中国、無視できない金融システム不安…地方銀行救済の実情

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

今日のヘッドライン2019年5月31日号で包商銀行についてご紹介しましたが、中国当局はその後も別の地方銀行2行を救済しています。米中貿易戦争の影に隠れがちですが、中国の金融システムに対する不安も無視できない問題です。今のところ、中国当局の対応で、金融システムリスクは抑えられていますが、手探りの対応が続きそうです。

中国地方銀行:中国当局は、問題含みの中国地方銀行について様々な救済策実施

米付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは2019年9月9日の中国当局が今年になって実施した地方銀行の救済策についてのレポートを発行しています。

 

中国当局は5月に、内モンゴル自治区を本拠とする地方銀行の包商銀行を公的管理下に置きました。また、7月には国有金融機関3社が、遼寧省を本拠とする錦州銀行の株式の一部を買い入れました。さらに8月には、中国政府系ファンドが山東省に本拠を置く恒豊銀行に300億元を注入するなどの救済策を実施しています。

どこに注目すべきか:中国地方銀行、情報開示、株式買い入れ

今日のヘッドライン2019年5月31日号で包商銀行についてご紹介しましたが、中国当局はその後も別の地方銀行2行を救済しています。米中貿易戦争の影に隠れがちですが、中国の金融システムに対する不安も無視できない問題です。今のところ、中国当局の対応で、金融システムリスクは抑えられていますが、手探りの対応が続きそうです。

 

 

中国当局による各地方銀行への救済策には注目すべき違いが見られます。そこで簡単に対応策を振り返ります。

 

まず、包商銀行ですが中国人民銀行と銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の管理下に置かれました(事業の管理は中国建設銀行に委託)。銀行の接収は約20年ぶりであったことなどから市場に動揺も見られました。しかし中国人民銀行の弾力的な資金供給(流動性の提供、図表1参照)や、預金準備率の引き下げ、包商銀行の預金者や大半の債権者保護などにより落ち着きを取り戻しました。

 

日次、期間:2018年9月10日~2019年9月10日、プラスは人民銀が供給 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国人民銀行の資金供給の推移 日次、期間:2018年9月10日~2019年9月10日、プラスは人民銀が供給
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

しかしながら、包商銀行の情報開示に問題があり、中小銀行の資金調達に利用される譲渡性預金(NCD)の調達コストに上昇が見られました。包商銀行は財務諸表が未公表で、同じような銀行が10数行あることは不安を高めました。

 

 

7月末に救済された錦州銀行は、18年の財務諸表を開示できず、同行の香港上場株は今年4月から売買停止でした。社債価格の急落を受け、中国当局は錦州銀行を中国工商銀行と中国信達資産管理、中国長城資産管理の国有機関3社で錦州銀行の株式買い入れによる事実上の救済策を公表しました。包商銀行とは異なる救済策でした。なお、錦州銀行は配当で再び懸念が高まっています。

 

日次、期間:2018年9月10日~2019年8月31日、ドル建て額面100ドル 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]錦州銀行ドル建て社債価格の推移 日次、期間:2018年9月10日~2019年8月31日、ドル建て額面100ドル
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

8月に救済された恒豊銀行は中国政府系ファンド傘下の中央匯金投資と、山東省政府が出資すると報道されています。なお恒豊銀行は17、18年と2年連続で財務諸表を非開示としています。

 

3つのケースを比べると救済主体や、救済方法に違いが見られます。何故変えているのか理由は不明ですが、金融システムを維持する上で最適な手段を当局が模索している印象です。中国金融システムリスクは抑制されている状況ですが、今後も当局の手綱さばきに注視は必要です。

 

 

記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国、無視できない金融システム不安…地方銀行救済の実情』を参照)。

 

 

(2019年9月11日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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