ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

今回の短期国債(Tビル)購入について、FRBは公表した声明などで長期国債購入による量的金融緩和(QE)とは異なるオペレーションであると説明しています。よって政策金利の誘導目標(1.75%~2.00%)に変更は無く、むしろ適切な準備預金のレベルを維持することで、金融政策(政策金利のレンジ)に影響が及ぶことを防ぐテクニカルな措置と位置づけています。

米国短期金利市場:米金融当局、月600億ドル相当のTビル購入を10月中旬に開始

米連邦準備制度理事会(FRB)は2019年10月11日、先月後半に大幅な上昇を見せた短期金利の変動を抑制するため(図表1参照)、短期国債(Tビル)を毎月、600億ドルのペースで買い入れて資金供給を行うと公表しました。

 

日次、期間:2018年10月15日~2019年10月14日  出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国翌日物(O/N)レポレートの推移 日次、期間:2018年10月15日~2019年10月14日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

発表によると、Tビルの購入は、10月中頃に開始し、少なくとも来年4-6月期まで購入するとしています。規模としては、今後予想されるFRB非準備負債の増加を踏まえ、19年9月初旬の水準以上の十分な準備残高を維持するとも述べています(図表2参照)。

 

週次:期間:2017年10月18日週~2019年10月9日週 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]FRBのバランスシートと超過準備の規模の推移 週次:期間:2017年10月18日週~2019年10月9日週
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、短期金利市場の変動リスクを抑制するため、FRBはタームおよび翌日物のレポオペを少なくとも来年1月まで実施することも発表しています。

どこに注目すべきか:Tビル購入、超過準備、バランスシート、QE

今回の短期国債(Tビル)購入について、FRBは公表した声明などで長期国債購入による量的金融緩和(QE)とは異なるオペレーションであると説明しています。よって政策金利の誘導目標(1.75%~2.00%)に変更は無く、むしろ適切な準備預金のレベルを維持することで、金融政策(政策金利のレンジ)に影響が及ぶことを防ぐテクニカルな措置と位置づけています。

 

まず、当面の米国短期金融市場の動向を整理すると、乱高下したレポレートは、FRBのオペレーションにより流動性が供給されたため落ち着きを取り戻しています。この期間のFRBのバランスシートと超過準備の規模に注目すると、流動性を供給するオペレーションによりバランスシートは拡大していますが、超過準備は自然な変動に留まっています。レポレートなどの急激な変動により、政策金利の誘導目標を維持することが困難となることも懸念されるだけに、まずは落ち着かせることが必要です。

 

次に、今後の資金動向を考慮すると、声明の中で、非準備負債の急増と表現されている、年末に向けた資金需要は今後急増することが想定されるため、対応も求められます。

 

ただ、まだ確認が必要な点も残っています。例えば、そもそも、何故、短期金利が急上昇したのか明確では無いと見られます。原因は何か一つに特定できず、複数要因なのかもしれませんが、いずれにせよ、原因がわからないと対応への一抹の不安は残るかもしれません。

 

短期金利が上昇した原因の一つに、準備預金の減少が指摘されています。FRBのパウエル議長も10月8日の講演で十分な準備預金がないと短期金融市場で金利が上昇するリスクに言及しています。では、どの程度まで準備預金を増やすべきか?この点について、事前に定まったコースがあるようには見えず、手探りで落ち着きどころを捜し求める展開が想定されます。その結果、さらなる手段が必要と判断すれば、QE再開も選択肢のひとつと見られます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米金融当局、月600億ドル相当の短期国債購入を開始する理由』を参照)。

 

 

(2019年10月15日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧