インド中銀、利下げの背景に「経済成長ペースの鈍化」

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

インド中銀の今回の利下げの背景として経済成長ペースの鈍化が考えられます。インド中銀のダス総裁は4日の記者会見で経済成長の回復に金融緩和姿勢の必要性を強調しています。一方で、潜在的なインフレ率の上昇に対する警戒も忘れてはいない模様です。今後の政策のスタンスは利下げ一辺倒というより、最適な解を模索する動きが続くものと思われます。

インド中銀:5会合連続で利下げ、経済成長率の見通しを下方修正

インド準備銀行(中央銀行)は2019年10月4日に金融政策決定会合の結果を公表し、政策金利であるRBIレポレートを5.40%から0.25%引き下げ年5.15%としました。利下げは5会合連続となります(図表1参照)。

 

なお、インド中銀は、19年度(19年4月~20年3月)のGDP(国内総生産)成長率の見通しを6.1%と、8月時点の6.9%から下方修正しました。一方、物価上昇率は8月が前年同月比3.21%と、中期目標とする「4%前後」の範囲にはとどまっています(図表2参照)。

 

日次、期間:2017年10月7日~2019年10月7日  出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問
[図表1]インドの政策金利とルピー(対ドル)レートの推移 日次、期間:2017年10月7日~2019年10月7日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

 

月次:期間:2014年8月~2019年8月、GDPは四半期、前年同期比  出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インドのGDP成長率とCPI(前年同月比)の推移 月次:期間:2014年8月~2019年8月、GDPは四半期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:GDPギャップ、成長予想、シャドーバンキング

インド中銀の今回の利下げの背景として経済成長ペースの鈍化が考えられます。インド中銀のダス総裁は4日の記者会見で経済成長の回復に金融緩和姿勢の必要性を強調しています。一方で、潜在的なインフレ率の上昇に対する警戒も忘れてはいない模様です。今後の政策のスタンスは利下げ一辺倒というより、最適な解を模索する動きが続くものと思われます。

 

 

インド経済にてこ入れが必要なことは、4-6月期にGDP成長率が前年同期比5.0%に低下したことや、今後の見通しを引き下げたことに示されています(図表2参照)。また、声明の中でインド中銀はGDPギャップ(潜在成長率と実際の成長率の差)が拡大している点も指摘しています。

 

インド経済の回復が鈍い背景として、インド中銀は主に資本財と耐久消費財の不振により製造業が低調であると述べています。また、インドの自動車市場の成長に急ブレーキがかかっている点も成長見通しを悪化させていると見られます。

 

金融緩和にもかかわらず、インド自動車市場の成長にかげりが見られる原因は、利下げの効果にラグがある可能性もありますが、より深刻と思われる要因はインドの自動車価格は排ガス規制に向け上昇傾向である一方、インド消費者の所得が追いつかないというミスマッチが考えられます。価格上昇で消費者が手を出しにくい状況が想定されます。

 

インド経済に下支え策が求められる中、インド中銀は、少なくとも据え置きは維持するなど、金融緩和姿勢を維持すると見ていますが、利下げ回数などを減らし、流動性供給など他の手段を模索する可能性もあると思われます。その理由として、足元のインフレ率は約3.2%ながら、来週公表予定の9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.7%程度が見込まれるなど、食料品などに、緩やかながら上昇傾向が見られます。

 

また、インド政府による法人税の引き下げなど他の景気てこ入れ策も発動されており、政策効果を見守る必要性もあるように思われます。

 

インドでは銀行を介さず資金を融通する「影の銀行(シャドーバンキング)」に対する潜在的な不安もあり、危機対応のカードを残すことも考え始めているかもしれません。インド中銀は金融緩和姿勢を示し続けるも、利下げペースを鈍化させる可能性があると見ています。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド中銀、利下げの背景に「経済成長ペースの鈍化」』を参照)。

 

 

(2019年10月8日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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