ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

8月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったうえ、20年国勢調査に向けた臨時政府職員が雇用を2.5万人分押し上げた側面もあり、雇用者数は実感としては弱い印象です。しかし、失業率や、労働時間、賃金などを見ると今回の雇用統計には堅調な面も見られます。今後の動向を確認する必要はありますが、悲観する内容ではないと思われます。

米国8月雇用統計:非農業部門雇用者数は軟調となるも、平均賃金は回復

米労働省が2019年9月6日に発表した米国の8月雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比13万人増と、市場予想(16万人増)、前月(15.9万人増)を下回りました(図表1参照)。家計調査に基づく8月の失業率は3.7%でした。

 

月次、期間:2014年8月~2019年8月、前月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米費農業部門と製造業の雇用者数の推移 月次、期間:2014年8月~2019年8月、前月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

平均時給は前年同月比3.2%増で、市場予想(3.0%)を上回りました。前月は3.3%と、速報値(3.2%)から上方修正されました。

どこに注目すべきか:米雇用統計、製造業、労働参加率、平均賃金

8月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を下回ったうえ、20年国勢調査に向けた臨時政府職員が雇用を2.5万人分押し上げた側面もあり、雇用者数は実感としては弱い印象です。しかし、失業率や、労働時間、平均賃金などを見ると今回の雇用統計には堅調な面も見られます。今後の動向を確認する必要はありますが、悲観する内容ではないと思われます。

 

まず、非農業部門雇用者数については臨時政府職員を除けば10万人程度という数字が実感です。また、内容を見ると昨年から製造業が伸び悩んでいます(図表1参照)。米中貿易戦争の影響が想定されます。なお、製造業で雇用が減少した州を見ると、ウィスコンシン州は約4000人、ペンシルバニア州は約8000人など選挙の激戦州にマイナスが多く見られます。政治的に注目すべき動きと思われます。

 

ただ、非農業部門雇用者数については低失業率、労働力人口の動向から想定される(自然な)雇用者数の伸びなどから判断して、非農業部門雇用者数が10~15万の伸びというのは無理のない数字とも見ています。

 

 

一方、他の雇用統計はまずまずであったと見ています。例えば、失業率は8月も3.7%と低水準で推移しています(図表2参照)。失業率の内容を見ると、就業者数が増え、失業者数が減少する一方で、労働参加率が63.2%に上昇したように、雇用市場に参加する人の増加が見られます。雇用需給の点で改善と見ています。もっとも、経済的理由によるパートタイムなどを失業者に含めた広義の失業率(U6)は今回が7.2%と、7月の7.0%から悪化しているなど、一部の内容に注意は必要です。

 

月次、期間:2009年8月~2019年8月 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国失業率と労働参加率の推移 月次、期間:2009年8月~2019年8月
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

平均賃金は前年同月比、前月比共にそれぞれ、市場予想を上回りました。また、7月の前年同月比データは3.3%と上方修正されており、堅調さも見られます。平均の時間当たり賃金を数字で見ると28.11ドルで、前月の28.00ドルから上昇しています。週の労働時間は8月が34.4時間(7月は34.3時間)であることから、週当たりの賃金は8月が966.98ドルで、7月の960.40ドルから増加しています。消費の下支え要因となることも期待されます。

 

今回の雇用統計は非農業部門雇用者数などから、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)と、年内再度の利下げ見通しを支持する内容と見ています。しかし、他のデータを見ると、過度な利下げ期待に対しては慎重に見ています。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『8月の米雇用統計…失業率、労働時間、平均賃金などは堅調』を参照)。

 

 

(2019年9月10日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧