強酸性の胃酸が粘膜を溶かす⁉「胃腸」が不調になる要因とは

健康の3大要素といわれる「快食・快便・快眠」に深く関わっている臓器が「胃」と「腸」です。近年は「腸活」という言葉がブームとなるほど人々の胃腸に対する関心は高く、それだけ問題を抱える人が多くなっている表れともいわれています。本記事では、藤田胃腸科病院理事長・院長の本郷仁志氏が、胃腸の健康に関する正しい知識や、氏が普段の診療の中でアドバイスしている健康維持の秘訣等を紹介します。

「消化」「殺菌」「吸収」…胃の大きな3つの役割

つい軽く見られがちな胃腸の不調。しかし、その背後には大きな病気が隠れていることもあるのです。

 

理想は定期的な検査(健康診断や特定検診を含む)による早期発見ですが、なかなか病院には行けないという人も多くいます。

 

そこで本連載では、最低限知ってほしい情報を「心得」の形でまとめています。胃がんのように知っていることで防げる病気や症状は意外と多いものです。ぜひ、正しい知識を身に付けて、健康な胃腸を実現してください。

 

【心得その1】

強酸を出す胃も無敵ではない

 

強い胃腸をつくるために、まずは胃の役割から見ていきましょう。

 

胃は食道と小腸の間に位置していて、食べものがないときは小さくしぼんでいます。食べものが送り込まれてくると大きく膨らむのですが、その容量は1.5〜2.5リットル。それだけの量の食べものを受け入れることができるわけです。

 

恐らく多くの人が「胃は食べものを溶かすところ」というイメージを持っていると思いますが、実際には「消化」「殺菌」「吸収」という3つの役割があります。

 

まずは「消化」ですが、胃は「胃袋」と呼ばれるように食べものを一時的に溜めておく機能を持ちます。

 

溜めておいて何をするかといえば、胃液を分泌して食べものをドロドロの粥状に溶かすことで、食物に含まれる栄養分を吸収しやすいようにするのです(その吸収を担うのは小腸です)。

 

また「蠕動運動(ぜんどううんどう)」といいますが、消化がスムーズに進むように伸び縮みを繰り返します。この蠕動運動は食べものを細かくして小腸に送り込む働きも担っています。

 

食べものを溶かす働きをするのは胃から分泌される「胃液」で、胃液に含まれる「ペプシン」という酵素がタンパク質を分解していきます。もともとは「ペプシノーゲン」という酵素なのですが、「塩酸」との化学反応によって生まれます。

 

「塩酸」は強い酸性の液体で、「混ぜるな危険」と書かれた漂白剤などに含まれているとご存じの方も多いでしょう。あるいはサスペンスドラマなどで、塩酸がかかってしまった皮膚が溶けるといった描写を見たことがあるかもしれません。

 

私たちの胃は、あの強力な酸性を持つ塩酸(胃酸)を分泌し、溜めておくことができるのです。胃液が逆流してきたら胸元がつらくなりますが、それもそのはず、それは塩酸の刺激によるものだからです。

 

胃酸はペプシノーゲンをペプシンに変えますが、それ以外にも「殺菌」の働きを担っています。

 

胃酸が殺菌の対象とするのは、外部から侵入してきた(食べものにくっついてきた)細菌たち。なぜこの機能があるかといえば、胃に溜め込まれた食べものが細菌の作用によって腐敗してしまう可能性があるからです。

 

食べものが胃の中にとどまる時間は2時間から6時間。細菌たちが繁殖するのが可能となる時間です。その腐敗を防ぐためにも殺菌は大切な働きとなります。

 

また、胃はアルコールの吸収も一部担っています。胃から吸収されたアルコールは肝臓に送り込まれて、そこで分解されます。胃で吸収されなかったアルコールは、そのまま次の小腸に送り込まれ、そこで吸収されることになります。

 

このように、胃は「消化」「殺菌」「吸収」の3つの働きを持っています。多くの人が思っていた以上に働き者だと言えますが、だからといって決してタフな臓器ではありません。意外と打たれ弱い面もあるのです。

労働者の6割が強いストレスを感じて仕事をしている⁉

【心得その2】

ストレス、暴飲暴食、喫煙……その生活が胃を痛める

 

胃は「胃酸」のような強酸性の液体に耐えられますが、デリケートな臓器でもあります。ストレスがかかると胃が痛くなる、食べ過ぎで胃がもたれる……という症状は多くの人が経験しているはずです。

 

本来、胃は丈夫な臓器。大切に使えば、一生若々しく元気に働いてくれるのですが、さまざまな要因によって、不調を感じている人が少なくないというのが現状です。

 

いつまでも大切に使う方法は簡単、胃に負担をかけるものが何かを知り、正しい対策をすることです。その知識があれば、胃の病気の予防につながります。

 

以下では、主だったものをいくつか挙げてみることにしましょう。

 

●ストレス

現代はストレス社会。「忙しくていつも時間が足りない……」という人は珍しくありません。時間に追われると焦りが生じ、必然的にストレスにさらされる日々となります。

 

多忙であること以外にも人間関係の悩みであったり、家庭や仕事の心配事があったりで、日常的にストレスを感じている人がほとんどと言っていいでしょう。厚生労働省の「平成29年労働安全衛生調査」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は6割ほどとなっています。

 

ストレスをゼロにすることは現実的ではありませんが、少しでも減らす努力はすべきです。

 

ストレスを受けると体はこれに対応するためのホルモンを出しますが、そのことで胃は粘膜の防御機能を弱めてしまうため、胃酸で傷つく可能性が高くなります。すでにお話ししたように胃酸は強い酸性ですから胃痛を招くというわけです。

 

●暴飲暴食

「食べ過ぎ」や「飲み過ぎ」が胃に負担をかけることは、改めて強調するまでもありません。アルコールには胃酸の分泌を促進する作用があるため、飲み過ぎると胃粘膜を傷つける恐れがあります。空腹時に飲むのも良くありません。

 

また、たくさん食べると、それに応じて胃酸もたくさん分泌され、負担が増大します。刺激性の高い食べものや脂っこいものもなるべく控えたいものです。

 

●喫煙

たばこを吸うと血流が鈍くなるため、胃の働きも悪くなります。胃粘膜も胃液の影響を受けるようになり、痛みやもたれを感じます。

 

そもそも、喫煙は胃に限らず、体全体に害を及ぼすことが分かっていますから、まさに百害あって一利なし。禁煙を強くお勧めします。

 

●ピロリ菌

ピロリ菌という細菌が胃がんの主因になっていることは医学的にも証明されています。このピロリ菌は胃潰瘍・十二指腸潰瘍や慢性胃炎を引き起こすこともあります(全ての人がそうなるわけではありません)。

 

ピロリ菌に関しては改めて次回以降で、詳しくお話ししていくことにしましょう。

藤田胃腸科病院 理事長・院長

1963年生まれ。1989年、大阪医科大学を卒業。2003年より藤田胃腸科病院院長に就任。2009年より理事長も兼務。2019年より、大阪医科大学臨床教育教授。胃腸科および内科の専門病院として「早期発見・早期治療により患者様の信頼に応える」を基本理念に、日々診療に励む。地域での啓発活動も積極的に行っており、セミナーやイベント、講演会等で発表多数。胃がん・大腸がん検診に長年携わり、大阪府がん対策推進委員、病院のある大阪府高槻市では胃内視鏡検診導入・検討委員長や高槻消化器疾患談話会代表世話人を務めている。

著者紹介

連載快食・快眠・快便を実現!不調・病気知らずの「胃腸」をつくるための心得

胃腸づくり50の心得 悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方

胃腸づくり50の心得 悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方

本郷 仁志

幻冬舎

食物繊維の取りすぎで便秘が悪化⁉ 間違った情報をうのみにしていると不調が引き起こされることも…。阪府高槻市で50年間にわたり地域の健康を守り続けてきた専門医による胃腸のバイブル。年間1万2000件の内視鏡検査を行う藤田…

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