ECB理事・ラウテンシュレーガー氏辞任…債券購入再開も理由?

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

ラウテンシュレーガー理事の辞任は10月31日と公表されました。この日は債券購入を決めたドラギ総裁の任期満了に伴う退任の日とも重なります。ラウテンシュレーガー理事辞任の本当の理由はわかりませんが、最近の発言などから、債券購入再開に対する不満が背景と思われます。

ラウテンシュレーガーECB理事:突然の辞任、ECB政策理事会での意見対立が背景か?

欧州中央銀行(ECB)は2019年9月25日(日本時間26日)、ラウテンシュレーガー理事が10月末に退任すると発表しました。ラウテンシュレーガー氏は任期を2年以上残しての辞任となりますが(図表1参照)、公表された声明には退任の理由は明記されていませんでした。

 

ただ、ドイツ出身のラウテンシュレーガー氏は量的緩和政策の再開などを決めたドラギ総裁の金融緩和路線、特に債券購入再開に批判的な立場でした。

 

※辞任表明前、ラウテンシュレーガー理事の任期は2022年1月26日
[図表1]ドイツ出身のECB理事の就任期間 ※辞任表明前、ラウテンシュレーガー理事の任期は2022年1月26日

どこに注目すべきか:ECB理事辞任、ドイツ、債券購入再開、副作用

ラウテンシュレーガー理事の辞任は10月31日と公表されました。この日は債券購入を決めたドラギ総裁の任期満了に伴う退任の日とも重なります。ラウテンシュレーガー理事辞任の本当の理由はわかりませんが、最近の発言などから、債券購入再開に対する不満が背景と思われます。

 

 

ECB理事の任期は8年ですが、ドイツ出身の理事の就任期間を見ると、最近(?)で任期満了となったのは、イッシング理事(懐かしい名前ですが)が思い当たる程度です。他の理事は軒並み任期前に、辞任しています。辞任の理由は様々で、アスムセン理事はメルケル政権の労働次官就任が理由ですが、シュタルク理事は欧州債務危機におけるECBの対応、とりわけ国債購入に批判的でした。

 

ドイツ出身理事の辞任、それ自体は珍しくないことは確認できましたが、より大切なのはその背景です。今回ラウテンシュレーガー理事が金融緩和目的、シュタルク理事の危機対応と、それぞれ理由は異なりますが、ドイツ出身の理事は国債購入に対するアレルギーが強い印象です。

 

もっとも、前回9月12日のECB理事会で決定した毎月200億ユーロの債券購入は、ドイツだけでなく、ビルロワドガロー・フランス中銀総裁や、クノット・オランダ中銀総裁らも反対の声をあげています。反対の背景は何か?

 

 

まず、債券購入を再開するほどユーロ圏景気が悪いのかという景気への認識に違いがあります。債券購入賛成派は、すぐにも必要と考える一方、反対派は、ECBによる債券購入策は、より深刻な景気悪化に備ええるべきと見ています。

 

次に、特にドイツには債券購入プログラムのテクニカルな問題もあります。例えば、公債購入は、各国の資本拠出割合に応じた購入上限が定められています。また、1発行体あたりの保有上限を33%に設定しています。しかし、既に資本拠出割合による制限は守られないケースが散見されます。

 

33%ルールは全ての債権者を拘束する集団行動条項(CAC、ユーロ国債に付帯)により債務再編阻止の動きを防ぐために設定されました。こちらの上限に近づきつつあることも、債券購入再開を慎重にさせていると見られます。

 

なお、そもそもマイナス金利政策と債券購入は相性が良くないことを懸念している可能性もあります。債券購入が拡大すれば、マイナス金利の対象である過剰準備が増える構造だからです。ドイツはお世辞にも景気が良いとは言えず、景気指標も悪化傾向が続いています(図表2参照)。当然、金融緩和そのものに、反対ではないと思われます。ただ、金融政策の自由度が徐々に低下する可能性も想定されます。

 

月次:2016年9月~2019年9月、Ifoは独Ifo企業景況感の期待指数  出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]独製造業購買担当者景気指数(PMI)とIfoの推移 月次:2016年9月~2019年9月、Ifoは独Ifo企業景況感の期待指数
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECB理事・ラウテンシュレーガー氏辞任…債券購入再開も理由?』を参照)。

 

 

(2019年9月26日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

幻冬舎グループがIFAをはじめました!
「お金がお金を生む仕組み」を作りたいけど、相談相手がいない…
この現実から抜け出すには?

 こちらへ 

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・ヘッドライン

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧