平均は昨日年初来高値を更新、背景には米中協議の部分合意、円安、米企業の好決算
日経平均株価は10月16日、22,472円92銭で取引を終え、4月25日につけた終値ベースでの年初来高値22,307円58銭を更新しました。株高の理由はいくつか考えられますが、具体的には次の通りです。もともと株式市場では、米中対立の長期化と景況感の悪化は織り込み済みで、それでも各国・地域の金融緩和により、世界的な景気の冷え込みは回避されるという見方が形成されつつあったと思われます。
こうしたなか、10月10日、11日の米中閣僚級貿易協議において、両国が部分的にでも合意に達したことは、あまり成果を期待していなかった株式市場にとって、素直に好材料と考えられます。また、米中部分合意を受けて、為替市場でもリスクオン(選好)の動きから、円が対主要通貨で下落し、日本株の追い風となりました。さらに米国では、今週から本格化する企業決算が、好調にスタートしており、これも日本株の買い安心感につながったとみられます。
ただ相場に過熱感が生じ、日経平均も3つの窓を開けるなど、短期的な調整リスクに注意が必要
ただ、足元の日本株には過熱感が生じています。買われ過ぎや売られ過ぎを判断する尺度に騰落レシオがあり、これは、上昇した銘柄数を下落した銘柄数で割って算出します。一般に、120%を超えると「買われ過ぎ」とされますが、東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)は、10月16日時点で139%でした。そのため日本株は、上昇に一服感が出やすい状況にあるといえます。
また、日経平均株価のチャートをみると、連日の上昇で、3つの「窓」が開いていることが分かります(図表1)。株価の上昇局面で窓が開くと、その後は株価が反落し、窓を埋める動きになりやすいというのが一般的な解釈です。仮にこの通り、日経平均株価が反落し、3つの窓を全て埋めた場合、株価水準は21,600円まで切り下がることになります。あくまで1つの目安ですが、短期的な調整リスクは意識しておいた方が良いと思われます。
株高のカギを握るのは中間決算、悪材料出尽くしなら年度末に向け23,000円台回復の場面も
しかしながら、日経平均株価に調整が入ったとしても、2012年10月安値と2016年6月安値を結んだ下値支持線(サポートライン)が比較的しっかり作用しているため(図表2)、このサポートラインで下値が抑制される可能性が高いとみています。一方、上値について、今年は22,000円台の定着が困難な状況にあるため、まずは22,000円台での値固めの成否が注目されます。
そのカギを握るのが、今月下旬から本格化する本邦3月期決算企業の中間決算発表です。おそらく通期業績の下方修正が目立つ決算になると思われますが、市場はある程度、想定済みと考えます。米中協議がわずかながらも進展し、為替が円安方向に戻り、世界的に金融緩和が行われている現状、中間決算で悪材料出尽くしとなれば、日経平均は年度末にかけて緩やかな上昇が見込まれ、途中、23,000円台を回復する場面も想定されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均年初来高値更新…2万3000円台回復の条件とは?』を参照)。
(2019年10月17日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト