撤去費用は1000万円以上!? 相続した土地に「ゴミの山」の惨状

「相続」発生時に対象となるのは、「お金」や「不動産」といったプラスの財産だけではなく、借金や未納の税金の支払い義務などの「負の遺産」も含まれます。本記事では、司法書士法人ABC代表で司法書士の椎葉基史氏の著書、『身内が亡くなってからでは遅い 「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)から一部を抜粋し、資産だと信じて相続した「”負”動産」に苦しめられる「不動産相続難民」と呼ばれる人々の実態にせまります。

「再転相続」で身に覚えのない不動産の相続人に⁉

千葉県に住む北川浩二さん(60歳)は、6年前に父親を亡くしました。

 

父親が遺した実家を相続し、今は、元の実家を取り壊した場所に建て替えた家で家族と暮らしています。

 

ところが、ある日、自分が身に覚えのない不動産の相続人になっている事実を知り愕然とします。どうやらその不動産はもともと、北川さんの父親が亡くなる2カ月前に亡くなった祖母が所有していたもののようです。

 

北川さんの父親は当時病床に臥せっており、祖母の財産を相続するか否かの結論を出す、3カ月の熟慮期間の間に死亡してしまったのです。父親の死亡に伴い、北川さんは父親の財産(預貯金や実家など)を相続します。

 

実はこの際、祖母の財産を相続する権利、および、その相続を承認するか、放棄するかを決める権利も相続していたことを北川さんは全く認識していませんでした。

 

これは再転相続(民法916条)と呼ばれるものですが、そもそも、父親からは何も聞かされておらず、祖母が不動産を所有していることも知らなかったので、そのような権利を自分が相続していることは想像だにしなかったそうです。

 

また、これまで固定資産税の請求も一切受けていないと言います。

 

ところが今回、その不動産が「特定空家」に指定されたために、「相続人」である北川さんに、行政からの指導が入り、北川さんはこの事実を知ることになったのです。このケースの場合、被相続人が死亡してから6年という年月は経過していましたが、「祖母が所有する不動産の存在を知る由がなかった」ことが認められ、その存在を知った時期=行政からの指導が入った日、となりました。

 

その結果無事、祖母の相続について父親の立場で相続放棄をすることができたのです。

 

父親の財産のほうはすでに相続してはいましたが、再転相続分はそれとは切り離した別の相続として扱われます。つまりこの場合は、「単純承認を一度選択すると後になって相続放棄はできない」ということは起こりません。ただし、北川さんが相続を放棄したとしても、この不動産の引継ぎ手が見つからなければ、北川さんは、見たこともない不動産の管理義務を課される危険性は残ることになります。

 

[図表]
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更地の場合は固定資産税の「減額措置」がない

これまで紹介した事例を読んで、更地の場合は、空き家を相続するよりリスクが少ないように感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません(関連記事『相続争いで放置した実家…隣家から「損害賠償請求」されたワケ』参照)。

 

千葉県の高田浩史さん(42歳)は、約5年前に母・和子さんから相続で富山県某市の土地を譲り受けました。それは弟の潔さんと遺産分割協議を行った上での結論だったそうです。

 

実家のすぐそばにあるその土地はもともと、長男である浩史さんがそこに家を建てて家族と一緒に住めるようにと、9年前に亡くなった浩史さんの父親が購入してくれていたものでした。ただ、浩史さんが転勤の多い仕事に転職してしまい、その土地に家を建てるに至らないうちに、父親が亡くなってしまったため、その時の相続で、和子さん名義になっていたものです。

 

実家の不動産に関しては、身体が不自由になった和子さんの施設への入所費用等に充てるためすでに売却済みでした。

 

実はその際に、その土地を一緒に売却することも検討したそうですが、父親の思いを受け、将来家を建てて移り住む可能性も残しておきたい、と考えた浩史さんは、そのタイミングでの売却を見送ったのです。

 

ただ、その後和子さんが亡くなってからは、仕事も忙しい上、実家自体がその土地に残っていないこともあり、浩史さんが自分の名義になったその土地を訪れることはありませんでした。

 

ところが、和子さんの死後5年が過ぎた今になって、突然市役所から通知が届いたのです。

 

なんと、相続したその土地に大量の廃棄物の不法投棄が行われており、近隣住民から苦情が殺到しているため早急に対応して欲しいというのです。

 

慌てて現地に出向いてみると、一般家庭の粗大ゴミに交じり、明らかに産業廃棄物と思われるものが大量に投棄されていました。

 

あまりのゴミの量に愕然とした浩史さんは、すぐに撤去を依頼しようと業者に連絡をします。ところが、驚いたのはその撤去費用です。産業廃棄物が大量に含まれているため、どう見積もっても1000万円は下らないというのです。

 

浩史さんにとってそれはとても払える費用ではありませんでした。困り果てた浩史さんは、藁をも掴む思いで、地元の不動産業者にこの状態のまま、土地を引き受けてくれるところがないか相談しました。

 

けれども、不法投棄されたゴミのせいで土壌は一部汚染されており、その浄化費用がさらに500万も必要になるとのことで、とてもじゃないが売り物にならないと言うのです。

 

策が尽きた浩史さんは今から相続放棄をできないものかと、私の事務所に相談にいらっしゃったのですが、残念ながらすでに名義変更という形で相続が実行されている以上、それが認められる可能性はほぼゼロと言ってよいでしょう。

 

多くの人は、土地は持っておいて損はない、不要になれば売りに出せばいいと安易に考えがちです。

 

特に更地の場合は、建物の倒壊等のおそれもなく管理の問題もないと思い込み、そのまま放置している方が多いのですが、実は更地であっても、管理リスクはあるのです。

 

また、更地の場合は、固定資産税の減額措置もありません。策のないまま所有し続ければ、永遠にその支払いから逃れることはできません

 

つまり、たとえ更地であろうとも、負動産になる可能性は否定できないのです。

 

ABCアライアンスグループ代表
司法書士法人ABC代表社員
株式会社アスクエスト代表取締役
NPO法人相続アドバイザー協議会・理事 司法書士

1978年、熊本県人吉市生まれ。熊本県立熊本高校を卒業後、大阪に出て20代前半までバンド活動にいそしむ。そんな日々に限界を感じていた頃、熊本の母親が連帯保証人になっていた親戚の借金を引き継いでしまい自己破産することに。その際にお世話になった司法書士に触発され、心機一転司法書士を目指す。2005年、わずか9カ月の試験勉強で合格率3%の難関を突破し、一発合格を果たす。大手司法書士法人勤務を経て、2008年、大阪市内にて、つばき司法書士事務所を開業。借金の相続問題の専門家がいない事実に気づき、2011年に同所内に「相続放棄相談センター」、2016年に「限定承認相談センター」を開設。2013年10月に法人化と同時に事務所名を「司法書士法人ABC」に改称。現在、司法書士・行政書士等からなる専門家グループ「ABCアライアンス」の代表を務める。相続の専門家として年間2000件以上(センター合計)の案件に関わるなど業界の有名人として、メディア出演も多数。

著者紹介

連載資産ではなく負債…借金より深刻な「負動産」相続の実態

身内が亡くなってからでは遅い 「相続放棄」が分かる本

身内が亡くなってからでは遅い 「相続放棄」が分かる本

椎葉 基史

ポプラ社

2500件以上の負債相続を解決した「プロ」が徹底解説!相続するのは「プラスの遺産」だけではない。負債や「負動産」を相続して転落する人が急増。「限定承認」など事前に知らないと後悔する基礎知識とアドバイスを一冊にまとめ…

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