「将来の所得代替率」は低下する見通しに
年金財政検証とは、いわゆる65歳前後から受け取れる公的年金の「通信簿」みたいなものです。これによって、将来私たちが受け取れる年金が「このくらいになる可能性がある」ということが垣間見えます。
今回は、6ケースの経済状況によるパターンが示されました。厚生労働省の年金財政検証は5年に一度発表されるようです。
下記は、厚生労働省発表の資料をもとに筆者が作成した表です。
上記のように、経済状況別に6種類の想定が挙げられています。1~3は、経済発展が「とても良い将来」を想定しています。
ところが、どの想定であっても、所得代替率は低下しています。所得代替率とは、現役世代の手取り所得に対して受給できる公的年金の割合のことをいいます。つまり、低いほど受給できる年金が少ない、ということです。
ちなみに、2019年現在の所得代替率は61.7%です。それが、将来的には36~51.9%程度にまで減るという試算です。
「そんなに減るの?」という感じがしないでもないですが、筆者的にはそれは「良くてそうなる」という印象です。なぜでしょうか。
それは、年金財政検証では最悪のケース6であっても、物価上昇率と賃金上昇率が上昇し続ける想定だからです。ちなみに、賃金上昇率がアップしたのは、ここ5年間では2016年度の1度だけのようです。
下の図がもう少し詳しい内容です。
このように甘い前提条件でも将来の所得代替率が減る予想です。現実的には、もっと減る可能性があります。
上記のように、最高に明るい未来のケース1であっても、現代の所得代替率に届きません。また、前提条件が甘いので、その数字にも届かない可能性があります。
若い現役世代が減り、年金を受給する高齢者層が増加
このように、将来は現状よりも厳しくなる見通しです。大きな原因としては、少子高齢化の進展に伴い、若い現役世代が減り、年金を受給する高齢者層が増えるため、という理由が挙げられます。
もちろん、老後に資金が足らない場合は働けばよいという解決策があります。下記は一例ですが、75歳程度まで働く(55年間働く)と所得代替率が100%を超える、という試算結果です。
今後は、健康寿命の増加と公的年金の減少に伴い、働きがい、やりがいのある仕事を続ける高齢者層が増える社会が到来すると考えられます。若いうちから、高齢期に向けて「自分はどのように生き・働くのか」というテーマを考えることも人生設計になるのではないでしょうか。
佐々木 裕平
金融教育研究所 代表