グローバル化が急速に進む中、海外で子どもの幼少期や初等、中等教育等の早い段階から英語環境におくことで、英語のみならず、国際感覚を身につけさせたいと考える富裕層が増えている。本記事では、数多くの留学サポートを手がける株式会社アエルワールドで海外生活カウンセラーとして親子留学を担当する北原万紀氏が、「家族長期留学」についての最新事情を紹介する。今回は、「ドバイ」の留学事情についてである。

多国籍ゆえ「インターナショナルスクール」が充実

「日本人、中国人、韓国人が少ない留学先を」という相談をいただくと、一般的な留学先では、なかなか行き場所がない時代になってきました。相当な田舎など、暮らしやすさとは無縁な世界に身を置くならまだしも、家族の暮らしやすさを実現しようとすると、どうしても人がたくさん集まっている場所にならざるを得ないものです。

 

そんな親御さんに密かな注目を集めているのがドバイです。

 

旅行先でもまだ行ったことがないという方も多いかもしれませんが、約200の国と地域からの人が集まり多国籍であるがゆえに、実はインターナショナルスクールが充実しています。

 

アラブ首長国連邦(UAE:UnitedArabEmirates)は、7つの首長国(Emirate)からなり、ドバイはその首長国の一つです。アラブ首長国連邦(UAE)の人口は約940万人、そのうち首都のアブダビに約120万人、ドバイは約300万人の人口を有しています。

 

UAE全体でアラビア語を公用語としますが、ほとんどの場所で英語が通じます。中東というと、政治的に不安定で危険なイメージを持つ方もいらっしゃいますが、ドバイは中東屈指の貿易・商業の中心都市であり、金融センターです。とにかく洗練された高層ビルの数々と整備された街並みはテーマパークのようで、ドバイ在住者(日本人)も、その治安の良さは太鼓判を押します。

 

ドバイの近代的な街並み。ほとんどの場所で英語が通じる。
ドバイの近代的な街並み。ほとんどの場所で英語が通じる。

 

ドバイは、政府系不動産開発ディベロッパーのEMAAR Propertiesを中心に、大規模な都市開発を行っており、砂漠のど真ん中に次々と街が出来上がっていく様子が日常的に見られます。急成長、急発展していることを肌で感じることができる都市です。

 

ドバイはとにかく「世界一」が大好き。観光でも見どころがたくさんです。例えば有名なのは、ブルジュ・ハリファ。828mの世界一高いビルでしたが、現在さらに高い1,000mを超えるドバイ・クリーク・タワーを建設中です。こちら両方をEMAARという会社が担当しています。

 

また、ブルジュ・ハリファのお膝元にあるドバイモールは、2008年に世界最大のショッピングモールとして開業しました。店舗は約1,200店舗が入居し、水族館、アイススケートリンク、映画館などがある一種の屋内テーマパークのようです。1年間を通じ平均気温が20度以上、夏場の最高気温が40度を超えるドバイでは、こうした大型の屋内施設が充実しているため、思った以上に夏場の気温で困ることもあまりないとのこと。また住居では、高層マンションなどの中に、ジムやプールが充実しています。

 

この急発展をとげ、近代的な街並みのドバイにあって面白いのがイスラム文化です。学校も企業もドバイでは、日曜日から木曜日が平日となっています。ただ、イスラム文化とはいえ、その宗教的な制約は薄いのが特徴です。

 

基本的には豚肉を食さず、飲酒も禁止されているイスラム教ですが、大型スーパーでは豚肉が売られていますし、豚肉を出すレストランもあります。飲酒は高級ホテルやレストランなど政府の許可証があれば提供しています。また、女性の服装も外国人なら自由です。イスラム圏でも最も外国人が暮らしやすい都市の一つといえます。

 

海外名門校と比較すると「学費」はドバイが割安⁉

ドバイの約300万人の人口のうち、純粋なドバイ人の人口は15%程度、85%は外国籍といわれています。70%程度はインドやパキスタン、バングラデッシュ人を含むアジア人が占めており、欧米系ですとイギリス系がよく見られます。1971年の独立まではイギリス保護領だった経緯もあり、インターナショナルスクールや大学にも、イギリス系は多く見られます。

 

ドバイの特徴は多国籍であるため、駐在員のためのインターナショナルスクールの数が多いのが特徴です。イギリス系、アメリカ系、IB(国際バカロレア)のいずれかを採用していることが多く、入学には基本的に高い英語力が求められます(ただし、学校で英語サポートができるコースを持っている学校もあるため、弊社のお客さまには、英語ができない状態で渡航し、入学されたケースもあります)。

 

他の国でよく聞く国籍の偏りがありませんが、日本人は良くも悪くもほとんどいません。また、インターナショナルスクールでは、Nursery(保育園)から受け入れしてくれるため、小さいご兄弟がいる場合も、同じ学校に通うことができます。他の国では空きが見つからないことが多い保育園や幼稚園も、ドバイでは比較的見つけやすくなっています。

 

ドバイではKHDA(Knowledge and Human Development Authority)が私立校の教育の質の向上を管理しており、13の基準を持ちながら定期的な視察をおこなっています。評価はWeak,Acceptable,Good,Verygood,Outstandingまで5段階で、その結果がウェブサイトに公開されています。

 

学費はばらつきがありますが、年100万〜300万円程度。他の国とさほど変わりないか、ドバイの人気校と海外名門校を比較すると、ドバイが割安に感じられます。

 

入学する際、前の学校からの転校証明が求められることがあります。外務省の認証が必要であったりと、あまり留学の受け入れに慣れている国や学校では見ない手続きのため、少し余裕をもった準備と計画をされておくほうがよいでしょう。

 

ドバイという土地柄、留学情報もまだまだ少ないのですが、学校は快く対応してくれます。ドバイと留学が繋がらないご両親も多いのですが、意外と視察に行って喜ばれるのがお子さまより親御さんです。ドバイや現地のインターナショナルスクールの先入観をいい意味で壊されたようで、視察後に「どこも良くて、決められない」という声をいただくことも。実感がわかないからこそ、一度、視察に行かれることをおススメします。

 

「不動産投資」による家族のビザ取得が一般的

留学生を受け入れている主要な国々とは異なり、両親の赴任でドバイに来るケースがほとんどのため、ビザを含め、留学生を単身で受け入れる仕組みがあまり充実していません。よくあるホームステイがドバイでは一般的ではないため、ドバイに留学する場合は、ボーディング(寮)か、親子での留学になります。

 

ドバイは電車やバスなどの公共交通機関は日本ほど発達しておらず、どちらかというとクルマ社会です。クルマなしの生活をするなら、学校がスクールバスを出しているエリアか、ダウンタウン近くに住むのが便利です。特に大型スーパーや大型商業施設は、ダウンタウン近くや、いくつかの限られたエリアにあるので、買い物などを便利に済ませたい場合は、やはり中心地がいいでしょう。

 

留学というキーワードで学校ばかりに目が行きがちですが、家庭の中の環境や家族関係が充実することが、小さなお子さまの教育においては特に大切です。ご両親がストレスを溜めない環境を選び、学校生活と家庭のスケジュールを考慮した生活設計を事前にしていくことが留学成功の秘訣です。

 

また、思わぬことが起きた時にも対処ができるよう、いざとなったときに頼れる日本人とつながっていたり、そうした解決の手段やヒントを渡航先に持っておくことも安心につながります。

 

そしてドバイには、子どもの留学に親がついていくための保護者ビザがないため、不動産投資による家族のビザ取得を検討することが一般的です。ドバイの不動産ビザは、日本円で約3,000万円以上の居住用不動産への投資と、条件を満たす資産または収入の証明があれば、簡単に申請ができるビザです。

 

この居住用物件が日本と比較すると非常に割安でハイグレードなため、物件を見て驚く方もいます。留学ではいずれ必要になる住居です。ドバイの学校視察と合わせ、不動産視察も楽しめるアトラクションのひとつかもしれません。

 

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