相続税は、事前の対策によって大きく納税額が変わる税金です。その対策方法は相続人・被相続人が置かれた状況によって異なり、それぞれのケースに合わせた対応策が必要です。本連載では、相続税申告200件以上を経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の天満亮税理士、竹下祐史税理士が、実例をもとに、現状を分析した上で実行すべき「相続対策」について解説します。

調査官は重加算税をかけたがる
税務調査を録音することはできるか?
5/19(日)>>>WEBセミナー

「税務調査では喋りすぎない」のが鉄則

相続税は、納税者側からの申告納税方式であるため、どうしても税務調査と無縁ではいられません。

 

申告時期と調査時期が正確には一致しないので、正確な割合を出すのは難しいですが、国税庁の公表データを見ますと、結果的に10~15%程度、税務調査が入っていることがわかります。

 

【参考】国税庁の公表データより抜粋

(1)平成29事務年度(平成29年7月から平成30年6月)の実地調査件数:12,576件

※平成27年に発生した相続が対象の中心

(2)相続税の申告書の提出に係る被相続人数:103,043人

※平成27年分(平成27年11月1日~平成28年10月31日までに提出された申告書(修正申告書を除く))

 

では、いざ税務調査が入ってから、「決着」がつくまでに、いったいどのくらいの期間がかかるのでしょうか?

 

「3ヵ月間くらいが目安」とされることが多いようですが、一概にはいえません。修正が必要だった場合もそうでなかった場合も、いろいろな税務調査を経験してきましたが、今回は、極端な2つの例を紹介します。

 

【Aさんのケース】「とにかく長かった、でも修正がなかった」

 

「税務調査では喋りすぎない」というのが鉄則です。もちろん我々も、そのお客様(Aさん)との税務調査前の打合せで、さんざんその鉄則を強調しました。

 

「税務調査に協力するのはもちろん大事ですが、余計なことをいう必要はないし、わからない質問に対して無理に答えを出す必要もない」と。

 

しかし、税務調査という非日常空間のなかで、Aさんは舞い上がってしまったんでしょうか。午前中の調査官との雑談中(という名の情報収集)、とにかく喋りすぎてしまいました。同席した我々が遮ろうとも、お構いなしで喋り続けます。

 

喋りすぎとはいっても、その内容の1つ1つは特に問題がないものばかりです。ですが、調査官の立場になると、どう考えるでしょうか?

 

「何かヤマシイことがあるから、喋り続けてるのではないか?」

「あれ、さっきいってた内容とちょっと矛盾するぞ」

 

Aさんをお守りする立場である我々ですら、正直このような感想を少し持ちましたから、取るべき税金は取ろうとして機会を伺っている調査官からすると、色々と調べたくなってしまうのでしょう。

 

財産規模もそこまで大きくはなく、結果的に何もお咎めなしだったにもかかわらず、なんだかんだで半年以上かかってしまいました……。

 

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受贈者も知らない「相続時精算課税贈与」の申告が…

【Bさんのケース】「あっさり終わった、戦うことすらできずに修正となった」

 

お恥ずかしい話ですが、ずばり、相続時精算課税贈与の計上漏れの事例です。これが漏れてると、税理士として戦うことすらできません。修正申告も含めて、数週間で終わったと思います。

 

当然、相続税の当初申告をする際に、我々も納税者(Bさん)に確認しています。相続時精算課税贈与の申告の有無、この制度の趣旨、時効がない点、税務署には記録が残っている点、暦年贈与との違い、などなど。

 

しかし、Bさんの場合は、そもそも納税者であるBさん(受贈者)の知らないところで、贈与者が相続時精算課税贈与の申告をしていました。これではさすがに、Bさんにいくら聞いてもわかりません。……いや、そうではありません。もっと、しつこく確認すべきだったのです。

 

「平成15年(2003年)以降で、何かまとまった大きな買い物をしなかったか?」

「その資金を親御さんにまとめて出してもらわなかったか?」

「その時に贈与税の話が出なかったか?」

 

親から贈与を受けていたことを誇らしげにいいたい人はそれ程いないでしょう。また、ほかの兄弟で贈与を受けていない人がいた場合、なかなか話しにくい内容でもあります。しかし、Bさんにその場では嫌われようが何だろうが、聞くだけ聞けばよかったのです。

 

それでBさんが不安になって、「よく覚えてないけど、税理士さんのほうで調べられないの?」という展開にしておけば、Bさんから委任状をもらって税務署に閲覧でも何でも行けばよかったのです。

 

税務調査が長引くかどうかは、さまざまな要素が絡みますので、一概には何ともいえません。上記の例のように、税務署側が色々と調べたくなってしまう、ある意味余計な要因を生み出すことによって長引くこともあれば、税務署側と納税者側とで見解の相違があった場合に、徹底的に戦うことによって長引くこともあります。

 

最後に余談になりますが、よく、「戦う税理士」ですとか、反対に「戦わない税理士」という表現をすることがあります。しかし、これは根本的におかしな表現ではないでしょうか。「戦う」か「戦わない」かは、税理士の性質によるべきではなく、納税者がどちらを希望するかで判断すべきだからです。

 

税理士はあくまでも納税者の代理人ですから、納税者が徹底的に戦いたい、長期化もかまわない、ということであれば税理士は徹底的に戦うべきです。それに対し、忙しいので長期的な税務調査には付き合いたくない、早く落ち着きたい、と納税者が希望しているにも関わらず、税理士が暴走して長期化させるのは、何ともおかしな話です。

 

税理士はあくまでも納税者の代理人である、という立場を忘れずに、謙虚さをもって対応をするのが大前提でしょう。

 

天満 亮

税理士法人ブライト相続 税理士

 

竹下 祐史

税理士法人ブライト相続 税理士

 

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