財務省に対して翌年度以降の税制改正に求める事項をまとめた「税制改正要望」を、金融庁が発表した。今回は同要望における暗号資産への言及はみられなかった。

金融庁の平成31年度税制改正要望が公表

財務省に対して、翌年度以降の税制改正に求める事項をまとめた「税制改正要望」を金融庁が発表した。しかし、今回は同要望における暗号資産に関する内容の掲載はみられない結果となった

 

税制改正要望は、税制改正における議論のスタートとなる重要なものだ。与党の税制調査会が委員会などで議論を行い、12月に発表される税制改正の大綱が決定する。

 

税制改正の内容が盛り込まれれば、年明けの閣議決定によって、それらの改正案が国会を通し、法律として成立する運びとなる。

 

つまり、今回の改正要望で暗号資産への言及がなかったということは、現時点で暗号資産税制に関する改正は進んでいないという可能性を示唆している。

 

なお今回の改正要望では反映されなかったものの、今年7月に、一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)及び一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)は、主に次の3点における税制改正を求める要望書を金融庁へ提出していた。

 

●申告分離課税の適用

暗号資産のデリバティブ・現物取引に申告分離課税を適用し、株式等の取引や外国為替証拠金取引と同様に税率は20%とすること。

 

●損益通算・繰越控除の適用

損失を他の所得と相殺できる「損益通算」や、損失を3年間繰り越せる「繰越控除」を認めること(株やFXは損失を翌年以後3年間にわたって繰越しが可能)。

 

●少額非課税制度の導入

少額の決済利用は課税対象から外す「少額非課税制度」の検討。

 

現在の税制では、暗号資産の利益は雑所得に分類され、所得税(45%)と住民税(10%)を合わせ、最大で55%もの税率となる。さらに損益通算や繰越控除もできない。

 

この状況は、暗号資産取引を始める上での障壁になっている。しかし裏を返せば、税制改正が実施されることで、暗号資産取引を始める人が増加し、業界のさらなる発展が見込める。少額非課税制度が適用されれば、決済手段として加速度的に普及することも期待できる。

 

国内取引所のディーカレットによる暗号資産の電子マネーチャージや、bitFlyerによるTポイントと暗号資産の交換を可能にするサービスの発表など、暗号資産を取り巻く環境には常に進展がみられる。そのようなエコシステムの発展にともない、税制改正も現実味を帯びてくるのか、今後も税制関連の動向に注目していきたい。

 

※本記事は、2019年8月24日に「CoinPost」で公開されたものです。

 

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