相続税は、事前の対策によって大きく納税額が変わる税金です。その対策方法は相続人・被相続人が置かれた状況によって異なり、それぞれのケースに合わせた対応策が必要です。本記事では、相続税申告200件以上を経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の天満亮税理士、竹下祐史税理士が、実例をもとに、現状を分析した上で実行すべき「相続対策」について解説します。今回は、相続税の「税務調査」について、実際に現場で立ち会った経験のある税理士が紹介します。

調査官は重加算税をかけたがる
税務調査を録音することはできるか?
5/19(日)>>>WEBセミナー

「所轄税務署」と「国税局」の調査は何が違う?

税務申告された方の10人に1人以上に税務調査が入っているという直近の統計データがあります。それほど「相続税」は比較的税務調査が行われやすい税金といわれています。

 

通常、相続税の税務調査は近隣の所轄税務署の職員が行います。ただし遺産規模が非常に大きい方の税務調査は税務署の上の組織である国税局、その中の資料調査課という組織の職員が行うケースがあります

 

この資料調査課は業界では「コメ」とか「リョウチョウ(料調)」とも呼ばれ、「泣く子も黙る資料調査課」、「優秀なエリートの集まり」などといわれていて、ドラマ等でよく知られているマルサ以上に高い調査能力があると言われることもあります(※この「コメ」というのは資料調査課の「料」の米へんからきているみたいですね)。

 

所轄税務署による調査の場合、通常は調査官が2人来て調査を行うことが多いですが、資料調査課による調査の場合、財産の規模や調査の内容にもよるのでしょうが、通常は調査官が4人~5人で来ることが多いようです。

 

筆者も何度か資料調査課による調査に立ち会ったことがありますが、その調査能力の高さを垣間見た瞬間がありましたのでご紹介します。

 

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「あら、イメージしていたよりいい人たちね」

調査当日は、午前中に相続人の皆さんに質問するのが一般的で、資料調査課による調査でも同じ流れで進みます。「マルサ」だと怖い調査官のイメージもありますが、私が過去に対応した資料調査課の調査官はどちらかというと物腰が柔らかく、聞き上手という印象を受けました。

 

高齢の相続人の中には、「あら、イメージしていたよりいい人たちね」などと、気持ちよくお話されてしまう方もいましたから。しかし、このお話の引き出し方(物腰の柔らかさ)も彼らのテクニックのひとつという噂もあります。

 

午後は、「家の中を見せてください」とことわりを入れてから、部屋をひとつずつ見て回ります。所轄税務署の調査ではそこまでしないことが多いですが、資料調査課の調査では、寝室や書斎、リビング等の各部屋で、タンスやデスクの引き出しなど、気になるところがあればその都度開けて入念に調査されます。

 

資料調査課による調査は、通常の所轄税務署による調査と同様に法的には「任意」調査ではあるのですが、拒否をしたり虚偽の回答をすると、罰則がありますので、実質的には「間接強制調査」ともいわれたりしています。

 

過去には、調査官が相続人のご家族である高校生のお嬢さんの部屋に立ち入ろうとしたため、こちら側から、「この部屋は調査の必要はないでしょう」と頑なに主張してやっと認められたことがありました。

台所の引き出しを開けたら「現金入りの封筒」が…

資料調査課の調査能力の一端を見たのは、地主さんの相続税申告に関する税務調査初日の午後、各部屋を回っている時でした。

 

午前中に質疑応答した応接間の隣に台所(キッチン)がありました。調査官が台所に入って真っ先に開けたのが、食器棚の下部の引き出しでした。

 

“ひとつめ”に開けた引き出しから、なんといきなり封筒に入った現金の束(約100万円)が出てきてしまいました。事前に聞いていなかった「想定外」の財産でしたので、非常に驚いたと記憶しております(なぜおっしゃって下さらなかったのか…とも)。

 

[図表]食器棚イメージ
[図表]食器棚イメージ

 

当然私たちも、税務調査の前に相続人の方たちと打ち合せをして、「ご自宅内にある現金等は整理しておいてください」とお伝えしておりましたが、食器棚は手付かずのままだったそうです。

 

その理由として、台所、特に食器棚の周りは被相続人の奥さま(高齢の母親)の管理下にあり、お子さま方はそのエリアに勝手に手を付けることも、開けて内容を確認することもできなかったためだそうです。

 

資料調査課の調査官がどこまで考え、一番最初にその引き出しを開けたかは今となっては分かりません。しかし、彼らが過去の経験からそういったご家族の関係性、背景なども考慮していたとすると、非常に洞察力に富んだ視点といえるかと思います。

 

発見された現金については、その原資(元手)が被相続人からきたものであることが証明されなかったため、追徴課税されることはありませんでした。しかし、資料調査課の調査能力の高さの一端が垣間見れる場面に実際に遭遇し、大変驚かされたケースとして印象に残っています。

 

 

竹下 祐史

税理士法人ブライト相続 税理士

 

天満 亮

税理士法人ブライト相続 税理士

 

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