日本型の採用活動を続ける国内企業に、未来はあるのか?

近年、富裕層を中心に、子どもを幼少のうちに海外留学させたり、国内のインターナショナルスクールに通わせたりと、国際感覚を身に着けるための教育がひとつのトレンドになっている。本連載では、グローバルマーケットの第一線で活躍し、現在は留学サポート事業などを手がける株式会社ランプライターコンサルティングで代表取締役社長を務める篠原竜一氏が、グローバル人材を目指す富裕層の教育事情について、実体験も交えながら解説する。今回は、従来型の新卒採用を続ける日本企業の将来性について考えていきます。

世界で留学生は増えている一方で、日本人留学生は減少

日本の雇用制度である終身雇用制度は、国・企業の政策です。80年代のアメリカで日本的経営が学ばれたように良いところもたくさんある一方で、バブルの崩壊、その後のグローバリゼーションの進展を受け、終身雇用制度という政策は見直しを迫られています。

 

現在でも、多くの企業の人事政策は終身雇用制度が維持されています。今や、日本の伝統文化として根付いている制度なので、見直すのは大変です。政策は見直すことができますが、伝統文化を見直すことには、当然のことながら抵抗がある人が多いからです。

 

これから社会に出る日本人学生の競争相手は日本人のみではないのは明らかで、外国人も競争相手となってきます。

 

米国国際教育研究所によると2017~18年にアメリカで勉強する留学生(大学、大学院、交換留学、その他研修など)は、1,094,792人。全学生の5.5%に当たります。トップ10は以下の通りとなっています。

 

1、中国 363,341 (33.2%)

2、インド 196,271 (17.9%)

3、韓国 54,555 (5.0%)

4、サウジアラビア 44,432 (4.1%)

5、カナダ 25,909 (2.4%)

6、ベトナム   24,325 (2.2%)

7、台湾 22,454 (2.1%)

8、日本 18,753 (1.7%)

9、メキシコ 15,468 (1.4%)

10、ブラジル 14,626 (1.3%)

 

中国人とインド人留学生が留学生全体の51.1%を占めています。

 

過去と比較してみましょう。1999~2000年の中国からの留学生は54,466人、インドからの留学生が42,337人に対し、日本からの留学生は46,871人で世界2位でした。その時期と比較すると日本人留学生は約6割減です。当時の留学生は全体で547,867人だったので、留学生数が約2倍の規模になるなか、日本人留学生は増えるどころか減っています。

 

昨今、日本人の留学が減少。就職活動とのバッティングも理由の1つになっている
昨今、日本人の留学が減少。就職活動とのバッティングも理由の1つになっている

日本企業は、日本の大学生を優先したままでいいのか?

アメリカのボーディングスクール生、大学生がものすごく勉強するというのは本当です。アメリカのボーディングスクール、大学には学生寮があります。大学の近くに友人とアパートを借りる大学生もいますが、寮暮らしをするのが基本です。勉強が大変で、特にボーディングスクール生は、日曜日から金曜日までは学内で過ごす学生が多いです。

 

アメリカの大学の寮の多くは、食堂、洗濯機・乾燥機(コインランドリー)、ピアノの練習をする部屋、図書室、ミーティングルーム、メールルーム、などが揃っており、学生は、勉強が大変な時には寮から出ない日もあります。

 

アメリカのアイビーリーグのひとつ、コーネル大学が推奨している時間の使い方を紹介しましょう。1日は24時間。8時間の睡眠をとることを前提とすると残りは16時間。食事2時間、クラブ活動などの娯楽3時間、洗濯など身の回りのこと1時間、授業4時間、読書・勉強6時間という時間配分をひとつの目安としています。

 

こんなに勉強しなくても要領よくついていける学生もいるのかもしれません。また、意外と自由時間も多いのではないかと思う方もいるかもしれませんが、授業以外に1週間に36時間程度を読書・勉強の時間に割かないと授業についていけません。アメリカの大学生は勉強しています。

 

もちろん学費のためにやむなく学内、あるいは近くの町でアルバイトをするアメリカ人学生はいます。しかしながら、アメリカ人は、大学生の時には必要がなければアルバイトはしません。留学生は、ビザの関係で、学外で労働することが禁じられています。働くとすれば、学内にあるブックストア、学食、図書館、学内ツアーガイドなどになります。

 

アメリカの大学生は、授業の課題に取組むために4年間、毎日、情報収集→仮説・検証→分析→判断→決断、という自分の頭を使って考える訓練を行います。その結果、自分の頭で考えて、それを適切に表現する力が鍛えられていきます。まさに昨今の日本の企業が探している人材ではないでしょうか?

 

残念ながら、日本語ができないという理由だけで、こういう優秀な人材の採用をせずに、日本の大学からの採用を優先している日本の企業は、グローバル企業と比較すると、相対的に生産性は上がらずに、競争力は低下していくはずです。したがって、これは学生たちだけの問題ではありません。企業の問題に繋がっていきます。

 

最近では日本の大学に通う学生もボストンで開催される世界最大のキャリアフォーラムに参加する学生が増えています。このキャリアフォーラムには日本企業に加え外資系企業も多く参加しています。アメリカの大学で学ぶ日本人学生、外国人学生を採用したいという企業が年々増えてきており、魅力のある仕事がボストンで見つかるようになってきているといえるでしょう。したがって、これは学生、企業だけの問題ではありません。大学の問題でもあります。

世界基準の採用活動を行う日本企業が成長する

日本の学生、大学、企業はまさにグローバル競争のど真ん中にいます。今こそ将来のビジョンを描かないといけない時なのです。アメリカ企業の採用では、学生の学校の成績を重視します。成績が悪いと書類選考で落とされてしまいます。

 

なぜなのでしょうか? 

 

企業が大学の教育を信頼しているからです。アメリカでは、一生懸命勉強し、良い成績を収め、自分が情熱を傾けられることに取り組んできた学生が好まれます。だからアメリカのボーディングスクール生、大学生は、一生懸命勉強します。

 

日本ではあまり知られてはいませんが、ボーディングスクール生、大学生は成績次第で退学になります。生徒は成績が重要なので一生懸命勉強します。一流企業に入るためには優秀な成績を収める必要があります。一流企業に入社しても、成績次第では解雇の対象になります。

 

アメリカのエリートたちは、ボーディングスクール生の時から成績次第では退学になるという制度の下で育ってきているので、社会人になっても成績次第では解雇の対象になるという現実を受け入れることができるというのが筆者の理解です。そして、彼らに共通しているのは決してあきらめないチャレンジ精神です。こうしてグローバルリーダーに育っていくのです。

 

一般的に日本企業の多くは、大学の成績、大学1年から4年までの成績がどのように推移しているかということよりも、出身大学の偏差値が高く、協調性があり、我慢強く、コミュニケーション能力が高い学生を好む傾向が強いと思います。会社にとってはとても使い勝手の良い人材なのでしょうが、このままで良いのでしょうか?

 

日本企業の採用は、通年採用が始まり、どんどん変わっていくでしょう。この変化を前向きに捉え、チャレンジするクリエイティブでイノベーティブな会社は、生産性が上がり、従業員の賃金は上昇していくでしょう。すると従業員のモチベーションは上がり、より発展していくことになるでしょう。

 

そういう会社が求める人材は、インターナショナルスクール、アメリカのボーディングスクールでの基礎教育を受けてきた、自己肯定感の高い若者なのかもしれません。

 

株式会社ランプライターコンサルティング 代表取締役社長

1988年に日本興業銀行に入行。東京、ロンドン、ニューヨークにてグローバルマーケットビジネスに従事。ニューヨーク支店はワールドトレードセンターの50階にあり、2001年米国同時多発テロでは被災した。この時の壮絶な経験から多様性を学ぶ重要性を痛感し、05年にバンクオブアメリカ証券会社に転職。マネージング・ディレクターとして外国債券のセールス&トレーディングを統括。07年に取締役に就任、副社長として金利・債券ビジネス拡大に注力。バンクオブアメリカメリルリンチを経て、14年にクレディ・アグリコル証券に入社、債券営業統括部長に就任し、機関投資家向けビジネス拡大に尽力。18年末に退職、19年2月、株式会社ランプライターコンサルティングを設立。インターナショナルスクール進学、アメリカ留学サポート事業に加え、世界を舞台に活躍する人材育成事業を展開している。

著者紹介

連載世界を舞台にしたグローバル人材を育てる…富裕層によるエリート教育

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