本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

8月分機械受注(除船電民需)は前月比▲2.4%と2カ月連続の減少

 

製造業・前月比は▲1.0%と2カ月ぶりの減少、非製造業は2カ月連続減少

 

7~9月期見通し前期比▲6.1%は9月が前月比▲10.8%で達成

 

3カ月移動平均前月比+1.2%の増加。基調判断「持ち直しの動きがみられる」継続

 

 

 

●8月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲2.4%と2カ月連続の減少になった。3カ月移動平均は前月比+1.2%で2カ月ぶりに増加となった。これで4月分以降5カ月中4カ月が増加になった。また、機械受注(除船電民需)の前年同月比は▲14.5%で3カ月ぶりの減少になった。

 

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回7月分では大型案件は0件だったが、今回8月分でも大型案件は0件だった。

 

●8月分製造業の前月比は▲1.0%と2カ月ぶりの減少。製造業17業種中、8業種で増加し、減少は9業種だった。

 

●8月分非製造業(除船電民需)の前月比は▲8.0%と2カ月連続の減少になった。7月に船舶の大型案件があった建設業8月分は反動で前月比▲50.2%の減少であった。8月分の電力業は大型案件が火水力原動機、発電機、化学機械の3件あったことから前月比+201.2%の増加になった。電力業を含む、非製造業全体では前月比+25.3%と2カ月ぶりの増加になった。非製造業12業種中、4業種が増加で8業種が減少となった。

 

●大型案件は、前回7月分では合計2件。内訳は、建設業の船舶1件の他は、官公需(その他官公需)の1件(その他産業機械)であった。今回8月分では合計9件。内訳をみると、前述の電力業の3件の他は、官公需(その他官公需)の1件(電子計算機等)、外需5件(鉄道車両1件、航空機1件、火水力原動機1件、電子計算機2件)であった。

 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は8月分で前月比+2.5%と2カ月連続の増加となった。前年同月比は▲4.8%と4カ月連続の減少になった。代理店受注の7~9月期の見通しは前期比▲16.8%だったが、9月分の前期比が▲34.3%で達成できるので、代理店受注の7~9月期の実績は上振れることになりそうだ。

 

●外需は8月分で前月比+21.3%で2カ月ぶりの増加になった。大型案件の効果も出たとみられる。前年同月比は▲9.2%と5カ月連続の減少になった。外需の7~9月期の見通しは前期比+16.5%と大幅な増加率だが、9月分が前月比+11.8%で達成できる。世界景気の先行き不透明の中、夢の数字と思われた+16.5%だが、あながち達成不可能とは言えないようだ。

 

●内閣府の基調判断の推移をみると、18年10月分と11月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」という判断だったが、18年12月分に「足踏みがみられる」に下方修正され、19年3月分まで4カ月連続して「足踏みがみられる」という判断だった。4月分では3カ月移動平均が+3.6%と4カ月ぶりに増加に転じたこともあり、4月分では「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。5月分・6月分・7月分に続き8月分でも「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」という判断で据え置きとなった。

 

 

●機械受注(除船電民需)7~9月期の前期比見通しは▲0.3%である。7~9月期の前期比実績は見通しに使う達成率の計算方法を変えた09年(平成21年)からの10年間でみると、上振れ8回、下振れ2回であり、上振れしやすい傾向がある四半期である。19年(令和元年)の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率94.3をかけたものである。7~9月期の前期比見通しの▲6.1%を達成するためには、9月分で▲10.8%以上で大丈夫だ。今年も上振れになりそうだ。ちなみに、9月分前月比が0.0%なら、7~9月期の前期比は▲2.6%になる。7~9月期の前期比が0.0%になるには、9月分前月比が+8.0%必要だ。世界経済の動向が不透明な中、今後の動向については予断を持つことなく注視する必要があろう。

 

●19年9月調査の19年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+6.6%になった。19年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲6.7%だった。19年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比は+2.4%になった。また、GDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」の2019年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+7.4%。19年度の中小企業・全産業で▲2.8%だった。19年度の全規模・全産業では+5.3%と底堅い数字になった。こうした計画調査からみると、設備投資の先行指標が持ち直しの動きで推移していても不思議ではないだろう。

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIの最近の動きをみてみよう。18年12月分の景気ウォッチャー調査では、設備投資関連・現状判断DIは55.0(同5人)、設備投資関連・先行き判断DIが50.0(同9人)。18年のうちは底堅い動きだった。

 

 

●しかし、19年に入ると変調をきたし、米中貿易摩擦など先行きの不透明材料を受けて、設備投資関連・現状判断DIは8月に36.5(同13人)まで、設備投資関連・先行き判断DIは6月・9月に31.8(同11人)まで低下した。

 

●9月には、設備投資関連・現状判断DIは45.6(同17人)で7月の50.0(同8人)以来の水準に戻った。足元では底堅さが見られる。しかし、設備投資関連・先行き判断DIが31.8(同11人)へと再び悪化した。

 

●9月調査では「前年の北海道胆振東部地震を踏まえて、道内企業ではBCP対策として、ITや通信関連での設備投資がみられるようになってきている。案件数、受注量共に着実に増加している。(北海道・通信業(営業担当)」、「民間の設備投資案件を中心に受注量が拡大傾向にある。(東北・建設業(従業員))」という声がある一方、「企業の設備投資に停滞感が出ており、下半期から年末にかけての設備更新の話がなかなか確定しない。(近畿・電気機械器具製造業(経理担当))」、「取引先の設備投資が停滞していることから、当社製造装置の受注が減少している。(中国・電気機械器具製造業(総務担当))」といった意見がみられる。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年8月分「機械受注」データの分析』を参照)。

 

2019年10月10日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

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