9月米雇用統計…悪化懸念和らぐも、新たな判断材料が待たれる

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米9月の雇用統計は、雇用の強い面と、弱い面が混在する結果と見ています。この良くも、悪くもという今回の雇用統計の数字は、月初に公表された景況指数で雇用の悪化が示されたことによる過度な雇用悪化への懸念は多少和らぐと思われます。もっとも、米国の景気拡大が長期化する中、雇用統計の解釈を柔軟にする必要もありそうです。

米9月雇用統計:非農業部門雇用者数は市場予想を下回るも、失業率は歴史的水準に低下

米労働省が2019年10月4日に発表した9月の雇用統計で、景気動向を反映すると言われる非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は13.6万人増と、市場予想(14.5万人増)を下回りました。8月は16.8万人と、速報値の13万人から上方修正され、7月の7000人と合わせ、2ヵ月で合計4.5万人上方修正されました(図表1参照)。

 

月次、期間:2016年9月~2019年9月、前月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米非農業部門雇用者数の推移 月次、期間:2016年9月~2019年9月、前月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

失業率は3.5%と、市場予想、前月(共に3.7%)を下回り、69年12月(3.5%)以来の歴史的低水準となりました。平均時給は前月比0.0%と、市場予想(0.2%)、前月(0.4%)を下回りました。

どこに注目すべきか:非農業部門雇用者数、水準、新規雇用、賃金

米9月の雇用統計は、雇用の強い面と、弱い面が混在する結果と見ています。この良くも、悪くもという今回の雇用統計の数字は、月初に公表された景況指数で雇用の悪化が示されたことによる過度な雇用悪化への懸念は多少和らぐと思われます。もっとも、米国の景気拡大が長期化する中、雇用統計の解釈を柔軟にする必要もありそうです。

 

まず、非農業部門雇用者数については9月分は市場予想を下回るも、7,8月分の上方修正でおつりがくる内容であったことから、例えば同データが10万人を下回るような過度な悲観論は後退しました。もっとも、大手自動車メーカーのストライキによる雇用調整は9月データに反映しておらず、来月は、その分のダウンサイドリスクは残ると見られます。

 

しかし、非農業部門雇用者数でより重視したいのは水準です。リーマンショック後の大量の失業者がその後の景気回復局面で職場に戻る過程では、例えば概ね20万人などの目安が好調・不調の目安とされていました。しかし、景気サイクルや、労働人口の伸びなどから現時点で予想される雇用の伸びは過去に比べ低いと見られます。ボストン連銀のローゼングレン総裁は9万~11.5万人を適正な範囲と述べています。18年の非農業部門雇用者数の伸びは月平均で約22.3万人でしたが、19年は現時点で16.1万人です。ピクテでも目安は10~15万人程度が適正水準と見ています。

 

次に失業率は水準に加え、質の面に改善が見られました。例えば、労働参加率の水準が維持されたのは(図表2参照)、求職者の減少など「質の悪い」失業率低下でなかったことを物語るとみています。また、過去に働いた経験の無い人の採用である新規雇用も改善しています。その他にも、雇用市場が活況と見て、自主的に退職する「離職率」も、最新データを確認する必要はありますが、底堅く推移しています。

 

月次:期間:2014年9月~2019年9月 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米労働参加率と新規雇用者数の推移 月次:期間:2014年9月~2019年9月
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、平均時給は前月比で0.0%と、前月の同0.4%を下回っています。比較的高い伸びを示した前月の反動だけでは下げの説明としては不十分かもしれません。ただ、時給を生産者と管理職に分けると、生産者は前年比3.5%と高水準を維持しており、全体の時給の伸び悩みは管理職部分が押し下げたと見られます。この背景について掘り下げた理解は必要ですが、生産者の時給は底堅いとも見られます。

 

今回の雇用統計は、良い面と、悪い面が混在し、方向性を打ち出すよりは、新たな判断材料を待つべきと見ています。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『9月米雇用統計…悪化懸念和らぐも、新たな判断材料が待たれる』を参照)。

 

 

(2019年10月7日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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