ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

四半期毎改定されるWEOにおいて、IMFは19年の成長率予想を5四半期連続で下方修正し、19年の世界経済成長率を好不況の目安とされる3.0%へ下方修正しました。また、政策の余地は限られ、今後ミスは許されないと警告しています。ただ、来年の成長率は今年を上回るとの見方を維持しており、(反対に)政策が適正であれば底打ちとの深読みができるのかもしれません。

IMF世界経済見通し:貿易摩擦を受け、世界の経済成長率見通しを下方修正

国際通貨基金(IMF)は2019年10月15日に最新の世界経済見通し(WEO)を公表しました。貿易摩擦で経済成長が減速する中で、19年の世界経済成長率を3.0%と、7月時点の予測の3.2%から下方修正しました(図表1参照)。
 

時点:2019年7月(左)、2019年10月(右、太字)の2時点比較  出所:IMFのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]IMFの主な国・地域の2019年経済成長見通し 時点:2019年7月(左)、2019年10月(右、太字)の2時点比較
出所:IMFのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、19年の世界経済成長率予想を5回連続で引き下げています。20年の成長率予想も3.4%と、7月時点の3.5%から下方修正しました(図表2参照)。

 

時点:2019年7月(左)、2019年10月(右、太字)の2時点比較 出所:IMFのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]IMFの主な国・地域の2020年経済成長見通し 時点:2019年7月(左)、2019年10月(右、太字)の2時点比較
出所:IMFのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:IMF、世界経済見通し、貿易戦争、金融緩和

四半期毎改定されるWEOにおいて、IMFは19年の成長率予想を5四半期連続で下方修正し、19年の世界経済成長率を好不況の目安とされる3.0%へ下方修正しました。また、政策の余地は限られ、今後ミスは許されないと警告しています。ただ、来年の成長率は今年を上回るとの見方を維持しており、(反対に)政策が適正であれば底打ちとの深読みができるのかもしれません。

 

 

まず、IMFが示した成長率予想について主な国・地域の特色を振り返ります。貿易戦争が、大半の国にマイナス要因となる中、当事国の米国も19年成長率は、設備投資が不振で2.4%に下方修正されています。しかし、20年については利下げと財政政策による下支え期待から2.1%へ0.2%上方修正されています。

 

貿易依存度が高いユーロ圏について、IMFは19年の貿易の見通しを引き下げたこともあり下方修正となっています。

 

一方、日本については消費税引き上げに懸念されていた消費の低下が財政政策である程度回避されるとの見通しから、20年の成長率を上方修正しています。

 

新興国は明暗わかれました。新興国全体としては20年の成長率は4.6%へ回復すると見込まれていますが、中国は20年の成長率が5.8%と、今年に比べ減速が予想されています。貿易戦争を仕掛けられる側であることに加え、IMFは中国に負債急増への対応も求めています。

 

一方、インド、ブラジル、ロシアなど他の主要新興国の成長率を19年と20年で比べると回復が予想されています。例えば鉱業の不振で19年は0.9%と低水準の成長が予想されているブラジルは、金融緩和などを受け20年は成長率が2.0%へ回復すると予想されています。新興国の成長が世界の回復を下支えする構図をIMFは想定しています。

 

IMFは貿易戦争の世界並びに主な地域の成長率に対する影響を継続的に試算しています。今回のWEOの分析では貿易戦争は、20年の世界経済成長率を0.8%引き下げる要因と指摘しています。試算の前提となる関税は現在公表されている関税がベースで、これにコンフィデンスや金融市場の悪化、生産性低下の影響を含め算出しています。また試算では、21年からは貿易戦争による成長率の低下度合いの縮小が示されています。貿易戦争の動向が今後の成長を大きく左右する展開が、改善も含め、続くと見られます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『IMF、世界経済成長率を下方修正…貿易戦争が重荷』を参照)。

 

 

(2019年10月16日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録