過去46年間の年間値幅から見る「ドル円110円」の条件とは?

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●ドル円は年初104円台から4月に112円台へ、その後再び104円台をつけ現在108円台を回復。

●テクニカル分析上の三角保ち合いが昨年に終了後、おおむね105円から115円のレンジが継続中。

●レンジ上半分への移行には米中問題の進展、米経済の底堅さ、米長期金利上昇と株高が必要。

ドル円は年初104円台から4月に112円台へ、その後再び104円台をつけ現在108円台を回復

ドル円相場について、年初から足元までの動きを振り返ってみると、1月1日は1ドル=109円69銭水準で取引が始まりました。その後、1月3日の日本時間午前7時半過ぎ、108円台後半で推移していたドル円は、わずか数分で104円87銭水準までドル安・円高が進みました。市場参加者が極めて少ない時間帯であったことから、いわゆる「フラッシュ・クラッシュ(相場の瞬時の急変動)」が発生しました。

 

その後は、徐々にドル買い・円売りの動きが優勢となり、ドル円は4月24日に112円40銭水準をつけました。しかしながら、5月以降、貿易問題を巡る米中の対立が激化すると、相場はドル安・円高の流れに転じ、ドル円は8月26日に104円46銭水準に達しました。直近では、米中両国が農産品などの特定分野で部分的に暫定合意したことなどから、ドル円は108円台後半で推移しています。

テクニカル分析上の三角保ち合いが昨年に終了後、おおむね105円から115円のレンジが継続中

2019年のドル円の値幅は、1月1日から10月17日までで、7円94銭程度です。2018年は9円99銭程度と、過去46年間で最小でしたが(図表1)、2019年はこれを更新する可能性があります。値幅が小さい理由は、基軸通貨である米ドルと世界一の対外純債権国である日本の円が、リスクオフ(回避)の局面ではともに買われ、リスクオン(選好)の局面ではともに売られるなど、同方向に動く傾向があるためです。

 

このような傾向のある通貨ペアが示唆する為替レートの方向性は「レンジ推移」です。ドル円は2015年から2016年にかけて、テクニカル分析上、「三角保ち合い」という形を形成しました(図表2)。一般に、三角保ち合いを上抜けると相場は大きく上昇し、下抜けると大きく下落すると解釈されます。ドル円は2018年の年初に一度、この三角保ち合いを下抜けましたが、すぐに戻ってしまい、結局、三角保ち合いは2018年中に終了しました。その後は、おおむね105円から115円のレンジ推移が、現在まで続いています。

レンジ上半分への移行には米中問題の進展、米経済の底堅さ、米長期金利上昇と株高が必要

この先を展望した場合、米中貿易問題が相場の重しとなっている間は、ドル円はレンジの下半分、すなわち105円から110円での推移が予想されます。例えば、米中部分合意が白紙撤回されるような状況になれば、世界的に製造業の生産回復時期が遅れ、米連邦準備制度理事会(FRB)による連続利下げ期待から、米長期金利が低下し、ドル円は再び105円方向に向かう恐れがあります。

 

一方、米中貿易問題が進展していけば、ドル円はレンジの上半分、すなわち110円から115円のレンジに移行すると思われます。米中ともに更なる合意に向けた協議が続くなか、米国経済の底堅さが経済指標などで確認されれば、米利下げ期待が後退し、米長期金利が上昇しても、株式市場が大きく動揺することはないと考えます。このような状況となれば、ドル円は明確に110円台を回復し、更なるドル高・円安の余地を探る動きが見込まれます。

 

(注) データは1973年から2018年。値幅の小さい順。値幅の単位は円。 (出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]過去46年間のドル円の年間値幅 (注) データは1973年から2018年。値幅の小さい順。値幅の単位は円。
(出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注) データは2015年1月から2019年9月。三角保ち合いを形成する下値支持線は2016年6月安値と11月安値を結んだ線で、上値抵抗線は2015年6月高値と2017年1月高値を結んだ線。 (出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]ドル円の三角保ち合い (注) データは2015年1月から2019年9月。三角保ち合いを形成する下値支持線は2016年6月安値と11月安値を結んだ線で、上値抵抗線は2015年6月高値と2017年1月高値を結んだ線。
(出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『過去46年間の年間値幅から見る「ドル円110円」の条件とは?を参照)。

 

(2019年10月18日)

 

市川雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト


株式会社三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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