米大統領選、暗号資産推進派の民主党候補に注目集まる
2020年11月の米国大統領選挙に向けて、数多くの候補者が名乗りをあげるなか、暗号資産に対する支持を全面に押し出す民主党候補に業界の注目が集まっている。特に暗号資産支持派として知られているのは、起業家のAndrew Yang氏である。
熾烈な争いとなった民主党候補の座を巡っては、7月の第2回民主党討論会を勝ち残ったYang氏を含む10名が、9月に行われる第3回討論会で火花を散らす。
大統領選への立候補を表明した当初(2017年11月)には、ほとんど泡沫候補としか見られていなかったYang氏だが、インターネットやソーシャルメディアを駆使した選挙活動を実施、そして人気ポッドキャスト番組への出演からじわじわと支持を集め、ニューヨークタイムズ誌からは、「インターネット上の本命候補者」と名づけられるほどになり、高級EV自動車メーカーテスラCEOのイーロン・マスク氏までもが支持を表明している。
◆大統領選における暗号資産へのアプローチ
世界経済情勢が緊迫感を増し、経済や医療問題、移民政策等、複雑化する国内事情を抱える米国。大統領選挙において注目を集める政策として、暗号資産に対する議論の優先度は決して高いとはいえない。
そんななか、Yang氏はユーチューブの暗号資産チャンネル「The Coin Chat」のインタビューで、「経済に対する私のビジョンは、暗号資産コミュニティの人々と極めて一致している」と述べ、暗号資産やブロックチェーン技術に対する支持を明確に表明した。
また、Yang氏は、第4次産業革命と呼ばれる新興技術が社会にもたらすインパクトを重視しており、自身が推進する経済政策キャンペーンの項目に、「暗号資産・デジタル資産規制と消費者保護」を明記し、次のように主張している。
暗号資産とデジタル資産は急速に成長し、大規模な価値と経済活動を代表するに至ったが、この急速な成長は政府の対応能力を上回ってしまっている。
これらの資産を規制するための全国的な枠組みづくりは失敗しており、複数の連邦政府機関が対立する管轄権を主張している。(SEC:証券取引委員会、CFTC:米商品先物取引委員会、IRS:米国内国歳入庁はそれぞれの定義を設けている)
同時に、州ごと異なる規制の寄せ集めが作り出され、米国の暗号資産市場がほかの法域、特に中国やヨーロッパ市場と競争することを困難にしている。
さらにYang氏は、「連邦政府は、適切な情報によって投資が推進できるように、暗号資産/デジタル資産市場がどのように扱われ、規制されるかについて、明確なガイドラインを作成するべき時にきている」と指摘した。
このようなYang氏の姿勢は、技術系企業や起業家、投資家からも支持を集めているようだ。そのなかには、ツイッターおよびSquare社の創業者兼CEOのJack Dorsey氏、著名VCであるY CombinatorのSam Altman氏、LinkedInCEOのMike Gamson氏などが名を連ねている。
◆ブロックチェーン投票の意義を主張
さらにYang氏は、ブロックチェーンを利用した投票の近代化を望んでおり、今日、不正を防止しつつ、スマホで投票を行うことは、技術的に可能だと主張している。
「これ(ブロックチェーンを利用した投票)は、真の民主主義に革命をもたらし、すべての米市民を含み、参加者を増やすことになる。スマートフォンを持たない人は従来のシステムを使用でき、(投票するための)列は短くなるだろう」と、主張している。
さらに、大統領となった暁には、最新技術を活用することで、投票を簡単で安全なものとし、民主制に参加できる市民を増やしたいと強調した。先日、Yang氏の支持者は、Lightning Networkを利用したビットコインによる献金を可能にする政治行動委員会も立ち上げている。
「左派ではなく、右派でもなく、前に前進する」とのスローガンを掲げ、独自の政策方針で、民主党だけでなく共和党の支持者層にもサポーターが広がるYang氏。しかし、現職の大統領に対峙する民主党候補として勝ち残るには、まだまだ高いハードルがあるようだ。
8月15日に公開された米大手メディアFox Newsの世論調査によると、オバマ前大統領政権で、副大統領を務めたジョー・バイデン候補が31%で1位、2位には、暗号資産に批判的スタンスで知られるエリザベス・ウォーレン上院議員が20%。ついで、前回の大統領選ではヒラリー・クリントン氏に敗れたバーニー・サンダース氏が10%で3位となっており、Yang氏は支持率3%で5位となっている。
これからの選挙戦で、Yang氏の主張がどれほど支持を得られるのか、注視していきたい。
※本記事は、2019年8月22日に「CoinPost」で公開されたものです。