NYダウは「暴落」するのか?
長期で見ると右肩上がりの成長を続けているNYダウ。特にここ最近では7月11日に初の27,000ドルを超えて史上最高値をつけると、記録を更新し続け、同月7月15日には終値で27,359.16ドルとなった。
その後もトランプ大統領のツイートなどに影響されながら、上がり下がりを繰り返し、冒頭で述べたように26日現在の終値は26,325.25ドルと、過去と比較するとずっと高値圏にいる。
米国の経済指標は、トランプ大統領が選挙戦に向けて作成した「成果動画」を見るまでもなく、概ね好調であり、NYダウの好調さには裏付けがないわけではない。
ただし、世界経済全体で見ると、米中貿易摩擦の激化や合意なきブレグジット(英国のEU離脱)など、恐慌の引き金となるような爆弾をいくつか抱えており、「金」などへのリスク回避を目的とした資産の分散も見て取れる。
金価格が最高値を更新するなどで注目されると、「金の価値は、貨幣や有価証券が紙屑になっても落ちることはない」という、お決まりの説明が広く出回るため、世界の金融市場が破綻するイメージが持たれやすくなる。また、NYダウのように高値圏を推移している指標は特に、短期トレーダーがチャートから「暴落の予兆」を発見しやすい。これらが合わさり、不安に思っている人も多いのではないか。
確かに、世界経済を見渡すと順風満帆とは言い難い状況だが、NYダウが暴落することはあるのか?
国際情勢の動き方次第では、NYダウも大きく下落する局面はあるかもしれないが(それを暴落と呼ぶのならば、その可能性はある)、長期で見れば、今の社会そのものが大きく変わらないかぎり、また立ち直る可能性は高い。
NYダウを形成するアップル、ボーイング、マイクロソフト、インテル、ウォルト・ディズニー、Visa、JPモルガン・チェース、マクドナルド、ジョンソン・アンド・ジョンソン、ナイキ……など、名だたる企業30社の株価が、立ち直れないほど暴落し、こぞって紙屑同然になるまでの状況は、資本主義の崩壊くらいのインパクトがあるものでしか、想像し難い。
NYダウは「上がり続ける」のか?
NYダウに限らず、価格が高値圏にある際には「このまま上がり続けるのだろうか?」ということは気になるところだろう。
もちろん、永遠に落ちずに上がり続けることなどはないのだが、日々、上がったり下がったりしながらも長い目で見たときに「上がり続けている」かどうかは、長期の投資で資産形成を考えている人にとっては大変重要である。
投資の話なので「絶対」はないのだが、これに関して、NYダウについては知っておくべき大きな特徴がある。それは銘柄の入れ替えだ。
ご存じのとおり、NYダウは米国における様々な業種から、主要銘柄が時代に合わせて30種選定され、その株価を平均し調整した指標だ。例えばの話であるが、アップル社がまだ見ぬ競合の新しい技術に負け、株価がズドンと落ちたとしても、代わりにその競合がNYダウに組み込まれるということもある。この場合、アップル社1社に投資しているのであれば、まさしく株価の暴落を体験することになるが、NYダウという指標に投資しているのであれば、そのリスクは低い。
時代と共に競争原理のなかで、現在NYダウに組み込まれている企業が落ちていったとしても、同じ業種のなかで相対的に上がってきた企業があれば、その分の上昇は見込むことができる。
資本主義においては、やはり大資本を持っているものが強いという考え方がある。それに則り、NYダウに組み込まれるような米国の大手企業が、今後、「さらに勝ち続ける」と見るのであれば、NYダウは「上昇し続ける」と考えることができるだろう。